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 特定保健用食品(トクホ)の広告に対して「誇大広告だ」と消費者庁のチェックが入りました。初めてのことです。(http://www.asahi.com/articles/ASJ327DNTJ32UBQU018.html

 問題となったのは、ライオンの「トマト酢生活トマト酢飲料」の広告。トクホマークを示しつつ、体験談として「実感できたから続けられる!10年くらい前から血圧が気になり、できるだけ薬に頼らず、食生活で改善できればと考えていました。飲み始めて4カ月、今までこんなに長続きした健康食品はないのですが、何らか実感できたので継続できています。今では離すことのできない存在です」とあったり、「これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』」「毎日、おいしく血圧対策。」「〝薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい〝そんな方々をサポートしようと」といったフレーズが入ったりしています。

 本来、トクホとしてこの商品に認められている表示は、「食酢の主成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です」ということだけ。

 消費者庁は、この広告が「血圧を下げるという効果の表示に許可を受けているかのようで、治療を受けなくても商品を飲むだけで高血圧という病気を改善するかのようだ」とし、誇大広告だとして健康増進法違反と判断。企業に再発防止などを求める勧告を出したのでした。

 つまり、「これは言い過ぎ」ということです。商品自体に問題が認められたわけではなく、「血圧が高めの方に適した」トクホの商品であることも変わりません。

 トクホは、商品ごとに国が安全性と有効性を審査して認めている制度。「だったら、血圧が高めの方に、と言う以上、血圧を下げる力があるんじゃないの?」と疑問に思う方もいるはず。

 そこが、トクホをめぐるややこしさ。確かに人が食べる実験をして有効性を確認してはいるのですが、あくまで食べ物。薬のような強い力が認められているのではなく、「これさえ飲めば気になる症状が改善する」ということではありません。だから、薬と同じ効果の表示形式ではなく、「血圧が高めの方に適した」とか「おなかの調子を整える」とか「体脂肪が気になる方に」といった具合に、ぼんやりした表現の表示に限っている、という背景があるのです。

 しかしこの認められた表示形式だけでは、スッキリとは伝わらない。だから、都合の良いところを抜き出し、より魅力的なフレーズで表現しようとする。そうした結果、今回の勧告事例に限らず、商品の実力に見合わない過大な表示、広告になっていないか。そんな批判がトクホに寄せられています。

 一方で、昨年から始まった機能性表示食品では、国の審査はなく、企業の責任で、成分の働きなどを詳しく表示することができます。またそれ以外の健康食品では、科学的根拠もないのに思わせぶりな表現をする商品がたくさん。表示と広告をめぐっては、こちらの方が深刻な問題です。

 いま、消費者委員会の専門調査会で、トクホのあり方に関して議論が交わされており、トクホを含めた健康食品の表示・広告が議題の一つになっています。3日の会合で明らかになった報告書案では、消費者の誤認を招く表示や広告に対処するための取り組みが挙げられました。次回の会合で結論がまとまる見込みですが、実施可能で有効な対策が一つでも多く盛り込まれることを願っています。

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/

(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)