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 松山市の「ホリスティック予防医学研究所」の理事長が医師法違反(無資格医業)などの疑いで逮捕されたというニュースがありました。

 記事によると、血液を顕微鏡で検査して、「赤血球が貧弱。胆のうか膵臓(すいぞう)が弱っている」「赤血球にとげがある。腸が弱っている」などと患者に伝え、サプリメントの購入を勧めていたそうです。逮捕された理事長は『赤血球の画像でガン・病気がわかる! ――すごい最先端簡単検査!』という本も書いています。

 赤血球の画像を顧客に見せ、病気を「診断」して不安を煽り、サプリメントを売るビジネスは、最先端どころか30年以上前からあります。赤血球の形態から診断できる病気はありますが、このビジネスはそういう標準的な形態診断とは無関係です。

 医療機関での標準的な血球形態検査では、看護師さんなどの資格を持った医療従事者が採血し、やはり臨床検査技師さんなどの資格を持った医療従事者が標本をつくって検査します。疑わしい場合は血液内科医や病理医がチェックします。病歴や他の検査結果を合わせて医師が診断し、必要に応じて治療や追加の検査を行います。

 正確に診断するためには適切な手順で標本を作成する必要があります。不適切な方法だと、赤血球が変形したり、凝集したり、壊れたりします。インチキビジネスでは、そうした異常な赤血球を顧客に見せることで病気を「診断」します。意図的に赤血球を異常を作ることができれば、意図的に病気を「治療」することもできます。サプリメントを販売した上で、赤血球が正常になったところを見せればいいのです。

 本当に赤血球の形態に異常が生じる病気であれば、精密な検査を要します。最低限でも、貧血の有無、つまり、血液中のヘモグロビン濃度は知りたいところです。また、こうした病気は適切な治療を要し、サプリメントでは治りません。当たり前の話ですが、正規の医療機関でなければ、適切な検査・治療は行えません。

 その場で赤血球の画像を拡大しテレビモニターで見せてサプリメントを売りつけようとしているのなら、ほぼインチキビジネスだとみなしてかまいません。資格を持った医師がいれば大丈夫、と言いたいところですが、残念ながらごく一部の医師はこうしたビジネスを行っています。アンチエイジングや美容効果をうたい、ビタミンC点滴や水素水点滴などのエビデンスに乏しい自費診療もあわせて行っているのが特徴です。

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。