[PR]

 ニホンジカの赤肉、リコッタチーズ、牛乳寒天、ナンプラー、ベーグル。これらの食品の共通点は何でしょう?

 こう質問されてすぐに分かる方は、きっと関係者か専門家ですね。私も取材をしたから知っているわけで・・・。答えは、食品成分表に新しく掲載された食べ物です。

写真・図版

 正式名称は「日本食品標準成分表」。食品のエネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養成分がどれくらい含まれているかを示した資料です。栄養計算のおおもとになり、学校や病院の食事づくり、栄養指導などに欠かせない大事なデータで、戦後間もない1950(昭和25)年に初版が発表され、時々に改訂されてきました。

 最新版の「2015年版(七訂)」は昨年12月に発表されました。15年ぶりに収録食品数が拡充されて313点増え、2191点に。冒頭の食品のほか、新顔の中には「ビール風味炭酸飲料」つまりノンアルコールビールもあって、時代を感じます。また、ひじきに含まれる鉄分が低く修正されてニュースになったことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか(http://www.asahi.com/articles/ASHDT04QMHDSUBQU00R.html)。私も先日、どんな改訂・変更があったのかを取り上げた記事を書きました。(http://www.asahi.com/articles/ASJ232QQNJ23UBQU00F.html

 取材で、成分表改訂を手がけた文部科学省の食品成分委員会のメンバーである渡邊智子・千葉県立保健医療大学教授に話をうかがいました。作成にあたっての様々な工夫を解説しながら、「多くの方に、興味のあるところを見てみて欲しいですね。第3章は、読み物としても面白いと思うのです」と話していました。

 紙面に掲載する料理レシピの栄養計算を確かめるために、私も成分表をよく使いますが、成分値の確認が主でじっくり読んだことはありませんでした。どれどれ、とあちこちをめくってみたら、確かに。原稿を書く合間についつい読みふけってしまいました。

 第3章は資料編で、成分表に掲載している食品の説明がのっています。例えば、「うど」と「やまうど」を掲載している「うど類」の説明では、「うど類は、栽培品を『うど』、山野に自生するものを『やまうど』と呼んでいたが、現在では暗所で軟弱栽培した『うど』に対して、半地下式で上半分を緑化する栽培法で作られたものを、姿、形、風味とも自生種に似ているので『やまうど』と呼んでいる。『やまうど』は、これを試料とした」。栽培の移り変わりが分かります。

 カスタードプリンについては「鶏卵に砂糖を加え、加熱した牛乳を混ぜた液を型に入れ、蒸し焼きにしたもの」と定義。「大量に流通している冷やして固めたプリンは、(中略)収載食品とは異なる商品である」とはっきり区別がつけてあって、昔ながらのプリンが好きな私は思わず、そう、そうなのよ、と頷いてしまいました。ついでに言うと、原材料の配合割合にも触れており、「牛乳250、鶏卵125、砂糖45」とあるので、この分量で定義にそって調理すれば、成分表通りのプリンが食べられそう。

 総菜の項目もあり、家庭や給食でよく食べられる41種類のメニューについて、複数の企業から取り寄せたレシピを基に栄養計算をし、平均、最大、最小値を食材の配合割合と共にのせています。これがまた同じ料理でもずいぶん違いがあるもので、えびフライでは、えびの割合が平均53.5%ですが、最大だと70.2%、最小は35.3%。つまり、えびが7割のフライもあれば、えびは3割で衣が多いフライもある、ということになります。

 20年ほど前に「新解さんの謎」というベストセラーが出て、辞書を読む楽しさが取り上げられましたが、食品成分表を読む楽しさ、というのもあると思いました。七訂の成分表は、書籍として出版されていますが、文部科学省のHPでは無料でダウンロードできます(http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm別ウインドウで開きます)。

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)

こんなニュースも