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 インターネット上の健康・医療情報の信頼性が揺らいでいます。昨年末、DeNA(ディー・エヌ・エー)が運営していた医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の記事に盗用や誤りが見つかり、サイトは閉鎖に追い込まれました。また、蜂蜜入り離乳食を与えられた乳児がボツリヌス症で死亡した事例では、インターネット上の料理情報サイトにも蜂蜜入りの離乳食レシピが投稿されていたことがわかり、批判の声が出ました。病気に限らず、様々な情報を調べるときに、まずインターネットを利用するという人は多いと思います。では、正確な健康・医療情報を入手するにはどうしたらいいのでしょうか。

 

▼病気について調べるとき、最も利用されるのはインターネットの検索サイト

▼インターネットや本・雑誌の健康・医療情報には不正確なものが多い

▼自身の健康や病気に関わるため情報の正確さを見極めることが重要

 

■便利なインターネット 便利すぎるがゆえの問題も

 私たちの生活でインターネットはいまや欠かせない存在となっています。医療・健康の分野でもそれを示すようなデータがあります。2015年に総務省が実施した調査によると、健康や医療について調べたいことがある場合、GoogleやYahoo!などの「インターネットの検索サイト」を利用する、と回答した人が約75%に上ることが明らかになっています。

 

 確かに、次のような事態に遭遇したとき、みなさんは何で対処法を調べますか。

 

・料理をしていて、うっかり火傷してしまった

・ぎっくり腰になってしまった

・最近、肌荒れがひどい

・ホクロが大きくなってきたような気がする

 日常生活における急なトラブルやなんとなく気になる体調の変化について、パソコンや携帯電話・スマートフォンなどを使って対処法や治療法を調べたことがある人は多いのではないでしょうか。

 一方で、最近、インターネット上の健康・医療情報をそのまま信頼することができないような事態が起きています。

 2016年末にDeNA(ディー・エヌ・エー)が運営していた医療系サイト「WELQ(ウェルク)」に不適切な記事が次々と見つかり閉鎖に追い込まれたことは大きな話題となりました。その後、サイトに様々な問題点があったことが第三者委員会の調査で明らかになりました。

 記事119本のうち10本に法令違反の可能性が指摘されました。例えば、サプリメント成分に「不妊を改善する効果がある」とした記事や、咳止め薬について「副作用が多いような成分ではない」とした記事は、薬の効能表示に関する医薬品医療機器等法違反の可能性があります。水素水に「筋肉疲労を防ぐ効果がある」とした記事は健康増進法違反にあたる可能性があります。また、肩こりの原因を「霊が原因のことも?」と書いた記事は、検索エンジンで上位に表示されることを意識して作られたものでした。どれほどの人が霊が原因だと信じたかは分かりませんが、倫理上の問題があると指摘されました。そのほかに無断転載などの著作権侵害などの可能性のある記事も多数ありました。

 こうなると、何を信じたらいいか分からなくなりますね。

 

■健康・医療情報は正確さが重要

 では、インターネットではなく、本や雑誌だったら大丈夫なのでしょうか?

 医師が読むような医学書や学術雑誌であれば、医学的な正確性については問題ないと思います。ただ、医学知識のない一般の人が手にとることはまずないと思いますし、内容は専門的過ぎて一般の人が理解するのは簡単ではないでしょう。おそらく、健康を気にする人の多くが手にとるのは、一般書や健康雑誌ではないでしょうか。

 では、書店で平積みされている本や中高年に広く読まれている雑誌のタイトル、見出しにはどのような表現があるでしょうか。

 「薬に頼らず◯◯を治す」「末期癌からの奇跡の生還」「膝の痛みが××で消えた」

センセーショナルな文言が目につきませんか。

 「飲んではいけない薬」「抗がん癌剤は効かない」

現代医療では標準的な治療に位置づけられているものを否定するような内容も散見されます。

 つまり、インターネットも本や雑誌も、状況は同じといえます。

 もちろん、インターネットや一般書・健康雑誌に書かれている内容が、全てデタラメというわけではありません。問題なのはあきらかに不正確な情報や誇張された表現などがある点です。

 健康や医療に関わる情報に不正確な内容があると、次のようなことが起きてしまう可能性があります。

・実践した施術や療法による副作用で健康被害にあうこと

・病院を受診せず、適切な治療を受ける機会を失ってしまうこと

・不当に高額な商品を購入し経済的損害を受けてしまうこと

 蜂蜜による乳児ボツリヌス症のように、場合によっては命にも関わることもありますから、健康・医療情報は正確である必要があるわけです。

 現実に目を向けるとどうでしょう。今回のような事態を受けて、インターネット上の不正確な情報はなくなったでしょうか。書店で見かける本や雑誌の表現は変わったでしょうか。今回から始まる連載では、「正確な情報とは何か」「正確な情報の見極め方」「正確な情報の入手方法」などについて解説していきたいと思います。そして、正確な情報を入手した後の次のステップとして重要になってくる「決断・行動の意思決定プロセス」についても、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

<アピタル:これって効きますか?・健康・医療情報の見極め方>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku/(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 大阪大学大学院准教授

大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座 准教授/早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 客員准教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大医学部)卒。主な研究テーマは腫瘍免疫学、がん免疫療法。補完代替医療や健康食品にも詳しく、厚労省『「統合医療」情報発信サイト』の作成に取り組む。