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 企業の責任で、食べ物の健康への働き(機能性)を表示できる機能性表示食品制度が始まって、1年が過ぎました。届け出が受理された商品はすでに300点を超え、今後さらに増加し、2016年の市場規模は699億円に達するという予測もあります。

 この制度の特徴は、届け出した商品の情報が消費者庁のサイト(http://www.caa.go.jp/foods/index23.html別ウインドウで開きます)に公開されていること。個別に国が審査しない代わりに、情報を公開し、多くの人の目で検証する狙いです。

 この公開情報をもとに、一般社団法人「消費者市民社会をつくる会(ASCON)」(http://ascon.bz/別ウインドウで開きます)が個々の製品の評価を行い、結果を発表しました。会は、2014年に発足した組織で、消費者と事業者が対話し学び合う事業を手がけています。理事長は、前消費者庁長官の阿南久さんが務めています。今回の活動について、阿南さんは「情報を公開し、市場に出回る商品を事後評価するのが機能性表示食品制度の特色である以上、制度を育てるために、民間の立場から科学的根拠を評価して公表する必要があると考えました」と言います。

 昨年10月、食品安全委員会の委員長も務めた小泉直子・兵庫医科大学名誉教授を委員長とする科学者委員会を設置。評価活動にとりかかりました。しかし、「大変な作業でした」と阿南さん。評価基準を定めるまでに、様々な困難があったそうです。

 評価の経緯と理由について触れた会の資料によると、当初は、科学的根拠として届け出された論文の内容を検討して、どれくらい効果があるかを評価しようとしていました。しかし、論文をすべて取り寄せて読み、詳しく分析して質を問うことは、数人の委員の限られた時間では難しいだけでなく、そもそも、医薬品に比べて食品の効果は非常に弱いので的確に評価することが困難だという議論になり、方向転換しました。

 論文の内容には立ち入らず、根拠とする論文の数が多いか少ないかというデータ量だけをみることにしたそうです。

 安全性の評価も、医薬品は必要な時期だけ使い、症状がなくなったら使わなくなるのに対し、機能性表示食品は長期間にわたって飲み続けることが多いと予想されます。しかし、何年間も同じ物質を摂取し続けたことの影響を測定する長期投与の実験結果はほとんどありません。今回評価した商品の中には「安全性に問題がある」と指摘されたものはありませんが、これは主に急性毒性についての評価で、「長期摂取の結果起こりうる慢性毒性についてはさらに検討が必要である」と科学者委員会は留保をつけています。

 委員会がまとめた評価はいったん企業に送り、意見交換をして一致をみた上で確定させています。「私たちの指摘で、届け出情報を修正した企業もあり、適切な情報の提供という点からすると、それだけでも今回の活動は一定の役割を果たしたと考えています」と、阿南さんは言います。この意見交換も一覧表で公開されています。

 今回は届け出順に79製品の評価結果を発表しました。有効性の科学的根拠が多い順にABCにランク分け。A~Cに入ったのが71製品、6製品は委員会が評価基準に合わないとし、企業との意見交換でも合意に達しませんでした。なお、AとBの違いは、有効性を示す論文が、BよりもAの方がたくさんある、という意味。ですが、論文が多いことが即、効果の強さを意味するわけではありません。

 消費者が最も知りたいであろう「製品の効果はどれくらいあるのか」という関心には直接対応していないものの、こうした検証がなされたことは、消費者の考える材料を増やす上でも、企業姿勢を問う上でも、意義のあることだと感じました。次々と商品が増える中、労力のかかる活動ですが、阿南さんは「今後も何らかの形で続けます」と話していました。

 「じゃあ、結局、機能性表示食品の実力は?」という疑問に対して、科学者委員会は資料の中で一つの見解を示しているのに気づいたので、最後に引用します。「すべての機能性表示食品の効果/機能性はあったとしても微弱であり、大差はない。(今回は)その微弱な効果/機能性があるという科学的根拠がどの程度存在するかを評価したものである」

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞総合プロデュース室主査

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)