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 前回は子どもの例を参考に、片付けのしやすい環境について紹介しましたが、今回はADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性と子育てについてです。子育てをしている方で、次のような困りごとはありませんか。このチェックリストをもとに、ADHDの特性が、どのように子育てに関連するのか解説してみたいと思います。

 

□子どもにイライラして、言いすぎてしまう

□自分の気分や興味関心で、子育ての方針がコロコロ変わる

□宿題などを子どもにコツコツ取り組むように言うのが苦痛

□子どもも自分と同様に部屋を散らかす

□時々何もかも放り出して逃げたくなる

□子どもの遊びにつきあうのが退屈でしょうがない

□子どもの保育施設や学校、習い事などへの提出物が遅れる

□子どもが言ったことをすぐにできないと、イライラしてしょうがない

 

 これらは、誰しも大なり小なり経験する「子育てあるある」なのかもしれません。しかし、このあたりの主観的な感覚は、よくよく話を聞いていると、頻度や程度にかなりの個人差があるようです。ADHDの特性を多く持つ方が親になると、子どもが小さいうち、上記のような困りごとを常に抱きながら、毎日を送ることが多いようです。その結果、「ちゃんと育児をがんばれない自分が情けない」と落ち込んでしまう方から、イライラして子どもに手をあげてしまい自己嫌悪から立ち直れない方、育児放棄してパチンコ店に入り浸ってしまう方まで、反応はさまざまですが、なんらかの苦痛を感じて不適応に陥っていることもあります。

 

 多くのADHD特性をもつ親御さんが口々にこうおっしゃいます。

「そもそも私は親に向いていないのかも・・・」

特に女性ではこうおっしゃる方が圧倒的に多い印象です。どうしても多くの家庭では、子どもと過ごす時間が圧倒的に多いのが女性だからなのかもしれません。親に向いているかどうか、という問いのたて方よりも、子育てにADHD特性をどう生かすか!という問いのたて方の方が建設的でしょう。(それは次回ご紹介させて下さい)

 

 子育てでは、「待って見守る」ことが大切だ、とよく耳にしませんか。そもそも待つのが苦手なのがADHDの特性のひとつなのですから、技能でも理解力でも心の発達でも一夕一朝には急に成長しない我が子の変化を、じっと待つことは苦手です。

 新奇性や相当な報酬がなければやる気を出すことが難しいとか、衝動を抑えるのが苦手で気持ちや欲求を我慢するのが苦手といったADHDの特性が子育てにどう関係するのか。改めて冒頭のチェックリストを見てみましょう。このチェックリストは、子育てに関するネガティブな側面に偏った項目ですので、必然的にネガティブな側面との照らし合わせが多くなっています。もちろん、子育てに特性を生かす方法もあります。それは次回ご紹介しますので、ぜひご覧下さいね。では、参りましょう。

□子どもにイライラして、言いすぎてしまう

(まず前提として、ADHDの人は、たくさん活動を入れすぎたり、外への適応にエネルギーに使い果たしたりしている場合が多いので、一日の終わり、特に帰宅後は、疲労がピークです。まさに〝電池切れ〟のように、動けなくなるという方もいらっしゃるくらいです。こうしたタイミングには、日頃受け流せる子どもの言動にも寛容でいられなくなるというのは、誰しも経験することでしょう。そうした〝イライラ〟にブレーキをかけにくいのもまたADHDの特性です。)

 

□自分の気分や興味関心で、子育ての方針がコロコロ変わる

(ADHDでは一貫性を重視せず、その場の気分や欲求に飛びつくのが特性のひとつです。そのため、その場、その場ではウソはなく、本人なりに本気で、言ったことを忘れてしまっていることも多々あります。)

 

□宿題などを子どもにコツコツ取り組むように言うのが苦痛

(自分自身もコツコツと地道に取り組むことが苦手です。なので、子どもにそう指導するのも苦手なのです。コツコツ取り組めない理由は、脳が〝すぐに結果の出る〟こと、〝新しいもの〟を好むからです。)

