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 今年も「3・11」が近づいて来ましたね。6年前のあの日、みなさん何をしていましたか?

 私は次女の保育園の保護者会に行こうと東京の自宅を出るところで、今まで感じたことのないくらい大きく長い揺れを感じました。その後、長女の小学校に向かいながら、私は下校する娘と行き違ってしまったらどうしようと気が気ではなかったです。でも、お迎えが必要な保育園児・幼稚園児はもちろんですが、災害時に小学校は、ひとりで登下校する児童を家に帰したりしないんですね。それを知っていれば、あんなに焦らなかったと思います。

 

 去年は熊本県でも大きな地震、新潟・糸魚川市の大火災、東北や北海道の台風被害がありましたし、一昨年の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊するなど多くの河川が氾濫したのも記憶に新しいです。今回は、子どもと災害時の備えについてお話しします。

 子どもは、災害時にはいっそうの弱者になります。体が小さく身体能力が未熟で、一人で正しい判断をすることが難しいのです。国の統計によると、不慮の事故や交通事故による死亡者数は減少傾向にあるのに、阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)が起きた年だけ、死亡者数が突出していて大変痛ましいです。(http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27honpen/b1_05_01.html別ウインドウで開きます

 1995年の阪神・淡路大震災の際に初期救急医療体制が遅れた反省から、「DMAT」が作られました。Disaster Medical Assistance Team=災害派遣医療チームのことです。これは、医師、看護師、業務調整員で構成され、大地震や航空機・列車事故などの大規模災害が発生した時に、48時間以内に駆けつけて活動できる専門的な訓練を受けた医療チームです。都道府県などの派遣要請を受けて、DMAT指定医療機関から派遣され、活動を行います。被災した地域内の医療機関は混乱しますから病院支援を行ったり、日本を8つに分けてその域内に搬送したり、現場での救助活動を行ったりします。(http://www.dmat.jp/dmat.pdf別ウインドウで開きます

 こうした専門的な医療チームができたことは心強いですが、その他にも自助努力がもちろん大事ですね。阪神・淡路大震災の際には、多くの方が倒れて来た家具の下敷きになって、大怪我をしたり、亡くなったりしました。なるべく背の低い家具にしたり、転倒防止の対策をしたりしましょう。また、出入り口近くは家具の置き方も工夫しましょう。懐中電灯や靴、ホイッスル、ラジオなどの防災グッズをひとまとめにしておき、手に取りやすいところに置いておくことも大事です。スマートフォンには緊急災害速報が入るようなアプリ、災害用伝言アプリなどをあらかじめ入れてみてはどうでしょうか。

 災害時に備えて、自宅に飲料水や保存食を備蓄している方も多いと思います。食物アレルギーのあるお子さんをお持ちの方は、そのお子さん専用の食料も用意しておきましょう。加えて、避難時の注意として、炊き出しなどがある時は、原因物質が入っていないか調理をしている人に確認し、アナフィラキシーショックの予防のために、処方されている人はショック症状を抑える「エピペン」を必ず持ち出しましょう。アレルギー食やアレルギー用ミルクを備蓄している区市町村もあります。食物アレルギー以外にも気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎も主要なアレルギー疾患ですが、日本小児アレルギー学会がこの3つに対して『災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット』を、患者さん用に作っています。この機会にぜひご一読ください。(http://www.jspaci.jp/modules/gcontents/index.php?content_id=4別ウインドウで開きます

 災害時の子どものアレルギーに関する相談窓口もあります。(http://www.jspaci.jp/modules/gcontents/index.php?content_id=5別ウインドウで開きます

自閉症のお子さんに対しても、日本自閉症協会が『自閉症の人たちのための防災・支援ハンドブック』を作っています。(http://www.autism.or.jp/bousai/kaitei/honninyou2012.pdf別ウインドウで開きます

 災害とはどういうものか、遭った際にはこうしよう、日常生活はこう変わるといったことを本人目線で書いてあります。また、周囲の人たちはどのように心のケアをしたらいいかということも載っています。とても具体的でイラストが多く、子ども用のページはルビもふってあって学童なら読めるようになっています。実際に被災した方や周囲の人たちの体験談もあります。都道府県別に発達障害者支援センターの一覧もあり、『助けてカード』という支援を求めやすくなるカードの記載例が巻末にあります。

 障害を抱えた人々、子どもたちが災害時に直面する困難に対してどう対応したらいいかについては、「障害を抱え特別な支援が必要な子どもと、その家族のための緊急時対応準備マニュアル」があります。(http://www.ncgmkohnodai.go.jp/subject/100/201409manual.pdf別ウインドウで開きます

 このマニュアルは、マサチューセッツ医科大学のマニュアルを独立法人国立特別支援教育総合センターが翻訳し日本の現状に合わせて改訂したものです。さまざまな障害について説明し、緊急時にはどういうニーズを持った人かを相手に分かってもらう方法、災害時や緊急事態に備えてあらかじめ準備をしておくことの重要性などが網羅的に書かれています。こういった、自閉症や障害のある人・子どものためのハンドブックやマニュアルは、自閉症や障害がない子どもや大人にも災害時にはどういうことが起こり、日常はどうなります、ということをイメージしやすく書いてあります。具体的な対策はすべての人にとって役立ちます。

 

写真・図版

 さらに、特別なケアが必要なのは1歳未満の乳児です。日本未熟児新生児学会が東日本大震災の時に作ったお知らせがあります。

http://plaza.umin.ac.jp/~jspn/shinsai/qafamily.html#qa9別ウインドウで開きます

 母乳・粉ミルクが足りているかどうかの判断はどうするか、足りない時にはどうしたらいいか、紙オムツがなくなったら、赤ちゃんの体調が悪くなったらどうしたらいいかなどが、Q&A形式でまとめてあります。参考にしてください。

 持病があって薬をずっと飲んでいる子は、薬をまとめて持ち出しましょう。長期間、内服・吸入・塗布などしている場合は名前を覚えていると思いますが、お薬手帳があると量など詳しい情報がありますね。医療機関で聞かれた時に、何色のチューブだったとか、どういう粉だったというように言う方がいますが、災害時に役に立ちませんので注意しましょう。

 

 最後に、避難所などプライバシーのほとんどないところで密集して暮らすうちに、水ぼうそうやおたふく風邪などの感染症がはやってしまうことも心配です。もしもの時のためにもワクチンは打つのを忘れないでくださいね。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。