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 「がんと就労」をテーマにした連載「がん、そして働く」に、読者のみなさんから経験談がメールで寄せられています。みなさんが抱えている悩みや経験は多岐にわたります。「読者から」として、随時紹介していくことで、「がんと就労」「がんと仕事」といったテーマをより幅広く、かつ掘り下げていけたらと思います。初回は、東京都杉並区の会社員、小林薫さん(39)のメッセージです。(アピタル編集部)

 

 昨年、大腸がん手術を受けた直後の7月に筆者の桜井なおみさんにお会いしたことがあります。術後ということで精神的にも体力的にもきつかった時期でした。また仕事の能率も落ちていることで勤務する出版社に迷惑をかけていると仕事を続ける自信を失っていた頃です。

 その時に桜井さんに言われたことは、「自分から仕事を辞めてはいけない」との励ましでした。辞める必要もないのに会社を辞める人があまりにも多いということでした。

 実は今年の7月から8月にかけて、手術のためにまた休職をしました。2年連続で長期休職し、会社に迷惑をかけてしまいました。

 

 最初に、がんがみつかるきっかけとなったのは、2014年の秋に受けた会社の健康診断でした。便に潜血があったため、「精密検査を受けてください」という通知を受け取りましたが、当時の私は多くの仕事を抱え、土日も家で仕事をするような生活をしていたため、潜血ぐらいあってもしょうがないな、という感じでした。ところが、東京都内の病院でレントゲン撮影などの検査をした結果、腸にポリープが見つかりました。このときはポリープが、がんかどうか確定していませんでしたが、2015年1月に内視鏡手術で取った結果、がんであることとリンパ節転移の可能性から、その周辺を切除する追加手術をした方がよいと主治医に告げられました。抱えている仕事のきりがいい2015年4月、実家がある札幌の病院で手術を受けました。

 相談した会社の上司は「早く手術を受けた方がいいのでは・・・」と声をかけてくれました。主治医と相談し、仕事のきりがつく4月まで待ち、ゴールデンウィークをからめて1カ月の休職をとって手術をしました。東京では、一人暮らしをしており、世話をしてくれる人はいません。実家の母親も介護で忙しく、東京に長期間出てくることはできませんので。

 今春からは、腸の一部が狭窄(きょうさく)したため、有給休暇も使って週末に札幌の病院に治療のために通う生活を続けました。夏には入院して狭窄部分を取り除く手術を受けました。この手術のときは、残りの有給休暇と夏休みでは足りず、2週間ほど欠勤扱いとなりました。

 札幌の病院では、看護師さんから「会社から何も言われない?」と言われたことがありました。札幌では、がんを理由に仕事を辞めさせられる人が少なくないとのことでした。「患者さんの中には、会社にがんと言わないでほしいという人もいるんですよ」と言っていました。

 その点、東京の方が「進んでいる」と思いました。幸いなことに職場からはゆっくり治してくるように送り出してもらえました。(ただし、もう3回目はないのではないかと思ってますが)

 がんになる前は、職場で企画をどんどん出していました。しかし、この1年は、自分の病気の治療が精いっぱいで内向きになっていたのかな、と感じています。正直、会社のお荷物になっているんじゃないかと考えることもあります。

 ただ、昨年は1年先のことしか考えられなかった私ですが、今は2年先のことも考えることができるようになりました。

 世の中、がんというとメディアで深刻なケースが取り上げられるので、「がん=おしまい」という印象が強いと思います。私も、自分ががんになるまで、どんながんでもステージは同じだと思っていたくらいです。

 私は今、普通の生活に戻っていく患者になりたいと考えています。周囲に積極的にカミングアウトしたり、SNSで闘病記を書いたりすることも必要ないと考えています。

 がんになって人生観が変わる人がいることは理解できます。ですから、仕事を辞めてがん患者のために尽くすこと、もっと自分のために生きようと第二の人生を歩む人がいることも理解できます。正直、私のように定期通院で経過観察しているだけで特別ながん治療を続けていなくても、気力を持ち続けることはなかなか大変であることは事実です。いつも再発に怯え、1年後、2年後までしか自分の人生が見えないので、「もっと違う生き方があるのではないか」と考えが時々もたげてしまうからです。

 私が桜井さんへの連載にメッセージを寄せたのは、病気で入退院・通院を繰り返し、効率が落ちている社員がいても、独自の裁量で働き方をいろいろ考えてくれる会社がすでに存在していることを伝えたいということです。

 もうひとつは、がんサバイバーも働き続けることができるということを会社や社会に見せることが、「後輩たち」のためでもあると思うからです。

 桜井さんの教えの通り、私は絶対仕事を辞めないと心に誓っています。

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<アピタル:がん、そして働く・読者から>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/(岩崎賢一)

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき・けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで、医療を中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集者を経て、現在は連載「患者を生きる」担当。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』、『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)