 

□子どもも自分と同様に部屋を散らかす

(これも同じく、計画をたてて物の置き場を決めたり、使ったものを元の場所に戻したりすることをしないためです。さらに衝動買いも多いので、物があふれています。こうした場合、子どもにも片付けを教えることができないので、子どももそうなりがちです。親を反面教師にして、子どもにはお片づけ名人になって欲しいのですが。)

 

□時々何もかも放り出して逃げたくなる

(ADHDの方の特徴的な行動の一つに、〝先延ばし〟があります。すぐすればいいことなのに、面倒くさがって、後回しにしてしまうのです。先延ばしにされた雑用、家事、仕事は雪だるま式に不安をかき立て、寝ていても、旅行に行っても、楽しいことをしていても、脳の片隅から消えることなく追いかけてきます。ためにためた結果、〝もう何もかも放り出して逃げたくなる〟とおっしゃる方が案外多いのです。中には、死を選ぶ方も。でもよくよく聞いてみると、最初に先延ばしたことは、アイロンがけであったり、書類の提出であったり、ささいなことが多いものです。ちりも積もれば山となる。まさにそれで、ささいなことも積み重なると、より事態を深刻にし、中には借金や失職などで苦しい思いをする人もいます。)

 

□子どもの遊びにつきあうのが退屈でしょうがない

(子どもはわりと同じ絵本を読みたがり、同じ遊びに繰り返しつき合ってもらいたがります。一方、ADHDの方の脳は〝新奇性〟を好み、繰り返しではすぐに退屈してしまいます。だからといって、子どもに愛情がないわけではありません。)

 

□子どもの保育施設や学校、習い事などへの提出物が遅れる

(興味のないものや、すぐに仕上がらずじっくり取り組まなければならないような書類を書くことは、ついつい後回しにしがちです。これは、そうした刺激に、欲求が満たされた時に活動が盛んになる脳の「報酬系」が反応しにくいので、やる気を起こすのにかなりの努力が必要だからです。また、期限から日数を逆算して少しずつ取り組んで書類を仕上げる、といった計画をする力が弱いため、間に合わないことも考えられます。中には、そもそも提出物があったことすら気づいていないか、忘れていることもあります。)

□子どもが言ったことをすぐにできないと、イライラしてしょうがない

(衝動性が高いので、イライラが外に出やすい傾向もありますが、基本的には短気です。イライラの原因は多くは、相手に結果がすぐに出ることを期待するからです。)

 いかがでしたか?次回は、逆にこれらのADHDの特性をどう子育てに生かしていくかをご紹介します。

 

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【大人のADHD集団認知行動療法プログラム募集終了のお知らせ】

9月16日にこちらで募集させていただきました大人のADHDの集団認知行動療法プログラムに、たくさんのご応募ありがとうございました。おかげさまで、定員となりましたので、募集を終了致しました。来年度にも実施予定です。詳細が決まり次第、こちらでご案内させていただきますので、よろしくお願い致します。参加を検討されていて、「詳細が決まり次第来年度のプログラムのことをメールで知らせて欲しい」と希望される方は、①お名前 ②年齢 ③性別 ④郵便番号と住所 ⑤携帯電話番号 ⑥パソコンのメールアドレスを添えてこちらまでご連絡ください。

写真・図版

 (大人のADHD集団認知行動療法研究事務局あて)

*携帯メールから送信される場合には、PCメールを受信可能に設定しておいてください。

*メールによるカウンセリングには応じておりませんのでご了承下さい。

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【ADHDの関連書籍のご紹介】

大人のADHDについて、もっと学びたい方のためのワークブックをご紹介します。

『成人ADHDの認知行動療法~実行機能障害の治療のために』 

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<アピタル:上手に悩むとラクになる・主婦の隠れたADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/

(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などを経て、現在は福岡県職員相談室に勤務。福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪加害者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。趣味はカフェ巡りと創作活動。