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 自分の感情を上手に付き合うためには、まず自分を知ることから始めようとスタートした連載「医療・介護のためのアンガーマネジメント」に、読者からメールが届きました。「あなたの怒りの測り方」(http://www.asahi.com/articles/SDI201609308726.html)をもとに、これまでの怒りを振り返ったとき、高い数字が続いてしまったというケースです。同じようなことは、みなさんの中にもあると思います。

 

写真・図版

医療系専門学校に通う62歳女性(東京都)からのメール

 長年、教員生活をしてきました。理不尽な怒りを生徒や保護者から投げつけられたり、同僚のカバーをさせられたり、率直に言えばこんなことばかりでした。でも人を育てる仕事にやりがいを感じていました。

 自分の怒りはコントロールした気になって、結構楽しく過ごしてきました。毎日忙しく、気を紛らして過ごしていたわけですが、封じ込めた怒りが自分をむしばんでいたようです。今になって思えばもっと率直に怒りを爆発させる場所を持てばよかったと思います。

 また、自宅では難病を抱えた母親の在宅介護も25年間続きました。教員を退職し、母親も亡くなった今、医療系専門学校に通い国家資格を目指すのは、第一に母を苦しめた難病に対する、第二にそれによって狂わせられた「母と私たちの時間」に対するリベンジです。

 「あなたの怒りの測り方」(http://www.asahi.com/articles/SDI201609308726.html)を読み、自分の「怒り」を10段階で評価していくと、高い数字が続いていたように感じます。

 私にアンガーマネジメントが必要だとしたら、「おい、ずっと9くらいが続いているぞ、そろそろ自分を甘やかせ!」という声を聴くことだったように思えます。それをなかったことにして自分の中に封じ込めてしまった。だから今も「怒り」を怒りとして認識しない思考パターンが身についてしまっているようです。怒りに点数を付けてみてこんな当然のことに気づきました。

 

 

田辺有理子さんからのメッセージ

 メールをお送りいただきありがとうございます。私も教員として我が身を振り返りながら拝読しました。

 理不尽な怒りを投げつけられたり、不本意な仕事ばかりが回ってきたりするのは辛いものです。それが仕事と言われればそれまでですが、爆発寸前の怒りを堪えているうちに、心に蓋(ふた)をして自分の感情に鈍感になってしまう。それがわからないまま、もがき苦しんでいる人もいます。そのような中で、あなたはご自身の怒りを封じ込めていたことに気づいたのだと思います。

 お母様を介護しながら教員のお仕事を続けられてきたご苦労をお推察します。しかし、メールを拝読する限り、あなたはすでにアンガーマネジメントのヒントをつかんでいらっしゃるのではないかと感じました。

 

 メールをいただいた方のように、自分の怒りを封じ込めてしまっている人、仕事と介護で疲弊している人は、たくさんいると思いますので、ここで以前のコラムを少し復習してみましょう。

 ストレスが高い環境で働き続けることも、介護も、終わりの見えない状況は、押しつぶされた心を回復する力を弱らせます。そういう意味では、大きな怒りが続くことにも苦しめられます。もうお気づきですが、怒りを安全な場所で発散する、高い数値が続いた時には少し自分を甘やかして息抜きをするなどといったことは、アンガーマネジメントとしても有効な対処法です。そして、そのためには「自分が怒っている」と認めることが第一歩です。

▼「怒りっぽさ解消のヒントはストレス対処」(http://www.asahi.com/articles/SDI201609167568.html

 

 また、怒りを感じるレベルは人それぞれに異なります。怒りを測る練習をしていくうちに、怒りのレベルが高い出来事ばかりでないことがみえてきます。でも、今回に関しては、これまでの怒りを一つ一つ詳細に振り返るのは止めておきましょう。過去の怒りを思い出して、嫌な出来事を再体験することにメリットはありません。

 強い怒りが続くと、「私は悪くないのに」「なんで私ばかりが辛い思いをするのか」と、周囲への恨みや他罰的な思考がわいてくることがあります。仮に誰かに「つらいなら辞めちゃえば? 断れば?」と言われても、「私がやらなければ誰がやるのよ?」と、受け入れられなかったりします。ストレスや怒りの渦中にいると自分の呪縛から逃れられなくなっていると気づかないものですが、自分の行動を選択しているのは自分自身です。

▼「あなたの怒りの測り方」(http://www.asahi.com/articles/SDI201609308726.html

 

 そしてもう一つ、メールをいただいた方は、怒りのエネルギーを上手に転換している点でも、すでにアンガーマネジメントを実践されています。この方は「リベンジ」と表現されていますが、その当時に満たされなかった、叶わなかった思いを上手に昇華しているのでしょう。学ぶことの素晴らしさや知的欲求が刺激されるワクワク感を十分にご存じ故の選択なのかもしれません。存分に学び、充実した時間を過ごされるよう心より応援しております。

 今後のコラムでは、具体的な怒りへの対処法を紹介していく予定です。気楽に取り組めるものですから、ぜひ試してみてください。

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編集部から

 田辺有理子さんの本が8月31日に出版されました。タイトルは「イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版、2160円)です。(詳しくはアマゾン:http://goo.gl/52wVqv別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。