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先日、福岡市医師会のマージャン大会に参加しました。マージャンは偶然が強く影響するゲームです。いい加減に打っていても運が良ければ勝ちます。しかし、コンスタントに勝ちたいならば、勝つ確率が最も高い選択はどれかを常に考えてプレーします。

医療にも似たところがあります。医療は不確実です。多くの病気は自然治癒するので、いい加減な治療をしても治るときは治ります。一方で、現時点で最善だとされる治療をしても結果が悪いときもあります。それで医師は、患者さんが治る確率が2%でも1%でも高い治療法はないか、常に考えています。マージャンなら勝ちにこだわらなくても楽しくプレーできればいいですが、医療においては患者さんにとっての最善を医師は目指さなければなりません。

 

さて、マージャン大会のことです。ワンフロア全体が医師会の貸し切りでした。さすがに卓では禁煙だったようですが、壁もなにもない隣の一角が喫煙所だったようで、たばこの煙が流れてきました。まあ雀荘ですので全面禁煙にしろというもの野暮(やぼ)ですが、なんの意味もない「なんちゃって分煙」を久しぶりに経験しました。

同じ室内で、喫煙席と禁煙席を分けただけなのは「なんちゃって分煙」です。はなはだしい場合は喫煙席の隣が禁煙席、というときもあります。意味がないことは誰にだってわかるでしょう。「分煙してます。一応は配慮していますよ」というポーズだけです。だったらはじめから「全面喫煙可」と標榜(ひょうぼう)するほうが潔いぶんだけマシです。

喫煙席と禁煙席の距離を取っているところもありますが、煙は空気中を漂いますのであまり意味がありません。どうしても同じ屋内で喫煙所を設けたいなら、空港によくあるような完全に仕切られた喫煙スペースにするしかないでしょう。厳密に言うなら、これでも人の出入りや服についた煙による受動喫煙は起こります。

 

しかし、そこまでとがめると、屋外の喫煙所もだめということになります。その辺りは兼ね合いで、議論があるところでしょう。喫煙スペースや屋外の喫煙所も許さん、というのは厳しすぎるように私は思います。同時に、そのような厳しい意見が出るのはやむを得ないとも考えます。本来であれば責任を持って分煙に取り組まなければならない企業が、受動喫煙の害についてきわめて甘い認識しかしていないからです。

 

何度も言うようですが、JTは受動喫煙の害を明確には認めていません。「受動喫煙の害なんてたいしたことがない」という本音を隠そうともしていないように思えます。JTは「たばこを吸われる方と吸われない方の協調ある共存社会の実現」を目指しているそうですが(https://www.jti.co.jp/tobacco/responsibilities/index.html別ウインドウで開きます)、私は信用していません。「一応は配慮しています」というポーズだけだと思います。

 

受動喫煙の害も偶然が影響します。受動喫煙を受けていても肺がんにならない人もいれば、受動喫煙を受けていなくても肺がんになる人もいます。しかし、受動喫煙を受けている方が肺がんになりやすいのは確実な事実です。その事実を踏まえた上で「協調ある共存社会の実現」を考えていただきたいものです。

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。