[PR]

 先日、職場で開催された勉強会(認知症横断プロジェクト談話会)で、健康食品の話をする機会がありました。その際、「特定保健用食品は厚生労働省・消費者庁もお墨付きを与えているが、本当に効果があるのか?」という質問を受けました。

 この連載の読者の中にも、同じような疑問を持っている人がいるかもしれません。

 いきなりですが、結論から言えば、効果はあります。ただし、「効果がある」という言葉の意味について正確に理解をしておく必要があります。今回は、特定保健用食品の「効果がある」の意味について考えてみます。

 

 まず、製造・販売しようとする特定保健用食品に「効果がある」ということを立証するためには、ランダム化比較試験によって検証することが求められます。これは、医薬品の効果を立証する方法と同じです。

写真・図版

 

 そして、特定保健用食品の場合は、試験食品(製造・販売しようとする特定保健用食品)と比較する際の対照群としてプラセボ(見た目は同じでも関与成分=有効成分が含まれていない食品)を摂取してもらう必要があります。

 例えば、脂質代謝に関わる総コレステロール値などへの影響を調べるランダム化比較試験では、通常、下の図に示すような結果が得られてきます。

写真・図版

 

 「*」のマークがついている箇所が試験食品とプラセボとの間に統計的に差が確認された、つまり特定保健用食品の効果が立証されたということになります。

 ここで、この臨床試験の内容について「PICO(ピコ)」で整理してみます。

「PICO」とは、臨床上の疑問を定式化する時に用いられるものです。また、臨床試験の内容を整理し理解するためにも使われます。詳細は、過去の記事「『ピコ』って知っていますか?」もご参照ください(http://www.asahi.com/articles/SDI201510246924.html

写真・図版

 

写真・図版

 

 そして、さきほどの例に挙げた特定保健用食品の臨床試験の内容を、実際にPICOにあてはめてみます。

 注意してほしい点を「太字+下線」にしています。これは、利用方法が臨床研究と異なった場合、期待される効果が得られるかどうかは全くわからないということを意味しています。

 皆さんどうでしょうか?

 もしかすると、特定保健用食品に薬と同じぐらいの効果があるのではないかと、過剰な期待をしていた、という人がいるかもしれません。残念ながら、特定保健用食品に劇的な効果は期待できません。

 ただ、誤解しないでほしいのですが、特定保健用食品を否定しているわけではありません。冒頭で述べた通り、「特定保健用食品は効果がある」と考えています。しかし、その効果の意味するところは、「限られた条件の人が、臨床試験と同じ方法で利用したときに、比較的おだやかな効果を得られる可能性がある」という事になります。

 そして、特定保健用食品が目指すところは、その製品のみで血液検査の結果を改善するということではなく、普段の日常生活に気を配り行動変容を起こすきっかけとしての役割を担っているということがあります。特定保健用食品には「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という文言が必ず記載されています。これらのことを念頭に、特定保健用食品と上手に向き合ってみてください。

 なお、蛇足になってしまうかもしれませんが、当日の講演で「PICO(ピコ)」の説明をしている際、フロアから「ピコ太郎と何か関係あるのか?」という大阪ならでは(?)のツッコミ(あるいはボケ?)を受けたのですが、私には上手く返すことができず悔やまれてなりません(※もちろん、「PICO」と「ピコ太郎」に関係はありません)。

 

<アピタル:これって効きますか?・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku/(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 大阪大学大学院准教授

大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座 准教授/早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 客員准教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大医学部)卒。主な研究テーマは腫瘍免疫学、がん免疫療法。補完代替医療や健康食品にも詳しく、厚労省『「統合医療」情報発信サイト』の作成に取り組む。