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 イテテ……この1カ月、右腕の痛みに悩まされています。診察してもらったところ、いくつかの原因が重なりあっていて、その一つが長時間のパソコン操作ではないか、と。そういえば、キーボードを打つとき以外もずっと右手でマウスを触っています。何げない動作ですが、毎日の積み重ねで、身体が悲鳴を上げてしまったようです。

 食事も毎日の積み重ね。やっぱり大食いの影響は小さくない、と感じる研究結果が最近発表されました(http://www.shiga-med.ac.jp/info/release/h27/H280217.pdf別ウインドウで開きます)。

 「男性は総摂取エネルギー量(食べ物を食べて得ているエネルギーの量)が多いほど、その後29年間の死亡のリスクが高く、病気別でみても、がんや冠動脈疾患で亡くなるリスクが高い」という内容。1980年から全国300地区約1万人の健康状態を長期追跡調査しているプロジェクト「NIPPON DATA80」によるものです。1980年の国民栄養調査(現在の国民健康・栄養調査)で、身長、体重、血圧、生活習慣(飲酒、喫煙、食事内容)などを調べたデータを基礎にして、その後94年から5年ごとに、調査に参加した方々の生存確認と、亡くなった場合はその死因を調べているのです。

 今回の研究は、参加者のうち当時30歳から69歳で、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などの既往歴のある人や摂取エネルギーが極端に多かったり少なかったりする人を除いた7704人のデータを分析しました。

 男女別に総摂取エネルギー量で五つのグループに分類。年齢、喫煙・飲酒状況、BMI、血圧、食塩摂取量や野菜の摂取量などの影響を統計的手法で除き、亡くなる割合に違いがあるかをみました。

 すると男性は、摂取エネルギーが多いほど、死亡のリスクが高くなる傾向があり、食べる量が最も少ない群(1日2100キロカロリー未満)に比べて、最も多い群(2817キロカロリー以上)が45%高かったのです。なおBMIが25以上で肥満の男性に絞ってみると、このリスクは約3倍になりました。

 死因別にみても、がん、また、心筋梗塞などの冠動脈疾患による死亡リスクは、食べる量が多い男性ほど高まる傾向がみられました。冠動脈疾患の場合、最も多い群は最も少ない群の2.6倍です。

 男性の場合、当初健康だった人も、食べ過ぎ・大食いの生活をしていると、生活習慣病になり、ひいては亡くなる可能性が高くなることを意味する結果です。これは特に肥満者で顕著です。

 一方、女性は冠動脈疾患による死亡については同じ傾向がみられたものの、総死亡やがんのリスクについては、関連性が認められませんでした。男女の違いの理由について、厚生労働省「NIPPON DATA」研究班代表の三浦克之・滋賀医大教授にたずねてみましたが、「今回の報告からだけでは、明確なことは言えないのです」ということで、理由はよく分からないそう。

 ただ、男性の場合、摂取エネルギー量が多いグループほどBMIが高かったのですが、女性はこの傾向がみられませんでした。ダイエットをしようと食べる量を減らしている太めな女性がいるのかも? 一般的に女性の方が食べる量や食事の質に気を遣う人が多いからなあ、と勝手に想像したりして。いずれにしろ、女性ではっきりとした関連がみられなかったとはいえ、女性は大食いをして大丈夫、という意味ではないでしょう。

 日本人で29年という長期間にわたって調べてきたデータは貴重です。「大盛りの外食やメガサイズの食品など、欧米のように食事のサイズが大きくなる現象が最近目立ち、気になります。日本でも成人男性では肥満者の割合が1970年代からの30年間でおよそ2倍に増え、現在は約3割に達しており、今回の結果をみると、適正な食事量を保つ大切さが確かめられたと言えるでしょう」と三浦先生は言います。

 これとは別に、3月には、2005年に厚生労働省・農林水産省が策定した「食事バランスガイド」を守っているほど、死亡のリスクが下がるという調査結果を国立がん研究センターなどの研究チームが発表しました(http://epi.ncc.go.jp/jphc/773/3787.html別ウインドウで開きます)。こちらも約15年にわたる日本人を対象にした調査の結果です。

 日々、バランス良くほどほどの量を食べる。その積み重ねが健康を支える大きな力になる。地味で当たり前だけれど、その大切さを地道な研究が裏付けています。

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)