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 糖尿病と診断されても、40代の男女ともに6割の人は治療を受けたことがなかったり、中断してしまったりしています。忍び寄る糖尿病シリーズ(2型糖尿病)の2回目は、日本糖尿病学会専門医・指導医で、船橋市立医療センター代謝内科部長の岩岡秀明さんに、「40代が糖尿病治療を中断するリスク」と「予備群に気づく方法」についてアドバイスをもらいました。(聞き手・岩崎賢一)

 

 「血糖値が高いですよ」と健康診断や人間ドックで言われても、それを糖尿病と思っていない人が多くいます。血糖値が高い病気が糖尿病です。厚生労働省が定期的に調査している国民健康・栄養調査(旧・糖尿病実態調査)では、最新の2012年の調査結果によると、糖尿病患者やその予備群は約2050万人と推計されているほか、40歳代の人は、糖尿病と診断を受けても、男性で60.7%、女性で57.1%の人は治療を受けたことがなかったり、治療を中断してしまったりしているという結果が出ています。50代から上では、年代が上がるごとに受診している割合が増えていきますが、4割から3割が治療を受けたことがないか、治療を中断している人たちです。

 40代、50代といった早期からの治療が大切ですが、なぜ、治療をしなかったり、中断してしまったりするかというと、自覚症状がないからです。発症後に最初にでる合併症の神経障害でも、出る人は半分もいません。

 40代で治療をしていなかったり、治療を中断してしまったりする人が多い理由は、忙しいし、通院する暇がないからです。

 もう一つの理由は、貧困の問題があります。これは大事なことで、経済力が弱い人ほど、食生活が貧しいのできちんと食事指導ができません。安い丼飯で済ませてしまい、ダイエットのためのお金もない、生活のために働くため病院に通える時間がない、ということが挙げられます。

 

■糖尿病予備群に気づく方法

 健康診断を受けていない限り分かりません。健診を受けていない人は多くいますが、結果的に糖尿病を放置して、悪くなってから受診してきます。自営業や主婦の中には、血糖値が400mg/dl(1デシリットル当たりのミリグラム)ぐらいになったとき、受診してくるケースがあります。

 糖尿病対策は、「健診を受けましょう」という啓発に終わらずに、健診を受けない人たちをどうしていくかを考えないといけません。糖尿病は、自覚症状がないまま進行してしまう「サイレントキラー」と理解してもらうことがまず大事でしょう。

 

■意外と重要な血糖値の見極め方

 軽い境界型の人を見極めるには、空腹時血糖値をはかっただけでは分からないというのも、ポイントです。空腹時血糖値が正常でも、食後だけ血糖値が高くなるのが境界型の初期の特徴です。食後2時間血糖値(食べ始めから2時間)が140mg/dl以上あれば、糖尿病予備群の可能性が高いと言えます。

 健康診断の時、「空腹で来て下さい」と言われて朝食を食べないで行くと、そこで血糖値をはかっても軽い境界型は見逃すことがあります。例えば、朝から胃カメラなどがあるため、前日の夕食以降は何も食べていない場合、空腹時血糖値が100mg/dlでも食後2時間血糖値だけが上がるような軽い境界型は見つかりません。食後2時間血糖値が上がって、次に空腹時血糖が上がるためです。空腹の定義は、8時間以上何も食べていないことです。

 みなさんは、まず、ご自分の家族歴を調べて下さい。次に、体重歴を確認して下さい。おおざっぱですが、目安として20歳の時より、10%以上体重が増えている人、そしてストレスがかかる仕事をしている人、残業が多くて食事も不規則なサラリーマンもいますよね。甘いものが好きな人も注意です。これは飲料水も含みます。また、お酒が好きな人も注意が必要です。このような糖尿病予備群の可能性が高い生活をしてきている人は、まず食後2時間血糖値をはかってもらうとよいと思います。140mg/dl未満が正常です。200mg/dl以上なら糖尿病の可能性が高いと言えます。この中間は、境界型の可能性があるので、ブドウ糖負荷試験をした方がよいです。

 軽い境界型を見つけるためには、糖尿病専門医のいる医療機関やブドウ糖負荷試験までやる人間ドックに行かないと分かりません。そういう理由で、境界型の診断もきちんとされていない人が多いとも言えます。

 厚生労働省の2012年の調査では、糖尿病予備群と糖尿病患者を合わせると約2050万人いると推計されています。6人に1人の割合です。

 この前、こんなことがありました。東京都内の糖尿病専門医のいる有名な医療機関から患者が転院してきました。私が、「食後2時間血糖値ではかります」と言ったらびっくりしていました。「食後血糖値を下げる方が、糖尿病患者にとって心臓病のリスクを下げるために大事ですから」と説明しました。患者の血糖コントロールとしては、食後2時間血糖値は理想的には140未満、できれば170未満にしたいためです。

 こう考えると、会社の健保組合の助成などで人間ドックを受けられる人は、受けた方がいいと思います。

 2型糖尿病は、昔、40歳以上が多いと言われていましたが、今は30代、20代でも発症するようになってきています。ストレスがかかる社会だし、子どものときから肥満の人が増えているためです。豊かになり、コンビニエンスストアに行けば24時間何でも食べられる時代です。20代や30代で太っている人や太ってきている人で、家族に糖尿病の患者がいる場合は要注意です。

 

◆次回は、「糖尿病になるリスクが高い生活って何?」(http://www.asahi.com/articles/SDI201611152436.html)についてお伝えします。

 

<アピタル:アピタル・オリジナル・医療>

http://www.asahi.com/apital/column/original/(岩崎賢一)

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき・けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで、医療を中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』、『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)