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 「なめんな」ジャンパーで注目された生活保護制度。不正受給への視線は厳しいが、必要でも受けられない人も多い。職員も貧困世帯も追い詰める、底流にある課題と解決の道は。

権利なのに「恩恵」の意識 稲葉剛さん(つくろい東京ファンド代表理事)

 全国の福祉事務所の職員たちは社会保障費抑制の重圧にさらされるなか、福祉の仕事の意義を見失いがちです。

 不正受給をなくすことは大切ですが、生活保護全体の予算からすると約0・5%の問題です。深刻さでいえば、必要な人に届いているかどうかを表す捕捉率が2割程度にとどまることの方が大きな問題だと思います。

 厚労省は各地の福祉事務所に警察官OBを配置することを進めてきました。その結果、困っている人に手を差し伸べるべき窓口で、来訪者に疑いの目を向けがちな人が対応するということも起きています。

 生活保護制度の利用は本来、憲法が保障する生存権にもとづくものです。けれども日本社会では社会保障は権利ではなく、恩恵と捉えられがちです。そうした意識があるところに、働いても生活が苦しい人たちが増えたため、生活保護に対するバッシングが起きやすくなっています。

 そもそも受給者は就労を免除されているわけではありません。働ける人は働き、基準額に満たない分を保護費として受け取っています。資産の保有は制限され、福祉事務所の指導や指示に従う義務があります。

 問題は、貧困対策の一部であるはずの生活保護が、活用できる唯一の施策となっていることです。生活困窮者自立支援法で窓口ができましたが、つなぐ先が生活保護しかないというのが現状です。

 有効な政策として注目しているのが、空き家を活用した住居支援です。折しも「住宅確保要配慮者に対する供給促進法」(住宅セーフティーネット法)の改正案が閣議決定されましたが、家賃を低くおさえる措置が条文に入っていません。年度ごとに予算をつける形では、安全網は十分に機能しません。修正を求めていきたいです。

 豊かな国のはずの日本で、路上で死ぬ人たちがいる。その現実に驚き、1990年代半ばからホームレスの人たちの支援にかかわっています。貧困問題の可視化に取り組みながら、3千件近い生活保護の申請にも付き添いました。

 生活保護の制度は、着実に人の命を支えてきました。米国などと比較すると、どのような貧困にも対応できる公的な扶助制度をもつ社会の強みを実感しています。

 改善点は、生活を立て直すために一時的に利用しやすくすることです。子どものアルバイト代を収入と認定して生活保護費を減らすことを控えたり、地域性や個別の事情に応じて車の所有を認めたりすることも検討すべきです。

 雇用条件が厳しくなり、人権が保障される水準が低くなっている状況を改善しながら、「命の最後の砦(とりで)」をしっかり守っていく必要があります。(聞き手・北郷美由紀)

 

 ■貧困の問題、一体で考えて …

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