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 2017年、このコラム「彩夏の"みんなに笑顔を"」も5年目に入りました。年もかわり、気持ちも新たに書き進めていきたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 がん治療の後遺症で手足がむくむ「続発性リンパ浮腫」の診断を受け、約1ヶ月の入院治療がはじまったのは昨年の11月半ばのことでした(http://www.asahi.com/articles/SDI201611303650.html)。集中的な治療の結果、一定の成果を得て予定通り12月半ばに退院しました。

・・・というのも束の間、クリスマスイブの日から40℃の熱が出て、今度は大学病院へ急きょ入院することになってしまいました。どうにか年越しは自宅で迎えられたけれど、2016年は身体と向き合う時間の多い一年でありました。

 

 今回は、リンパ浮腫での入院について、病院生活で得た気づきや治療内容をまとめます。

 

高齢の患者さんたちと交流

 治療以外の時間で入院中の日課のひとつは、食堂でご高齢の患者さん達とお話をすることでした。認知症のおばあさんとは一日に何度も同じお話をしたり、私のことをお姫様と思い込んでいるおばあさんからマッサージ講習を受けたり、病院ごと船旅に出ている空想に乗っかったり、経営理論を語ってくれる自称24歳のおじいさんがいたり、夜はさみしがり屋のおばあさんの隣で胃瘻(いろう)の処置が終わるのを一緒に待ったりと、変化に富んだ(?)毎日を過ごしていました。

 

 この日課に至ったのには、こんな背景があります。今回入院したのはリハビリ病院でしたが、高齢者の療養病棟という側面もあり、加齢による嚥下障害で食事介助を要する方や認知症を患っている方が大半を占めていました。私のいた病棟も44床のうちリンパの患者が3人、ほかは高齢者という感じです。

 

 今まで臨床最前線の大学病院にばかりお世話になっていた私には、すべてが新鮮だったけれど、医療従事者の大変さは共通していました。また、常に忙しく働く職員を見ていると、言いたいことも言えなくなってしまう患者の気持ちも経験上よく分かります。そういうことを考えているうちに、自然と「患者さんのお話相手」に落ち着いていたのです。とくに、移動の際に見守りが必要な患者さんが職員を待ちきれずに動き出してしまう、そんな場面で、私と雑談をすることによって気を紛らわしてくれれば、という思いでした。

 

 一人の生活に寄り添うのは、当然ながら、きれいごとだけでは済みません。本人や家族、介護をする人、それぞれの苦労や葛藤があるはずです。病棟の日常を眺めながらそれらに思いを巡らせると、胸が締めつけられる思いがしました。短い時間でもあり、表面的な部分しか見えていないとはいえ、介護現場の厳しさを垣間見たように思います。しかし、そんな中でも実直に患者さんと接する職員の方の姿は、とても眩しく感じられ、人の一生や老いてゆくということを考えさせられる時間でもありました。

 

リンパ浮腫の治療とは

 さて、「リンパ浮腫」と聞いたとき、どれだけの人が具体的な治療を想像できるでしょうか。私は今回、自分が診断を受けるまで、それらを深く知ろうとしたことはありませんでした。がん患者ということもあり、身近に情報はあったけれど、自分のがんの種類は関係ないと他人事だったのです。治療は人それぞれという前置きのもと、ひとつのケースとして、私が受けた治療のことを記します。

 

病名は「四肢の続発性リンパ浮腫」

 

 治療の目的は四肢に停滞しているものを、本来あるべきリンパ管へ流すことでした。私の場合、骨盤内のリンパ節が機能していないので、下肢の分も腋窩(えきか)リンパ節へ流すことになります。ここで気をつけなければいけないのが、一度に流し過ぎてはいけないということです。もともと腋窩リンパ節は上肢の処理を担当しているので、下肢までも押し上げてはキャパオーバーになり兼ねません。末長く機能してもらうためにも、労わりながら使う必要があります。

 

 【治療の4本柱】

 1.用手的リンパドレナージ

   セラピストが手でリンパの流れを促す施術を行う。

 2.圧迫療法

   1の状態を維持・促進するため、 弾性包帯を患部に巻いて外から圧迫する。

 3.圧迫下での運動

   2に筋収縮による内からの圧力を加えることで効果UP。

 4.スキンケア

   蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの皮膚トラブルによる悪化を防止。

 

 【四肢の数値の変化】

 腕:(右)マイナス3cm  (左)マイナス4cm

 足:(右)マイナス6cm  (左)マイナス7cm

 

 最初の2週間で四肢周囲の数値はほぼ減り止まり、後半の2週間は自宅で管理するためのセルフケアを治療と並行して教わりました。

 

 リンパ浮腫に完治はありません。今後は、入院治療で良くなった状態をセルフケアできちんと維持することが重要です。そのため、弾性着衣(スリーブ、グローブ、ストッキング)を用いて、日常的に圧迫を行うようになりました。

 

日常生活に新たな気づき

 今回の入院はリンパ浮腫の治療が目的でしたが、かかりつけではない病院にかかったことで別の収穫もありました。いつもとは違う視点から診てもらえたことで、ADL(日常生活動作)向上への新たなアプローチを発見するなど、私の日常に大きく活きるものでした。過去の経過も重要だけれど、それにとらわれない多角的な視点も大切だと実感しました。

<アピタル:彩夏の〝みんなに笑顔を〟>

 http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。