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 不快な症状や体の異変が起こり、医療機関で検査をしても異常が見つからない。あちこち受診してみたが、診断がつかない。原因不明の症状を抱えると、どういう医療機関やどの診療科の医師に受診すればいいのか、悩むところです。こういう場合の相談先を教えてください。(アピタル編集部)

 頭痛、めまい、吐き気、しびれなど、どのような症状においても、医療機関ですぐに原因が分からないことはよくあります。症状は特定されていても、その背景にはたくさんの病気が潜んでいるからです。たとえば、世界的な医学書の『ハリソン内科学』には、腹痛の症状から疑われる疾患として30以上もの病気が書かれているそうです。

 また、時間が経過して病状が進行していく様子を診てみないと診断が確定できないこともしばしばあります。ドクターの世界では「後医は名医」という言い方をよくしますが、これには患者さんを後から診た医師のほうが、先に診た医師のときよりも病状が進行しているため、適切な診断をつけやすくなり、名医になれるといった意味も含んでいます。

 一方、ありふれた病気なのに典型的な症状を示さないこともけっこう多いといわれます。そのため、実際の診療場面では症状と診療科が一致しないことが起こります。例えば、腹痛で消化器内科にかかったけれど実は心筋梗塞だった、胸痛で循環器内科を受診したけれど食道の病気が原因だった、体重減少に悩まされて内科や精神科などを回ったが、婦人科のがんが見つかったなど、不一致のケースは色々あります。

 

■大きな病院が安心とはかぎらない

 このように医師にとって確定診断をつけるのはとても難しいことですが、原因不明といわれ、なかなか診断がつかないとき、私たち患者はあちこちの医療機関をさまようことになります。この場合、多くの人が考えるのは「高度な医療機器や多くの診療科がそろっている大きな病院にかかれば、病気の原因を突き止めてもらえるだろう」ということです。

 残念ながら、この考え方はちょっと違います。確かに高度な医療機器がそろっているといろいろな検査で体の隅々まで調べてもらえるので心強いですが、検査で得られた情報は診断を手助けするものに過ぎず、高度な検査をしたからといって原因が突き止められるわけではありません。病気の診断をするのは機械ではなく人間――つまり医師だからです。

 さらに「大学病院で診療している医師は専門医だから安心」と考えるのも、診断がついていない段階ではややずれています。原因がわからないときは、ある特定の分野に抜きん出た専門医よりも、さまざまな領域に関して幅広い知識と診断技術を持つ医師にかかったほうが、思いもよらぬ病気を含め、いろいろな可能性を探ってもらえます。

 

■「スーパードクター」は存在する?

 とはいえ、さまざまな領域に関して幅広い知識と診断技術を持つ「スーパードクター」のような医師は、果たして存在するのでしょうか。多くの人が疑問に思うことでしょう。でも、探せばちゃんといるのです。それは「家庭医療専門医」、「プライマリ・ケア認定医」、「病院総合医」と呼ばれる専門資格を持つ医師たちです。

 家庭医療専門医になるために、研修医たちは内科、小児科、整形外科、精神科、皮膚科の各科をローテーションしながら幅広い知識や診断技術を身につけてきました。この5領域をカバーすることによって、赤ちゃんから高齢者まで日常的によく起こる病気やケガの90~95%に対応できるようになるといわれています。「プライマリ・ケア認定医」や「病院総合医」の研修においても同様のトレーニングが行われてきました。

 一方、医療の細分化・専門化が進む中、国でも臓器に偏らない総合的な観点から診断や治療を行う医師を養成する必要性を認め、国民にわかりやすいように「総合診療専門医」という名称で統一することを決めました。そして、「総合診療専門医」を19ある基本領域の1つに位置づけ、新たな専門医として認めていくことにしました。これからは、このようなさまざまな領域に関して幅広い知識と診断技術を持つ医師は、私たちの生活においてもっと身近な存在になってくることでしょう。

 

■家庭医療専門医、プライマリ・ケア認定医、病院総合医に相談を

 さて本題に戻ると、「総合診療専門医」が誕生していない現時点では、原因不明の困った症状は、「家庭医療専門医」、「プライマリ・ケア認定医」、「病院総合医」と呼ばれる専門資格を持つ医師たちに相談するのが最もよさそうです。「家庭医療専門医」は、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会のホームページで名簿が公開されています。同学会では幅広い知識と診断技術を持つ医師の養成に従事している指導医の一覧も公開していますので、この情報も医師探しの参考になります。

 「家庭医療専門医」、「プライマリ・ケア認定医」、「病院総合医」は診療所、クリニック、中小病院、総合病院、大学病院とさまざまな医療機関で働いています。病院の場合は「総合診療科」に配置されていることが多いので、受診する際は「総合診療科」にかかるとよいでしょう。日本病院総合診療医学会のホームページでは、各地にある「総合診療科」を検索することができます。ただし、2016年4月より大学病院などの特定機能病院と500床以上の地域医療支援病院は紹介状を持たずにかかると、初診については5000円以上、再診については2500円以上の受診料を自分で負担しなければならないのでご注意を。

 

●一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「家庭医療専門医制度/専門医一覧」

http://www.primary-care.or.jp/nintei_fp/fp_list.html別ウインドウで開きます

 

●一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「指導医制度/指導医一覧」

http://www.primary-care.or.jp/nintei_in/in_list.html別ウインドウで開きます

 

●日本病院総合診療医学会「全国の総合診療科」

http://hgm-japan.com/guide/別ウインドウで開きます

 

 次回は、「忙しくて生活習慣病の治療がうまく継続できない」という人について考えてみます。

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■アピタル編集部より

 「ちーちゃん教えて!」シリーズは、私たちが暮らしの中で感じる医療・健康・介護にかかわる悩みや疑問について、医療ライター渡辺千鶴さんにアドバイスしてもらいます。隔週木曜日に新しい記事を配信していきます。

 

<アピタル:メディカル玉手箱・ちーちゃん教えて!>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/tamatebako/(アピタル・渡辺千鶴)

アピタル・渡辺千鶴

アピタル・渡辺千鶴(わたなべ・ちづる) 医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランス。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』の医学ページで「がん医療を支える人々」を連載中。