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 前回は、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性の強い方が子育てで直面しがちな課題についてお伝えしました。しつけの際にターゲットにする行動を決めたら、他の気になることや目に余ることがあっても、ある程度見逃して、1つずつ教えていくという方法を紹介しました。今回は、親がして欲しくないと思うような「困った行動」をなぜ子どもが取るのかについて、考えていきます。

 

 例えば、食事中にわざと席を立ち、歩き回るような「立ち回り」をするお子さんはいらっしゃいませんか。

 母親が「ちゃんと座って食べなさい」と言っても、話を聞くどころか、むしろケラケラ笑いながら、喜ぶように「ほら!」とあちこち歩き回る。母親が立ち上がり、椅子に座らせようと追いかけると、さらに鬼ごっこを楽しむように逃げ回る。

 これは親にとっては「困った行動」ですね。しかも、その「困った行動」が習慣化していると思われます。この子にまず、「食事中に椅子に座る」ことからしつけようとした場合、どうしたらいいでしょうか。

 この子どもは、「椅子に座ることができない(不可能)」わけではないので、わざと「座らない(意志)」への対処が必要なのです。

 まず、食事中に「立ち回り」をすることで、結果として、この子どもにとってどのようなことが起こっているかを冷静に眺めてみましょう。つまり、食事中にこの子どもが立ち回った直後に何が起こっているか、事実を追ってみてみましょう。

写真・図版

 

■■ある日の夕方■■

18:00

  母:台所で忙しく夕食の支度をする

子ども:母親に話しかけたが、「忙しいからあとで」と言われ、テレビを見ている。

18:15 夕食の準備が終わる

  母:リビングのテレビを消して「ごはんよ」とよびかける。

子ども:テーブルにつく。

   親子で楽しく話しながら夕食を食べている。

18:20

  母:宅配便の不在通知に気づき、子どもとの会話を中断。立ち上がり、再配達の電話をかけ始める

子ども:椅子から立ち上がり、テレビをつけてソファーの上でジャンプ

  母:電話が終わり、子どもに厳しく注意。それでも聞かないので、ソファーに近づくが、子どもに逃げられ、さらに追いかける

子ども:さらに逃げ回る

 

 子どもが席を離れた直後に何が起こっているでしょうか。母親に厳しく叱られてはいますが、鬼ごっこが始まっています。子どもは、食事の前は忙しくて母親にかまってもらえなかったので、ここぞとばかりに気を引こうと必死なわけです。

 ここで注意していただきたいのは、母親は台所で夕食の支度をやめて子どもの相手をしましょうとか、宅配便の不在通知はあとでやりましょう、ということではありません。

 家事で忙しいときは、忙しいのです。私も夕食の支度をやめて子どもの相手をしようとは思いません。

 大事なことは、子どもにして欲しくない「困った行動」の直後に何が起こっているかです。つまり、「困った行動=椅子から立ち上がり、テレビをつけてソファーの上でジャンプする」の直後ですね。

 

  母:電話が終わり、子どもに厳しく注意。それでも聞かないので、ソファーに近づくが、子どもに逃げられ、さらに追いかける

子ども:さらに逃げ回る

 

 分かりましたか。母親が「厳しく注意」+「ソファーに近づいて追いかける」という対応が、この子にとっては、鬼ごっこという「ご褒美」になっているのです。もしくは、叱られるという形でも、「母親の注目を集めるための手段」になっているともいえます。子どもがそこまで意識している可能性は低いとは思います。

 毎日の暮らしの中で、たまたまとった行動の結果を何度か経験することで、「あ、お母さん、こうやって食事中に席を立ったら、かまってくれるんだ」と体得しているのです。わざわざ言葉で認識していなくても学習するのです。

 この子どもの「困った行動」が、どうして続いているのかは、分かりましたね。食事中に「立ち回り」をした結果、叱られる形にせよ、母親の注目を集めることができるし、鬼ごっこまでしてもらえます。もともと食が細く食事の時間があまり好きでない子どもなら「食事をしなくてすむ!」という大きな副産物まで得られるわけです。席に座っておとなしく食事をしようとしなくなるのです。

 さて、このような「困った行動」にどう対応していったらいいでしょうかは、次回に続きます。

 

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アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などを経て、現在は福岡県職員相談室に勤務。福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪加害者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。趣味はカフェ巡りと創作活動。