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 真夜中でも電話1本で駆けつけ、無料で医療機関に連れて行ってくれる救急車は、私たちが安心して医療を受けるためになくてはならない社会資源です。しかし、高齢者人口の増加に伴い救急車の出場件数が増えています。「適正利用を」と言われつつも、どのような状態や状況になったときに救急車を呼べばいいのでしょうか。(アピタル編集部)

 

 「この状態って救急車を呼んでも許されるよね?」。

 仲のよい友人とおしゃべりをしていたとき、ふいにこんなことを尋ねられました。聞けば、同居する母親がノロウイルスに感染してしまい、夜中に具合が悪くなってしまったというのです。「母は糖尿病を患っているし、激しい嘔吐と下痢を繰り返していたから脱水が心配で、とりあえず救急外来に連れて行こうと思ったの」。ところが、ここで友人には困った問題が発生しました。自家用車を持っていない友人はタクシーを呼んで母親を病院に連れて行こうと考えたのですが、倒れ込んでしまった母親を彼女一人で抱きかかえて移動させることができなかったのです。「タクシーの運転手さんに家の中まで入ってもらうわけにもいかないし……。こういうときにダンナがいればよかったのにって、結婚していないことをホントに後悔したわよお」と、今になれば軽口の一つも叩けますが、友人は苦しむ母親を目前にかなり困ったようで、さんざん迷った挙句、救急車を呼んだそうです。

 

■救急車を呼ぶ症状は消防庁のリストが参考に

 全国的に救急車の出場件数が大幅に増加し、それに伴い、救急車が現場に到着するまでの時間もかかるようになりました。そのため、救急車を本当に必要とする人たちの搬送に支障を来たすようになり、私たちは救急車を適正に利用することが求められています。タクシー代わりに救急車を使う人のことなどが大きな問題になっていますが、実際は私の友人のように迷いながら救急車を呼んでいる人のほうが多いのではないでしょうか。

 総務省消防庁が作成した「ためらわずに救急車を呼んでほしい症状」のリストをみると、成人では脳卒中、心筋梗塞、急性腹症、窒息、アナフィラキシーショック(アレルゲンが体内に入ることで急激に引き起こされる全身性の強いアレルギー反応)などを起こしたときの症状が列挙されています。この総務省消防庁のリストは参考になるものの、いずれの症状も医療機関に一刻も早く受診しないと生命の危険にかかわることは一般の人にも予測できるので、このような症状が明らかに起こった場合、たいていの人はすぐに救急車を呼べると思われます。

●総務省消防庁「こんな時は、すぐ119番 救急車利用リーフレット」

http://www.fdma.go.jp/html/new/kyuukyuusya_riyou_leaflet.pdf別ウインドウで開きます

 

■判断に迷ったときは医療の専門家に相談を

 判断に迷うのは、友人の母親のように自力で動けなくなったときやこのリストに書かれているほど症状がひどくないとき、だんだん症状が悪化してきたときなどです。

 こうした状況に置かれたとき、一般の人が自分で判断するのはとても難しいため、医療の専門家に頼るのが得策です。たとえば東京消防庁救急相談センターでは、毎日24時間体制で相談医療チーム(医師、看護師、救急隊経験者等の職員)が救急車を呼んだほうがいいのか、今すぐ医療機関を受診したほうがいいのかといった相談に応じ、必要に応じて夜中でも診療してくれる医療機関を案内してくれます。都道府県や市町村の中にも、同じような仕組みを作っているところがあるので、自治体のホームページなどで自分が住んでいる地域の救急相談窓口を調べておきたいものです。

 また、東京消防庁救急相談センター運営協議会では、日本救急医学会監修のもと作成した「東京版救急受診ガイド」の情報をインターネットで無料で提供しています。救急受診ガイドの画面の質問に従い、あてはまる項目をクリックしていくと、症状から緊急性と重症度を判定し、望ましい受診行動と受診したい診療科をアドバイスしてくれます。使いやすいサイトなので、救急相談センターに電話がつながりにくいときに利用するのもよいでしょう。

●東京消防庁「救急相談センター」

#7119(携帯電話、PHS、プッシュ回線)

http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/soudan-center.htm別ウインドウで開きます

●東京消防庁「東京版救急受診ガイド」

http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kyuuimuka/guide/05bm/別ウインドウで開きます

■民間救急サービスの情報も入手しておこう

 一方、救急受診ガイドなどで「救急車を呼ぶほど緊急性は高くないけれど、今すぐに医療機関を受診したほうがよい」と判定されたとき、自力で動けなくなっている人はどうすればよいのでしょう。つまり、友人の母親のようなケースです。東京消防庁では、このような場合は「東京民間救急コールセンター」に問い合せることをすすめています。このコールセンターは、公益財団法人東京防災救急協会が運営しているもので、東京消防庁が認定した民間救急車やサポートCab(救命講習を修了している運転手が乗務するタクシー)の事業者を24時間体制で案内しています。

 民間救急車にもサポートCabと同様に応急手当に関する講習を修了した乗務員が乗務し、車両には一定の装備や資器材を備え、ストレッチャーや車いすでの利用が可能です。ただし、利用料金は事業者によって異なりますが、一般のタクシーより高めで運賃のほか介護料金、深夜割増料金などが加算されます。サポートCabの利用料金は一般のタクシーと同じですが、ストレッチャーや車いすでの利用ができません。それぞれ一長一短があるので、利用者の身体状態に応じて使い分けるようにしましょう。

 東京都以外の地域でも民間救急サービスは整備されてきています。なかには経済的に民間救急サービスの費用を支払えない人もいると思いますが、救急車の利用対象ではなかったときに備え、調べておくと安心です。

●公益財団法人東京防災救急協会「東京民間救急コールセンター」

http://www.tokyo-bousai.or.jp/tokyo-callcenter/別ウインドウで開きます

●公益財団法人東京防災救急協会「東京民間救急コールセンター登録事業者一覧」

http://www.tokyo-bousai.or.jp/tokyocallcenter-list/別ウインドウで開きます

◆次回は「薬代を安くする方法はある?」について考えてみます。

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■アピタル編集部より

 「ちーちゃん教えて!」シリーズは、私たちが暮らしの中で感じる医療・健康・介護にかかわる悩みや疑問について、医療ライター渡辺千鶴さんにアドバイスしてもらいます。隔週木曜日に新しい記事を配信していきます。

<アピタル:メディカル玉手箱・ちーちゃん教えて!>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/tamatebako/(アピタル・渡辺千鶴)

アピタル・渡辺千鶴

アピタル・渡辺千鶴(わたなべ・ちづる) 医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランス。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』の医学ページで「がん医療を支える人々」を連載中。