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 Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアを通じて記事やブログなどを拡散するインターネット上のサイトを「バイラルメディア」と呼びますが、こうしたネット上の情報をみなさんはどこまで信じていますか。

 ソーシャルメディア上のボタンを押せば、その人とつながる人に記事などが広がります。そのバイラルメディアの記事を見に来る人が多ければ多いほど、広告収入が増えるので、思わず本文を見たくなるような目を引きやすいタイトルがつけられています。しかし、その情報は信憑(しんぴょう)性の乏しい内容が多く、特に健康関係のバイラルメディアの内容はひどいと思います。

 

 健康に関する記事は、家族の命にもかかわることなので、ただ面白いとか、耳目を集めればいい、ということでは済まないのです。でも、これは、バイラルメディアだけの問題ではありません。活字になるともっともらしく見えるかもしれませんが、一般的には信頼性が高いとされる大手企業のサイト、雑誌、書籍にも、おかしな医療情報が紛れています。

写真・図版

 

 以前、母乳に関してある雑誌のインタビューに答えましたが、同じ紙面に載っている人がどうもおかしなことを言っていたのです。乳腺炎と特定の食べ物の関係は証明されていないのに、「授乳中のお母さんは予防のために○×な食事をしなさい」とか、「粉ミルクは母乳よりも甘い」などと根拠のないことを答えていました。実はこの人は、あまり授乳に詳しくない人だったようで、雑誌を作る側が取材相手の選定を間違えていたのです。確かに医療者としての資格は持っていても、本当に詳しいかどうかは、なかなかわかりにくいものです。でも、雑誌を作る人が、それを見極めないと読者は困るのです。

 この連載で睡眠時間にゴールデンタイムがある、という誤解について、以前、書きましたが(9時に寝ないとキレる子になる?http://www.asahi.com/articles/SDI201609157448.html)、この記事を読んだ人から「いろいろな説があるんだな」という感想をもらいました。

 でも、それは違います。ゴールデンタイムが「ある」という説と、「ない」という説は、同じ確からしさがあるのではないのです。午後10時から午前2時に眠らないと成長ホルモンが出ない、というのは誤解から生まれた都市伝説です。一方、いつ眠っても1日の成長ホルモン分泌量が同じ、というのは専門家の研究結果です。ところが、読者の感想だけでなく、ライターや編集者のなかにもいろいろな意見を載せればバランスが取れる、と思う人がいます。雑誌などを企画する編集者や、記事を書く記者たちが自覚を持たないと、デマが事実のような顔をして広まります。

 他にも、少し前にある雑誌が、「医者からもらった薬は飲むな」という特集を続けていましたね。医療関係者の間で大変批判され、患者さんを動揺させました。取材を受けた発言者の言葉が意図的に曲げられたり、ショッキングな言葉を勝手に挿入されたりして、問題にもなりました。医療不信をあおるだけでは、社会にとってはマイナスです。雑誌はたくさん売れたのかもしれませんが、こういった「売らんかな」の姿勢は論外です。

 そうでなくても、メディアに関わる人は、取材相手を選び、単なる両論併記にならないように裏付けを取り、根拠を分かりやすく示さないといけません。もっともらしい勤め先や資格だったとしても、他の専門家がその人物をどう評価しているか、その分野で異端とされていないか、ということも調べる必要があります。このように、メディアはもっと人の命や健康に対して敏感にならなくてはいけません。

 そして、読む側の私たちも、以下のことに気をつけましょう。

 (1)誰が記事を書いているか、誰が取材に答えているか

 (2)意見の根拠は載っているか

 

 ネットで検索して、上位に出てくる順番に関連性が高いわけでも、PV(ページ・ビュー)が多いわけでもありません。信頼できる情報を載せるサイトが、検索の上位に出てくるとは限りません。私が調べ物をするときは、厚生労働省や消費者庁といった官公庁、国立感染症研究所、各種学会のホームページで調べます。内閣府のホームページには、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援について信頼できるサイトのリンク集もあります。

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/kiremenai/link_list/index.html別ウインドウで開きます

 ネットで調べ物をするならぜひ、ここから見てください。

 特にママ向け育児サイトには注意をしてください。体験談、ファッションくらいまでは参考にしても、そういったサイトの健康や栄養、育児に関する記事はそのまま信じてはいけません。

 例えば、「離乳食は遅ければ遅いほうがいい」「粉ミルクを飲んでいるとIQが低くなる」「感染症は他の子どもからうつしてもらえばいいから、予防接種は受けなくてもいい」「赤ちゃんにはビタミンKの投与はいらない」といった類いのものです。子どもや母親に健康被害が出る危険があり、有害ですらあります。

 本当はアメリカのCDC(疾病対策センター)やWHO(世界保健機関)のように見やすく、よくまとまったサイトがあるといいのですが、困ったことに信頼できる情報を載せるサイトは日本では見つけにくいのです。こういったサイトは英語ですが、アイキャッチな画像もあり、一般の人が知りたい事柄について分かりやすく、平易な言葉で書いてあります。ブラウザーソフトの翻訳機能で、日本語にして読むこともできます。海外の官公庁のサイトは広報の人が熟慮して作り、予算も投じられているのでしょう。国民の命を守るためにぜひ、官公庁のホームページはそうしてほしいと思います。

 もっと詳しく知りたい方は、メタモル出版のサイトのブログ「子どものケアきほんのき」も読んで下さい。(下記「関連ニュース」のリンク参照)

 

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

 

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。