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 今日では、健康づくりのためにからだに占める脂肪組織の割合を示す体脂肪率をはかることは当たり前になりました。しかし、体脂肪計や体組成計のような機器が登場する前は、どのようにはかっていたかご存じですか?

 実は、かつては水中ではかっていたのです。この方法は「水中体重秤量(しょうりょう)法」と呼ばれ、水中に体重計を置いてはかります。脂肪は水より比重が小さいので水に浮き、比重が大きい脂肪以外の組織(主に筋肉や骨)は水に沈むという原理を利用しています。脂肪が多い人の場合、水中では浮きやすいため、水中での体重が軽くなります。一方、筋肉質の人の場合、水中では沈みやすくなり、水中での体重は重くなるのです。この方法で正確にはかるためには、肺の中の空気をできるだけ吐いてから、水に潜らなければならないので、私も研究のために行った際はとても苦しかった思い出があります。

 

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 さて、筋肉や骨の方が脂肪に比べて比重が大きいということは、同じ重さであれば、脂肪より筋肉の方が体積は小さいということ。だからこそ筋肉質のからだの方が引き締まって見えるのですが、このことを少し具体的に説明していきましょう。

 一般的に脂肪組織の密度は0.9007g/cm3で、脂肪以外の組織の密度は1.1000g/cm3とされています。

 ですので、例えば体重が60kg(=60000g)で、体脂肪率が50%の人の体積は、

 <脂肪分>

  重さが60000×0.5=30000gで

  体積は30000÷0.9007=約33307cm3

 <筋肉や骨の部分>

  重さが60000×0.5=30000gで

  体積は30000÷1.1000=約27273cm3

 以上を合計して、60580cm3になります。

 そして、同じ体重で体脂肪率10%の場合は、

 <脂肪分>

  重さが60000×0.1=6000gで

  体積が6000÷0.9007=約6661cm3

 <筋肉や骨の部分>

  重さが60000×0.9=54000gで

  体積は54000÷1.1000=約49091cm3

 以上を合計して、約55752cm3になります。

 体脂肪率50%と10%の人の体積の差は4828cm3(=約4.8L)。つまり、同じ体重でも、体脂肪率が10%の人は2Lサイズのお茶のペットボトル2本以上分スリムに見えるということになるのです。

 

 からだをカッコよく見せるためには、ダイエットの際、筋肉を減らさないようにしたいものです。筋肉量の増減は体重だけでは判断できません。ダイエットで体脂肪率や筋肉量などを意識せず、体重ばかり気にしていると、脂肪ではなく筋肉が落ちてしまうことにもなりかねません。そうすると、「体重は減ったけど、体はプヨプヨしたままで、なんだかカッコよくない」体形になってしまいます。

 体重が減れば、筋肉も減ってしまいやすいので、食事制限だけではなく、筋肉を維持するために運動をするのが、上手なダイエットのコツ。筋トレをするなら、脚やお腹など、できるだけ大きな筋肉を鍛えると効果的です。つまり、スクワットや腹筋運動を行うのがおすすめ。また、無理に運動をしなくても、いつも利用する駅の一駅前で降りて歩くなど、日常生活の中で活動量を増やすだけでも効果はあるので、できる範囲で工夫をすると良いでしょう。

 

 さて、ここまで、筋肉を減らさずに脂肪を落とすことの重要性について説明してきましたが、一方で脂肪の落とし過ぎは禁物です。脂肪には、体温を保ったり、筋肉、骨、内臓を保護したり、エネルギーを貯蔵したりするなど、大切な役割があるからです。

 特に女性は体脂肪率が15%を切ると、月経異常や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などのリスクが高まることが分かっています。また適度な脂肪は見た目の美しさにも必要不可欠。皮下脂肪が減り過ぎると女性らしい滑らかなボディラインが失われてしまいます。ちなみに適度な体脂肪率は下の表の「-標準」と「+標準」を合わせた範囲です。ダイエットや健康づくりの参考にしてください。

 

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 脂肪は落としにくく、1kgの脂肪を落とすには、約7200kcalのエネルギーを消費する必要があると言われています。これは食事に換算すると3、4日分に相当します。だからと言って、食事を減らせば良いということではありません。食事を減らして、短期間で大幅に体重が減った場合、落ちたのは脂肪ではなく、水分が大半というケースが多いのです。

 運動が嫌いだから食事制限だけでやせようとする人がいますが、このやり方はからだに負担がかかるだけでなく、筋肉が減少して基礎代謝が落ちてしまうため効率的ではありません。

 

 ダイエットは、無理のない範囲で適正なカロリーのバランスの良い食事を心がけつつ、運動との両輪で、じっくりと取り組むことが大切です。また、このコラムの第1回「『はかる』から始まる健康づくり」でも紹介したように、体組成計で体脂肪率や筋肉量をチェックするのも忘れずに! 筋肉を維持できているか、ちゃんと脂肪が減っているか、あるいは減り過ぎていないかを把握することで、健康的かつ効果的なダイエットが実践できるのです。

 

<アピタル:タニタとつくる健康生活>

http://www.asahi.com/apital/column/tanita/(アピタル・笠原靖弘)

アピタル・笠原靖弘

アピタル・笠原靖弘(かさはら・やすひろ) 株式会社タニタ・企画開発部企画開発課

化学・生理学・電気電子技術などの幅広い分野の専門知識を生かし、腹部脂肪計や皮下脂肪厚計など、これまでにない概念の健康計測機器を開発。からだに負担をかけることなく計測できる機器の開発を担当し、現在は人体の組成や機能に関わる研究を行うチームのリーダーを務めている。