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 子どものいる家庭の朝は慌ただしいものです。朝から親は朝ご飯の準備、自分の身支度だけでなく、子どもにも身支度や用意をさせなければなりません。子どもが保育園や学校に遅刻しないように、なんとか準備を早く進めさせたいのです。親はいくつもの同時並行作業にバタバタしながらも、我が子をせかします。

 

「ほら、早くご飯食べなさい」

「まだ食べてるの?時計みなさい。お着替えもするのよ!」

「ほら、テレビ見てないで!集中して食べるの、急ぎなさい」

 

こちらの忙しさとは裏腹に、子どもは先ほどからテレビに釘付けで、はしがとまっています。その後も、着替えにいった子ども部屋でおもちゃに気を取られ、そのまま遊んでしまう・・。ようやく朝ご飯に手をつけ始めても、今度は「あ、トマト、トマトは下から読んでもトマト!」などと言葉遊びに夢中になってしまう。その度に親はイライラして「早くしなさい!」と連呼することになります。

そして「どうして毎朝同じ準備をさせるためだけにここまでの気力を奪われなければならないのだろう」「もう朝からイライラするのは嫌だ」とうんざりしながら反省会モードなわけです。

 

この朝の悪循環のひとつの解決策は、「子どもの集中を妨げるものを極力なくす」ことです。

朝準備がスムーズにいかなかった原因は、

 

1.食卓で、朝ご飯でなく、テレビに注意を奪われた

2.子ども部屋で、着替えでなく、おもちゃに注意を奪われた

3.食卓で、トマトを食べることではなく、言葉遊びに注意を奪われた

 

これらにあります。

ADHDでなくとも、そもそも子どもはまだ発達途中の存在。大人のように「何時までに出発しなくちゃ!」という大きな目標に向かって集中し続けることがなかなか難しいのです。ですから、「集中は容易に奪われるものである」ことを前提に先手をうつのです。具体的には、環境を見直します。

 

1.朝テレビはつけない

2.前夜から着替えをおもちゃのある子ども部屋ではなく、リビングに出しておく

3.ご飯の終了時刻を意識できるようにテーブルの子どもの目の前に時計を置く。「30分までに食べ終われるかな、よーいどん!」

 

脱線がずいぶん減る方法です。こうして環境を整えることで、叱らなくてすみますし、子どもの側も「よし!できたぞ!」と達成感をもちやすくなります。

 これが大人のADHDの方にも共通して言える、やる気を出して継続する方法です。お片づけを始めるときの三つのポイント(「飽きっぽい自分とのつき合い方」http://www.asahi.com/articles/SDI201609076696.html)の

 

③誘惑の少ない環境を作り上げる(やっちゃだめなことを我慢する力は弱いから)

 

を思い出してください。

いざお片づけをしようと意気込んだものの、誘惑は多いもの。これまでお会いした方々が、お片づけ中に中断した原因は次のようなものです。

 

・天気がよかったから、「こんな行楽日和に家でひとりでお片づけするなんてもったいない。外に遊びに行こう。お片づけなんて、天気の悪い日にしないともったいない」

・雨降りの日にお片づけしても、押し入れの奥の空気を入れ替えることにはならないし、洗濯物だって乾かない。どうせなら晴れた日にしようっと

・いざしようとすると、思い出の品がたくさん。アルバムに手紙、カセットテープなど手に取っているうちに、思い出にひたって中断。余計に部屋が散らかった

・やる気はあったけど、テレビをつけていたら、いつの間にか3時間経っていた

・友達から遊びに誘われたので行った。滅多に会えない友達だから

・電話がかかってきて、長電話になってしまった

・お掃除の裏技をネットで検索していたら、いつのまにか4時間ネットサーフィンしていた

・そういえば、眠い気がして寝てしまった。

 

いかがでしょうか。

自分なりの中断理由が予測できる場合は、阻止できる環境を先に作っておきましょう。

 

・「天気にかかわらず、私はやるんだ」と言い聞かせ、周りにも公言しておく

・どうしても天気という条件が譲れないのなら、予備日を設ける

・思い出グッズを閉じ込める箱を用意して中身を見ない

・テレビもネットもできない場所でする(たとえば無線LANの電源コードを誰かに預かってもらう)

・電話の電源を切っておく(片付け終わるまで電話が使えない!となると急いでするかも)

・ネット検索前にタイマーを使って10分後にアラームを鳴らす。それまでに裏技を見つける

 

環境を整えることは、思った以上に効果を上げます。やる気だけに頼りすぎず、工夫してみましょう。自分自身にも、子どもにも。

 

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【大人のADHDの集団認知行動療法始めます】

このコラムのような大人のADHDの特徴で、日々の生活お困りの方を対象にした集団認知行動療法(グループカウンセリングの一種)を始めます。

今回のグループは特に「時間管理」に特化したものです。時間を味方に付けて、余裕のある生活を目指しませんか。

 プログラムでは、スケジュール帳をお配りして、1日の時間管理から1週間の時間管理までを練習します。夜更かしをやめて朝気持ちよく起きる、朝起きてから出かけるまでの準備をスムーズに行う、夕方のバタバタに負けずに忘れずにこなす、日中効率よく物事を処理する、複数の日にまたがる期限のある処理ができることなどを目標にしています。

 

メンタルヘルス岡本記念財団からの研究助成金を受けて行う、研究目的のグループです。そのため、参加は無料です。

 

次の条件を全て満たす方を募集します。

①現在精神科病院に通院中もしくはカウンセリングを受けていらっしゃるなど、本プログラム終了後もなんらかのフォロー体制が整っている方。

②全9回の参加が可能な方。

③20歳から65歳の、グループ形式でテキストを読んだり、書き込んだりするのに支障のない方。

 

福岡市近郊にお住まいの方、ぜひともふるってご参加ください。

 

写真・図版

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大人のADHDについて、もっと学びたい方のためのワークブックをご紹介します。

『成人ADHDの認知行動療法~実行機能障害の治療のために』 

(メアリー・V・ソラント著、 中島美鈴・佐藤美奈子翻訳、星和書店)

前半は、大人のADHDの特徴や診断、理論、併存症に治療法、事例などが書かれている専門的な読み物です。

後半は、大人のADHDの集団認知行動療法用のテキストとリーダーズマニュアルになっています。ご本人がひとりで書き込みながら進めていくこともできますし、グループで使うこともできます。

計画的に物事を行えるようになったり、やる気を出す方法を学んだり、時間管理や整理整頓が行えるプログラムです。

私が翻訳に関わった本ですが、読んでいて本当に興味深く、面白い本でした。

こちら(http://www.amazon.co.jp/dp/4791109090/別ウインドウで開きます )からお求めいただけます。

 

<アピタル:上手に悩むとラクになる・主婦の隠れたADHD> 

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/

(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などを経て、現在は福岡県職員相談室に勤務。福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪加害者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。趣味はカフェ巡りと創作活動。