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 皆さんは「難治性がん」という言葉をご存知でしょうか? 難治性のがんって転移したがんのこと? 早期発見が難しいがん? 薬が効きにくいがん?

 実は乳がんや胃がんなど患者さんの数が多いがんでも、「難治ながん」はありますが、「難治性がん」に対する明確な定義はありません。

 

 

▼難治性のがんをご存知ですか?

▼高い離職率、早い離職時期

▼治す研究だけではなく、患者・家族の社会的支援も大切

 

●難治性のがんとは?

 社会的な側面からみたとき、治すことが難しいがんや、患者さんの数が少ないがんは、患者さんの声がアンケート調査などでは数として見えにくいことから、その実状が明確になっていません。

 そこで今回の連載では、難治性がんの代表として「すい臓がん」に焦点を当て、その就労実態調査(※1)を行いました。また、その結果は、私たちが2016年に行った300人の「がん患者調査(※2)」と比較をし、「すい臓がん患者の就労の現状」を、2回に分けて連載したいと思います。

 なお、本調査には、すい臓がん患者会である特定非営利活動法人パンキャンジャパンの協力を得て実施をしました。パンキャンの皆さま、ありがとうございました。

 

●勤務状況の変化

 すい臓がんの診断後に離職をした人(依願退職と解雇)は、がん患者調査では12%、すい臓がん患者では23%となっており、離職率が高いことがわかりました。内訳をみると、解雇や依願退職、そして、希望しない異動もすい臓がん患者さんでは多くなっています。

 また、「罹患前と仕事が変わらない」と回答した人の割合は、がん患者調査では73%ですが、すい臓がん患者では54%と低く、診断と同時に半分の人が就労継続に影響が及んでいることがわかります。

 すい臓がんでは、病状も、そして病状が進行するスピードも早いため、医療者から、診断と同時に「治療に専念するように」と言われる方もいます。

 また、病名が患者さんに与える精神的なショックも大きく、社会や心の支援が欠かせません。

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●働き方を変更した時期

 診断後に働き方を変更した人のタイミングは、がん患者調査では「診断から1カ月以内」が26%、すい臓がん患者では30%になりました。また、「診断から半年以内」でみると、がん患者調査が50%、すい臓がん患者では70%となっています。

 回答者の数がとても少ないので単純に比較することは適さないかもしれませんが、病状の進行が早いがんでは、診断から半年以内に7割もの人が働き方を変更せざるを得ない状況になっています。

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●職場での報告状況

 職場にがん罹患を報告した人の割合(本人)は、がん患者調査では87%、すい臓がん患者では92%となっており、大きな差はみられません。

 ところが、職場にがん罹患を報告した人(家族)の割合は、がん患者調査71%に対し、すい臓がん患者では87%と高くなっています。

 家族ががん治療の付き添いなどのために休める制度は少ないため、ほとんどの方は有給休暇と欠勤で対応しています。すい臓がん患者の家族は、寄り添う時間を確保するために社内制度を越えた休み方への配慮が必要となり、職場への報告割合が増えるものと推測されます。また、家族の1割程度が離職をされており、その影響が及ぶ範囲は大きくなります。

 職場に報告をした人のうち、「最初に相談した人は誰?」については、部位による差はほとんどなく、がん患者さん、すい臓がん患者ともに直属の上司が第1位で約7割を占めました。

 職場の健康管理の役割を担う産業医に相談した人の割合は、患者、家族ともに総じて低く、課題です。

 難治性がんでは、治療方法や早期発見方法を開発する研究推進も欠かせませんが、同時に、こうした社会的な調査や支援も大切です。そして、それぞれのがんの特性に応じた対策や支援を考えていくことも欠かせません。

 次回は経済的な状況について報告します。

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※1 パンキャンジャパンの会員を対象に2017年2月22日~3月3日にかけてWEB調査を実施。回答者数は56人。患者が26人(男性19名/女性7名、病期はステージⅣ:14名、ステージⅢ:5名、ステージⅡ:3名、ステージⅠ:2名、ステージ0:2名)、家族・遺族が26人(男性11名/女性15名)。

※2 10年以内で、がん罹患時に就労していた患者300人(20歳~64歳まで)を対象に、2015年12月8日~2015年12月9日にかけて行った調査。大腸がん、乳がん、胃がんが半数を占め、すい臓がんは入っていない。発見時の病期はⅠ期までのいわゆる早期発見が40%、Ⅱ期以降のいわゆる進行がんが42%。

特定非営利活動法人パンキャンジャパン:http://www.pancan.jp/別ウインドウで開きます

 

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(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。