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 自分がかかった病気を、おなかにいる赤ちゃんにうつしてしまうのは、母親にとってあまりにもつらいことです。今週の連載「患者を生きる トキソプラズマ症」で紹介した東京都の女性(36)は自分を責め続けていました。

 母子感染をテーマにした医療関係者向けの勉強会で、女性の講演を聴きました。おなかの子どもに異常が見つかった時のことや、原因となった可能性がある生肉を妊娠中に口にしていたことを説明する口調は、わずかに震えていて、後悔の念の大きさが伝わってきました。

 患者会を立ち上げた頃、自身の経験を話すと「妊娠中に生肉を食べるなんて、とんでもない」と批判されたこともあったそうです。

 つらい思いをしてまで、なぜ女性は活動を続けるのでしょうか。

 「自分と同じ経験をほかの人に味わわせたくない」という気持ちとともに、感染させてしまった長女の存在がありました。

 出産前に医師から「長くは生きられないかもしれない」と言われた長女は、右の手足にまひを抱えながらも、毎日、元気に過ごしています。5歳になったいま、面倒なことがあると、「(まひがある)右手さんがさぁ、まだ寝ているんだよねぇ」などと言い訳をするそうです。

 取材でそう語る女性の表情には、長女へのいとおしさがあふれていました。

 もちろん、まひのためにできないことはあります。心配はずっと尽きないそうです。

 それでも、長女の成長こそが、女性が抱える苦しみを和らげ、女性の背中を押しているのだと感じました。

 

<アピタル:患者を生きる・感染症>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(宮島祐美)

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