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 自分の子が他の子と比べて小さいんじゃないか、痩(や)せてるんじゃないか、太りすぎているんじゃないか、と心配するお父さんお母さんは多いですね。不安に思ったり、どこに相談したらいいかわからなかったり。今回はそんな親御さんのための話です。

 

 「小さく産んで大きく育てる」というのが、賢い育児法だと思われていた時期があります。生まれる赤ちゃんの体が大きいと、産むのが大変なので、妊娠している女性はなるべく自分の体重を増やさずにいた方がいい、そして生まれたら赤ちゃんには、たくさん飲ませたり食べさせたりすればいい、という説です。でも、実はそのような考え方はあまりよくありません。

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 「バーカー仮説」というのをご存じでしょうか?イギリスのBarkerらが提唱した仮説で、「低出生体重児」だと中年期以降に心血管障害によって死亡するリスクが高くなるというものです。イギリスのイングランドとウェールズ地方で心血管障害によって亡くなった人を遡(さかのぼ)って調べ、胎児の時の状況がその後の健康に関係する、という仮説が1986年に発表されました。その後、多くの医師が研究し、胎内の低栄養状態に胎児が順応した結果、「出生時に体重がとても小さいと、成長後に太っていなくても生活習慣病になりやすい」ということがわかりました。

 母親のお腹の中にいる胎芽期・胎期から出生後の乳幼児期に至るまでのいろいろな環境因子が、成長後の健康や種々の疾病発症リスクに影響を及ぼすという概念で、「DOHaD (developmental origins of health and diseases)」と言います。親から子の1~2世代で伝わる遺伝情報は変わりませんが、遺伝子の発現のしかたが変わり、胎内で低栄養状態だと、その状態に合ったプログラムが発現してしまうのです。

 出生時の体重がどのくらい小さければ問題かというと、在胎週数によって違いますが一般的には2500g未満が「低出生体重児」と呼ばれます。日本の20~30代女性は、時代とともにどんどんBMI(体格指数)が低くなっていて、「やせ願望」が強いと言われています。そして、この飽食の時代なのに、日本人の出生体重は減り続けています。

厚生労働省「出生数及び出生時体重2500グラム未満の出生割合の推移」http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0708-16f_0005.pdf別ウインドウで開きます

 そのため現代では、妊婦さんの体重制限は一律には行いません。BMIによって、このくらい増えていいという体重は違うので、産婦人科の先生と相談しましょう。

 

 2500g未満で生まれたお子さんは、乳児期に急に体重を増やさないようにして、大きくなったらバランスのとれた食事と適度な運動を心がけることになります。体重が小さいことを心配する人は多いです。生まれた時の体重が小さくても、多くは1年前後で他の子に追いつきます。逆に言えばあまり早期に、ミルクをたくさんあげて体重を増やすのは、よくないことがあります。前述の「DOHaD」の観点から、急激に摂取カロリーを付加すると、かえって健康によくないからです。本人がほしがる場合は構わないのですが、無理に飲ませたり食べさせたりすることはやめた方がいいです。

 また、生まれた時の体重は特別小さくなかったのに食べてくれない、食が細くて体が小さいというお子さんもいます。お母さんは一生懸命作ったり、あげる工夫をしたりしても食べてくれないので困るんですね。やはり、無理やり食べさせて食事を苦痛な時間にしてはお互いよくありません。成長して保育園や幼稚園、小学校に入ると周囲につられて食べたり、食欲が増したりするので様子を見ましょう。

 また、母乳やミルクをやめても、離乳食をもっと食べるようにはなりません。成長曲線の下の方からなかなか上がって来ない、体重が横ばいだと焦るものです。例えばお子さんが決まったものしか食べずにバランスを欠く場合、成長期に重要な鉄が不足する鉄欠乏貧血やビタミンD欠乏症、くる病という心配があります。それらは小児科で補充療法ができますから、受診してみましょう。

 

 逆にお子さんの体重が多いことが心配な場合もあるでしょう。体を作る成長期ですから大人のようなダイエットはよくありません。体型だけでなく、体の機能も育っていく時期ですからね。体型は、体重と身長のバランスが大事です。体重は減らなくても現状維持できていれば、身長が増えていきます。除脂肪組織といって、骨や筋肉、内臓が成長すれば相対的に脂肪が減ります。

 とはいえ、食べたい気持ちでいっぱいの子は、食べ過ぎないで現状維持をするだけでも大変です。食事には野菜をなるべく多く取り入れて、肉やご飯よりも野菜料理を先に食べるようにします。動物性たんぱく質は肉だけでなく、魚からも摂るようにしましょう。そして糖分の摂りすぎに気をつけましょう。

 背が小さい場合も、相談が多いですね。子どもが成人になった時の身長を、両親の身長から推定する「target height」という計算式があります。一般には両親の身長を足したものに男の子だとプラス13、女の子はマイナス13をして、2で割ったものが使われています。もちろん誤差はありますが、高身長同士の両親からは小柄な子になりにくいし、低身長同士の両親だと大柄な子になりにくいということですね。

※近年は「最終到達身長」という言葉を使わず「target height」と呼ぶそうです。男児は、(両親の身長+13)÷2±9cm、女児の場合は、(両親の身長+13)÷2±8cmの範囲の中に95%の子どもが入ります。本コラムを読んだ小児内分泌専門医の先生からご指摘をいただきました。ありがとうございました。

 背が大きすぎるのでは?という場合はあまりないとは思いますが、とても珍しいながらも成長が早すぎるという病気もあります。母子手帳の後ろの方にある成長曲線の標準値からだいぶ外れている場合は、小児科医に相談しましょう。

 さきほどから参照することをお勧めしている成長曲線ですが、どのようにして作られるのでしょうか。同じ年齢、性別の子をたくさん集め、標準値とします。文部科学省は学校保健統計調査として、毎年満 5 歳から 17 歳の幼児・児童の、厚生労働省は 10 年ごとに生後 14 日以上小学校就学前 の乳児・幼児の、性別年齢別小児身体計測値データを発表しています。それをもとにした成長曲線が母子手帳の後ろにありますし、6歳以降はこちらでもダウンロードできます(日本小児内分泌学会ホームページ http://jspe.umin.jp/medical/taikaku.html別ウインドウで開きます)。

 早産で生まれた子は、修正月齢で見ましょう。小さすぎる、あるいは大きすぎることが心配だったら、地域の保健センターや小児科に相談してはどうでしょうか。検査などをすることがあります。

また、背を伸ばすサプリメントなどが売られていますが、前述の日本小児内分泌学会はカルシウム、鉄、ビタミンDが不足している子には効果があるものの、充足していれば健康を損なう場合がある、と指摘しています。成長ホルモンの分泌を促進するというサプリメントや成長ホルモンを含むスプレーは効果がないことも合わせて言っています。小児科医など専門家に相談しましょう。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。