『家庭でできるノロウイルス対策のポイント』
[PR]

 ノロウイルスなどによる「おなかの風邪」(感染性胃腸炎)の流行が本格化してきた。流行期を迎えるのは例年より早く、全国各地で子どもや高齢者が集まる保育園・幼稚園、高齢者施設などで、集団感染が相次いでいる。自分や家族がならないためにどうすればいいのか。感染してしまったらどう対処すればいいのか。

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通してみられる。例年、10月ごろから感染がみられ、年末から年明けにピークを迎えることが多い。しかし、国立感染症研究所によると、今年は11月中旬から患者の報告数が急増し、例年より早く流行が本格化しつつある。

 13日に公表された感染研の速報によると、11月28日~12月4日の1週間に約3千カ所の定点医療機関から報告されたノロウイルスなどの感染性胃腸炎の患者報告数は、5万4876人。前週の4万607人から増えた。1医療機関あたりでは、17.37人で、昨年の同時期に比べて3倍近くになっている。宮城(45.75人)が最も多い。このほか山形(33.47)、三重(27.71)、埼玉(26.73)、東京(26.64)、神奈川(23.62)、奈良(23.09)、宮崎(20.83)、千葉(20.24)、兵庫(20.12)、の計10都県で警報レベルになっている。

 ノロウイルスは、どんなウイルスなのだろうか。手の指や食べ物を通じて口から入り、腸管で増殖することで、嘔吐や下痢を繰り返すつらい症状を引き起こす。通常は、1~2日で症状がおさまるが、子どもやお年寄りは重い脱水症状にならないよう注意が必要だ。

 感染してから症状が出るまで1~2日の潜伏期間がある。感染した人の便や吐いた物を処理した際に手洗いが不十分だったり、感染した人が食品の調理などをした汚れた食品を食べたりすることで感染が広がる。

 ノロウイルスは、インフルエンザやロタのようなウイルスとは違って、感染を予防するワクチンはない。治療も抗ウイルス薬はないので、症状を和らげる対症療法が中心となる。脱水症状がひどい場合には、点滴などをする。便などを通じてウイルスを体外に出す必要があり、つらい下痢の症状があっても、下痢止め薬を使うことはかえって回復を遅らせることもある。

 

■■■対策編 ノロ予防策は? なってしまったら?■■■

 つらい嘔吐(おう・と)や下痢を引き起こすノロウイルス。感染しないために家庭でできる対策には、どんなことがあるのか。予防策や実際になってしまったときの注意点について、専門家に聞いた。

 済生会横浜市東部病院の十河(そ・ごう)剛(つよし)・小児肝臓消化器科副部長は「絶対感染しないための対策というのは難しいが、有効なのは手洗い」と話す。外出から帰った時やトイレの後、調理する前など、こまめに手洗いをすることが重要だという。消毒用のエタノールは、ノロウイルスには効果がないと言われている。手のひらや甲、指先や指の間や付け根、手首をせっけんを使って泡立て、水でしっかり洗い流すことが重要だ。

 日常生活では、どんなことに注意すればいいのか。場面別にまとめてみた。

 

●キッチンやダイニングでは

 寒さが増すこの季節、家族みんなで食卓を囲んで鍋などの料理をつまむことも多いが、キッチンや食事をするダイニングが、感染の場になることもある。

 ノロウイルスは二枚貝などの魚介類にも含まれることがあり、加熱が不十分な場合に食中毒になることもある。ウイルスは一般的に熱に弱いので、加熱処理をすることで、食中毒を防ぐことができる。中心部まで火を通すため、85~90度になるように十分加熱する必要があるという。

 ノロウイルスは乾燥すると舞い上がる。料理を盛り付ける前に皿を一度洗っておくのも効果的だ。

 

●トイレでは

 トイレも感染の危険性が高い場所のひとつ。排便時に、便器や周辺に便が付着することもある。便を流す際には便器のふたをしめるようにするといいという。

 トイレの後に手をふく際にも注意が必要だ。お尻を拭くときに手などに、ウイルスがつくこともある。手洗いが不十分だと、タオルを通じて感染が広がるおそれがある。一人ずつ個別にタオルを用意したり、使い捨てのペーパータオルを使ったりするのがおすすめだ。

 

●脱水にならないためには

 それでも、ノロウイルスに感染してしまうことはある。家族がなってしまった場合、どのように対処したらいいのだろうか。

 下痢や嘔吐は1~2日でおさまることが多いが、「脱水症状にならないように注意する必要がある」と十河さんは話す。下痢や嘔吐を繰り返すことで、水分などの体液が奪われるため、適切に水分などを補給しなければ、脱水症状に陥ることがある。

 最初は口の中が渇く状態になり、そのうち、よだれが減る。次第にめまいやだるさが出て、重症化すると、けいれんや意識を失うこともあり、注意が必要だという。

 こうした状態にならないように、体から出た水や塩分などを補給する必要がある。水ではなく、体液に近い経口補水液を飲むことをすすめる。スポーツドリンクは経口補水液に比べると糖分が多いので、飲み過ぎに気をつけた方がいい。

 十河さんは、「飲み方のコツは『ちびちび・ごっくん』と少しずつゆっくり飲むこと」をすすめる。子どもが飲むのをいやがる時は、ゼリータイプのものを用意したり、製氷皿で凍らせて口に入れたりするといいという。

 

●食事はいつから?

 一方、嘔吐や下痢をしている子どもへの食事はどうしたらいいのか。

 ある程度症状がおさまり、本人に食べたいという意欲が出てきたら、普段通り食べさせてもいいという。十河さんは「かつてはおなかを休ませるために食べさせない方がいいと言われてきたが、今はおなかを使いながら治すのが主流になってきた」と話す。

 ただ、油分の多いものなどは避けて、消化のいいものを選んだほうがいいという。

 十河さんも委員を務める「教えて!『かくれ脱水』委員会」のサイト(http://www.kakuredassui.jp/別ウインドウで開きます)では、詳しい対策などを紹介している。

 

●吐いてしまったら?

 吐いてしまった場合は、特に注意が必要だ。まず、処理をする人以外は別の部屋に避難するなどし、換気をする。

 床の汚物は半径2メートル程度まで飛散することがあり、処理する際に注意していても気づかず、衣服にウイルスがついてしまうことがある。処理した後にすぐに衣服を着替えるか、エプロンやマスク、手袋、靴カバーなど使い捨てのものを使うといい。使い捨ての衣服などは、100円ショップなどでそろえることができるので、普段から常備しておくといざという時に役立つ。

 吐いたものなどを処理する際にはまず、汚物が飛び散らないようにペーパータオルでふき取り、その後、次亜塩素酸ナトリウムで浸すように床を拭く。その後、水拭きをする。

 次亜塩素酸ナトリウムは、市販の漂白液を薄くして使う。汚物がついた床など汚れがひどいところは、1000ppm(0.1%)、衣服や便器、ドアノブなどは200ppm(0.02%)の濃度にして使う。

 厚生労働省の「感染性胃腸炎(特にノロウイルスについて)」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/norovirus/別ウインドウで開きます)が参考になる。

 

<アピタル:ニュース・フォーカス・オリジナル>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(北林晃治)

北林晃治

北林晃治(きたばやし・こうじ) 朝日新聞記者

2002年朝日新聞社入社、北海道報道部、さいたま総局をへて、東京本社生活部、科学医療部。厚生労働省など社会保障、医療分野を取材。東日本大震災後、社会部をへて再び科学医療部へ。2016年9月からアピタル編集部員