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 インターネットの普及によって誰もが簡単に大量の情報を入手できるようになりました。しかし、情報は多ければ多いほどよいのでしょうか?一見すると便利になったと思えるかもしれませんが、その便利さは「諸刃の剣」かもしれません。

 

 ▼情報通信技術(ICT)の進歩で誰もがインターネットへ接続可能に

 ▼インターネット検索は低コストで大量の情報を入手可能

 ▼情報が多すぎることにも問題はある

 

 健康・医療情報が有用であるかどうかを判断するための指標のひとつとして「医療情報の有用性の式」があります。この式は分数で表現されていますから、ある情報において、分子(関連性と妥当性)が大きく、分母(労力と費用)が小さければ、その情報は有用であるといえます。

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 前回は、インターネット検索で得られる情報を例に、この有用性の式における「分子(関連性と妥当性)」(※1)の項目について問題点を指摘しました。インターネット検索では「関連性」のある情報をたくさん入手できる一方で、「妥当性」が低い、つまり不正確な情報も多く含まれており、全体として情報の有用性が低くなってしまう傾向があります。

今回は、この有用性の式における「分母(労力と費用)」の項目について、具体的な事例を挙げなら詳しく説明していきたいと思います。

 

 ■ インターネットは本当に便利なのか?

 総務省の「情報通信白書」(※2)によると、2015年末のインターネット利用者数は1億46万人で、人口普及率は83%となっています。さらに最近では、スマートフォンの所有率も増え、何か分からないことがあれば、どこでもすぐにインターネットを使って検索することができるようになりました。その背景には、情報通信技術(ICT)の進歩があります。年々、通信速度は高速化し、それにともなって通信費用も安くなってきています。

 冒頭で紹介した「医療情報の有用性の式」にインターネットで検索する情報を当てはめると、分母の項目にある「労力」と「費用」が低く抑えられていることになります。

 ですが、これは額面通り受けとめていいのでしょうか?「労力」について、もう少し深読みしてみます。

 「医療情報の有用性の式」が紹介されている論文の出版年は1994年です。その当時、インターネットは、ほとんど普及していません(米国で約5%、日本で約2%程度です)。つまり、医療情報を入手しようと思えば、図書館に出向く、専門家に直接聞きに行くなど、実際に行動をおこす必要がありました。

 それに比べれば、インターネットが普及した今、情報を入手するためにすることは、パソコンのマウスをクリックしたり、スマートフォンの画面をタップしたりするだけです。「労力」は確かに減りました。

 インターネットの検索サイトで情報を調べると、非常に多くの情報が「ヒット」します。いったい、どれくらいの量の情報が検索結果として表示されるのでしょうか。

 実際に調べてみましょう。下の画像は、この原稿執筆時(2017.6.28)に、検索サイトのGoogleで、健康食品の「グルコサミン」をキーワードにして検索した結果になります。

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 注目してもらいたいのは、検索結果の件数(赤枠)です。なんと、1470万件の情報がヒットしています。もし、1470万件の情報を全て確認するとしたら、どれくらいの労力(時間)がかかるか想像してみてください。

 仮にひとつのページを1分でチェックしたとします。そうすると、1日8時間、365日休みなく毎日チェックしていったとしても、約84年かかります。とても現実的ではない数字になります。

 膨大な情報量の中から、本当に自分が知りたい情報を正確に選び出すのは簡単ではないのです。一見便利に見えるインターネットも、その検索サイトの向こう側にある「情報の海」は、かなり荒れ狂っており、航海の目的地にたどり着くのは、一筋縄ではないでしょう。

 

 ■ インターネットは諸刃の剣

 インターネットの情報を「医療情報の有用性の式」に当てはめて、「妥当性」と「労力」に関する欠点について解説してきました。もちろん、インターネットには欠点もあれば、利点もあります。今一度、整理してみます。

 

 《メリット(利点)》

 「関連性」:インターネット検索サイトでは関連する情報が大量に検索できる

 「費用」:インターネットへの接続にかかる費用は安価になってきている

 《デメリット(欠点)》

 「妥当性」:不正確な情報が多く、宣伝・広告なども紛れ込んでいる

 「労力」:多くの不正確な情報から正確な情報を選び出す手間がかかる

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 多くの人が利用しているインターネットには、いい面も悪い面もあり、使い方を間違えると大きな不利益につながることもある「諸刃の剣」なのです。利便性の影に隠れている欠点もあることを常に頭の片隅に入れておいてください。

 

 [参考資料]

(※1)Shaughnessy AF, et al. Becoming an information master: a guidebook to the medical information jungle. The Journal of Family Practice. 1994; 39:489-9.

(※2)総務省「平成28年版 情報通信白書のポイント」:第2部 基本データと政策動向、第2節 ICTサービスの利用動向http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc252110.html別ウインドウで開きます

 

<アピタル:これって効きますか?・健康・医療情報の見極め方>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku/(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 大阪大学大学院准教授

大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座 准教授/早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 客員准教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大医学部)卒。主な研究テーマは腫瘍免疫学、がん免疫療法。補完代替医療や健康食品にも詳しく、厚労省『「統合医療」情報発信サイト』の作成に取り組む。