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 このコラムでは、「怒り」との付き合い方を紹介しています。怒りという感情は、それ単独で生じることはなく、何か別の感情と連動しているという特徴があります。自分が怒っているとき、あるいは怒った相手に対峙しているときは、その背後にある別の感情に気づくだけで、その怒りに対処するヒントが見つかることがあります。

 怒りは二次感情と言われ、その背後には一次感情があります。例えば、「不安」、「苦しい」、「痛い」、「疲れた」、「寂しい」、「虚しい」、「悲しい」、「悔しい」などが隠れています。人の感情に良いも悪いもないのですが、どちらかといえばマイナスのイメージを持つことが多いようです。感情をどう定義するかについてはまたの機会として、今回は一次感情の他に気分、気持ち、思考なども織り交ぜて紹介します。

 

 医療や介護の現場は、怒りが生じやすい状況があります。身体の不調、病気や治療への不安、痛み、苦痛、大部屋に入院すれば同室の人への気苦労もあるかもしれません。そんな時にちょっとしたきっかけで怒りが爆発してしまうことがあります。一見するとクレーマーと思うような人でも、少し違う角度から見ると、体調が優れない、夜眠れなかったなど、怒りっぽくなっている要因が背後に隠れているかもしれません。

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 怒りっぽく見えて、実は寂しくて気にかけてほしいという人もいます。文句ばかり言われたら、あまり関わりたくないと思いますが、ちょっと雑談してみたら、意外と話しやすくなることもあります。

 時々「お前じゃ話にならん。病院長を出せ!」「責任者を呼べ!」と職員に詰め寄るような怒り方をする人を見かけます。その場で対応している人が一番事情を分かっているのに、「責任者と話をさせろ」と言うのです。治療、検査、処置、説明、接遇など、訴えの内容は様々あると思いますが、その怒りの裏側には「自分を尊重してほしい」という気持ちが隠れているかもしれません。特別待遇する必要はありませんが、場所を変えたり、普段の対応に一言添えたりするだけでも満たされる場合があります。

 怒りの背後に目を向けることで、別の感情が見えてきます。それが怒りに対処するヒントになります。

 

 育児の場面はどうでしょうか。子どもは、怒ってもその背後にどんな感情があるのかを上手に表現できないことがあります。言葉で表現する代わりに物を投げたり、暴れたり、暴言を吐いたりします。そこに隠れている感情を表現できるように促してみましょう。「お友達にからかわれて悔しかった」「失敗して恥ずかしかった」「一人で寂しい」「甘えたい」のかもしれません。「物を投げちゃダメ!」と言うだけでなく、「おもちゃを投げられたら痛い」「大事にしていたコップが割れてしまって悲しい」と一次感情を意識して言葉で表現していくと、お子さんにも伝わっていくのではないでしょうか。

 

 一次感情を捉えられると相手の怒りに対処するヒントがみつかる場合があります。これは自分自身の怒りについても同様です。自分が怒っている時、その背後にある自分の感情に気づかないことがあります。相手の怒りの背後を探るだけでなく、自分の感情にも意識を向けてみてください。

 家事や育児や介護の大変な状況をねぎらってほしいとか、私が頑張っていることを誰かに認めてほしいとか、あの人がうらやましいとか、自分の感情に気づくだけで怒りっぽい状況に何か変化があるかもしれません。また、怒りは身体の状態とも連動しているので、寝不足や疲れ、空腹などが隠れていたら、生理的な欲求が満たされることで、すっきりするかもしれません。

 あなたの怒りの裏側には、何が隠れているでしょうか。

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編集部から

 田辺有理子さんの本が8月31日に出版されました。タイトルは「イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版、2160円)です。(詳しくはアマゾン:http://goo.gl/52wVqv別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。