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 初夏になり日差しが強くなると、小児科外来にも「子どもでもUVケアをしないといけませんか?」などとスキンケアに関する問い合わせが増えてきます。なかには、「子どもの足の裏に黒子(ほくろ)があるんですけど、取ったほうがいいですか?」と気にする人も少なからずいます。子どもの病気の本を見ると、皮膚がんについては何も書かれてないことがほとんどだと思います。実は、それだけ子どもの皮膚がんは頻度が少なく、滅多にないからです。ただ、関心が高い話題でもあるので、今回まとめてみようと思います。

 そもそもほくろって何なんでしょうか?ほくろは、医学的には「色素性母斑(ぼはん)」とか「母斑細胞母斑」と呼ばれます。母斑というのは、皮膚の色や形が普通の皮膚と違うアザのような ものです。メラニン色素を持った母斑細胞(ほくろ細胞)の集まりがほくろで、色素の多さによって褐色だったり黒かったりします。色素が深いところにあると母斑は青く見え、表面にあると茶色や黒に見えます。ほくろは生まれたときからあるものも、成長途中でできるものもあります。普通は5mm以下の大きさで、丸や楕円形で、境界がくっきりしています。子どもの肌にみられる「ほくろのようなもの」には、次のような種類があります。

 ほくろよりずっと大きく、生まれた時からお尻や背中の下部にある青っぽいあざのようなものが「蒙古斑」です。母斑の一種で、日本人の98%以上にあります。表面は盛り上がっておらず、濃いところと淡いところがあります。ふつう蒙古斑は、学校に上がる頃までに消えます。お尻と背中以外の手足や肩などにあるものは「異所性蒙古斑」と呼ばれます。ほとんどは成長するに従って薄くなりよくわからなくなりますが、約4% の人には残ってしまうといいます。

 蒙古斑と似ている「青色母斑」というアザもあります。これは通常は幼少期以降にでき、大きさは10mm以下です。蒙古斑と違って小さな突起やしこりがあり、形もいろいろですが、見た目の問題だけなので、気にならなければほくろと同じように特に治療は必要ありません。

 「表皮母斑」や「扁平母斑」という出生時から生後早いうちにできる淡い茶色から濃い褐色の母斑もあります。地図のような形で、盛り上がりはありません。手のひら・足の裏だけでなく、お腹や背中、顔、お尻などにもできます。がんになることはとても稀(まれ)ですが、美容的な意味で切除することがあります。茶色いこういった母斑が6個以上あれば、他の病気を合併していることがあるので小児科か皮膚科に相談してみましょう。

 顔にできる母斑(アザ)もあります。「太田母斑」と呼ばれるもので、生まれてすぐのときにはなく、生後半年以内にできることが多いです。額から鼻にかけて多くは片側だけにある青いアザのようなものです。思春期に色が濃くなることもあり、美容的に気になる場合は、皮膚科や形成外科でレーザー治療を受けることが多いです。

写真・図版

 

 これらのほくろのような 色素性母斑(母斑細胞母斑)は、生まれつきの先天性のものと生後数カ月以降にできる後天性の2種類があります。後天性のものは、褐色から黒褐色で、しばしば有毛性といって毛が生えています。表皮内、真皮内で将来、がん化する可能性があります。

 先天性で20cm以上のものは、色素細胞ががん化した悪性黒色腫(メラノーマ)になる頻度が高いことが知られています。がん化が疑われるのは、

(1)形が左右非対称

(2)母斑と普通の皮膚の境界がギザギザしていたり不鮮明な部分があったりする

(3)黒・青・赤・白など色調不均一でムラがある

(4)6mm以上に大きくなっている

ときです。いずれかの特徴があるときは皮膚科に行きましょう。ダーモスコピーという器具を使った検査で、悪性かどうかを調べることができます。

 ダーモスコピーというのは、ライトがついた拡大鏡のようなもので、皮膚を詳しく見ることができます。生検のように組織を取るものではないので、お子さんは痛くありません。これで詳しく診て、必要があれば皮膚の生検をします。

 色素細胞ががん化した悪性黒色腫(メラノーマ)は、4つのタイプがありますが、日本人に多いのは末端黒子型という手のひらや足の裏、手足の爪にできるものです。ほかには、胸やお腹、背中といった体の中心やそれに近い部分にできるもの、盛り上がっていて細胞の塊がどんどん大きくなっていくものなどがあります。

 赤ちゃんの手のひらや足の裏にほくろがあると「がんになるんじゃないでしょうか?」と小児科でよく聞かれます。繰り返しになりますが、母斑性母斑で大きさが20cm以上の大きいものだったり、(1)から(4)の特徴があったりすれば皮膚科に行きましょう。そうでないなら怖がる必要はありません。私も手のひらにほくろがありますよ。一般的に悪性黒色腫、つまり、ほくろのがんは60歳以上の人に多い病気です。

 紫外線が強く白色人種が多く住むオーストラリアは、皮膚がんの研究が進んでいますが、日焼け止めクリームはがんの前段階である日光角化症や有棘細胞がんの発生を30%減らすことができるそうです(日本皮膚科学会HP皮膚科Q&A https://www.dermatol.or.jp/qa/qa29/q11.html別ウインドウで開きます )。こどもの紫外線対策については、こちらの記事にまとめましたのでご覧ください(紫外線との付き合い方 避けすぎも浴びすぎもだめ http://www.asahi.com/articles/SDI201605116154.html )。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在は一般病院の小児科に勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。