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 スギ花粉の飛散ピークがそろそろ終わります。一番メジャーなのがスギ花粉による花粉症ですが、つづいてヒノキが花粉を飛ばしています。まだ花粉症の薬が必要な人はヒノキの花粉症かもしれません。他にも花粉症の原因となる植物は、カモガヤ、ブタクサ、シラカバ、イネなど日本では50種類くらい知られています。花粉症を治すには「なるべく薬を使わず免疫力を高めよう」といったことを言う人もいますが、本当にそうでしょうか。

 そもそも花粉症って、どういうものでしょうか。季節性のアレルギー性鼻炎なので、免疫が関与しています。私たちの体は、「自己」と「非自己」を見分けて「非自己」を排除する機能があります。それが免疫です。そして、空気の通り道である気道には空気しか入ってほしくないですから、鼻腔に生えている鼻毛が大きな異物を除去し、粘膜にある粘液や線毛が細かい異物も外に出そうとします。くしゃみや咳(せき)も異物を追い出す仕組みの一つですね。扁桃(へんとう)にはリンパ球や顆粒白血球が、免疫的な見張りをして、病原性のあるウイルスや細菌が入り込んで来た時には炎症を起こして、排除します。

 花粉には病原性はなく、本来は免疫機能が活躍する必要はないのに、過剰反応をすることで症状が出ます。鼻の粘膜に花粉が付着すると、粘膜の中の細胞が花粉を異物と認識します。この情報が免疫機能の司令塔である細胞をへて「IgE」が作られます。これが、マスト細胞(肥満細胞)の表面にくっつき、再び、花粉が入ってくると、マスト細胞から炎症物質であるヒスタミンやロイコトリエンという化学伝達物質が放出されます。特にヒスタミンは強い作用で知覚神経や血管を刺激し、かゆみ、鼻水、鼻づまりなどのお馴染みの花粉症の症状を起こします。眼の表面、眼球結膜でも同じことが起こります。

 

 私もひどい花粉症なのですが、のどがかゆくなったり、痰(たん)が多くなったりし、患者さんによっては肌もかゆみが出ます。本来、体が過剰反応する必要のない花粉に対して、どうしてこういうことが起こってくるのかはわかっていません。しかし、日本の国土にスギが多く植えられ、花粉量が多いこと、空気汚染などが環境要因としてあげられています。

 たまに1~2歳のお子さんを連れてきたお母さんから「私が花粉症だから、うちの子のこの症状も花粉症ですか?」と聞かれることがあります。確かに花粉症の発症は低年齢化していますが、初めての春、あるいは人生で2回目くらいの春を経験するような年齢の子に鼻水が出ていたら、それはまず風邪を考えましょう。花粉症は繰り返し多量の花粉と接触する人に多いのです。だから、スギ花粉の飛散が少ない北海道やスギが生えていない沖縄ではスギによる花粉症患者さんは少ないのです。

 

 花粉症の検査は、鼻水を顕微鏡で見て好中球を数えるとか、プリックテストで花粉に対する反応があるか調べるとか、スギやヒノキの特異的IgEを血液で検査することもあります。実際には、家族歴や例年この季節になると同様の症状が出るかなどを問診で確認し、薬を処方することも多いです。

 治療は対症療法と根治療法があります。対症療法として、一番よく早く効いて種類が多いのが抗ヒスタミン薬で、点眼・点鼻の局所療法と内服薬があります。他にも抗ロイコトリエン薬、サイトカインや化学伝達物質を阻害する薬などが内服薬としてあり、抗ヒスタミン薬と併用することもあります。局所療法にはステロイド薬もよく効きます。耳鼻科で行うものですが、レーザーで鼻粘膜を焼く方法もあります。

 根治療法としては、減感作療法という花粉の抽出物を皮下に注射する方法や、舌下免疫療法といって舌の下に錠剤を数分間含む方法があります。これは少なくとも2年以上、毎日続ける必要がありますが効果が出れば季節ごとに薬を飲まなくてもよくなります。

 子どもに一般的なのは、抗ヒスタミン薬の内服と点眼・点鼻です。内服薬はシロップ、粉薬、錠剤がありますから医療機関で相談してみましょう。水なしで飲めるものもあります。「なんでもすぐに薬を使うなんてダメ」、「まずは自然食品で免疫力を高めて」、「体を温めたら治る」などと言われることもありますが正しくありません。鼻水や鼻づまりがひどく眼もかゆいときは、楽しく遊べないし勉強にも集中できませんね。花粉症は飛散期間だけ薬を使うので、長くても数ヶ月です。つらいときには薬をうまく使いましょう。免疫の説明がわかれば、アレルギーは免疫反応だから、免疫力を高めても治るものではないとわかるはずです。体を温めたら冷え性はよくなるでしょうが、花粉症や他の多くの病気は治りません。冷えは万病の元、というのは言い過ぎです。

写真・図版

 

 花粉症の予防は、ニュースや環境省のスギ花粉情報(http://kafun.taiki.go.jp/別ウインドウで開きます)をチェックして飛散の多い日はマスクやメガネをして外出するとか、部屋の窓を開けないようにしましょう。外出から戻ったら服を払い、手洗いやうがい、洗顔をすると、持ち込む花粉の量が減らせます。

 いろいろな花粉が花粉症を引き起こすので、カレンダーがあります。日本アレルギー協会や日本気象協会のホームページを見てみましょう。日本は南北に長い列島なので、地域別になっています。

厚生労働省のサイト内にある「的確な花粉症治療ために」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf別ウインドウで開きます)が参考になります。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在は一般病院の小児科に勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。