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 今回もADHDが疑われる「生きるのがつらい女性」、リョウさん(30代前半・独身一人暮らし)のお話を続けていきます。今回はリョウさんがなぜかいつも1対1で正式につきあう恋人ができず、彼女や奥さんのいる人ばかりとつきあうことになる、いわゆる「二番目の女」にしかなれないというお話です。

 リョウさんは、いわゆる浮気性な男性が好きなわけではなく不倫体質でもなく、いつも本命の恋人ときちんとつき合いたいと思っている女性です。結婚願望も人一倍ある方です。いつだって、大好きな相手と誠実な関係でありたいと思ってきました。

 しかし、なぜでしょう。リョウさんが好きになる男性には、いつも恋人がいるのです。そういう男性ばかりが、なぜかリョウさんを好きになるのです。

 

 リョウさんは現在も、いまだに自分の家に招待してくれない男性と、「二番目の女」としてつきあっています。

 

 リョウさんが女友達とうまくいかなくなってきているのが前回までのお話でした。古くからの女友達でさえ、社会人になったり、結婚したりといったライフイベントの中で価値観が変わり、リョウさんと価値観や生活スタイルが合わなくなっていったのでした。そんな中、徐々にリョウさんは「私って誰からも必要とされていないんじゃないか。ひとりぼっちなのではないか」という思いを強めていきました。

 

 そんな時に出会ったのが、その男性でした。

 彼はとても明るく、リョウさんは久しぶりに学生時代に戻ったように、余計な気を遣わずに楽しくおしゃべりができました。長らく誰ともこんなに気楽に笑い合ったことはありませんでした。彼はリョウさんがどんなにおどけても、しゃべりすぎても、ニコニコしながら話を聞いてくれました。普段なら、「しゃべりすぎていないか? 嫌われないか? 変に思われないか?」とビクビクするリョウさんですが、その男性は自分よりもっと常識破りなほど快活にしゃべり、距離感などこちらが気にする暇もないほどフランクな態度で接近してきました。リョウさんは会話の中で彼女の存在をしりながらも、あっという間に一夜を共にしてしまいました。

 

写真・図版

 リョウさんにとって、こうしたパターンは、珍しくありませんでした。

 実は、ADHDを持つ方の多くに、こうした異性との対人関係の特徴があることが報告されています。Barkleyらの研究(2006)によれば、ADHDの子どもとそうでない子ども、計221人を青年期まで追跡したところ、ADHDの青年はそうでない青年と比べて早い時期に性交渉をもち、避妊せず、性病にかかる割合が4倍高く、女性では20歳までに妊娠する確率が10倍高いことがわかりました。

 

 こうした衝撃的な調査結果の裏には何があるのでしょうか?

 単にADHDの衝動性がそうさせているのでしょうか。

 私は個人的には、そうは思いません。これはデータの裏付けはありませんが、医療機関などで16年ほど勤務したり、研究を通じたりしてお目にかかる方々の臨床上の印象では、ADHDの方は、間接的でデジタルな理解よりも、アナログに実感することの方を好む傾向があるように感じています。体の関係を持つことで、その瞬間だけでも誰かとつながれている、必要とされている感覚をつかむことができるのかもしれません。

 リョウさんにも、できれば本命の彼女になりたいという思いはありますし、彼女のいる男性とそうした関係になることは避けたい気持ちもあります。しかし、それ以上に、孤独を埋めたい気持ちや、必要とされていることを体感したい気持ちがあるのです。そのため、なかなかその恋愛から抜け出せないのです。

 

 また、低い自尊心も、「二番目の女」としていつも優先されないことを助長しているのかもしれません。

 現にリョウさんはいつでも、自分が本当は何をしたいのか、どんな気持ちなのかよりも、彼のしたいことや気持ちにばかり目を向けていました。自分を犠牲にしてでも相手に合わせていました。背景には、子どもの頃から続く失敗経験からくる、自信のなさがありました。

 そんな態度は、相手の男性に、無意識的に、

 「この人は思うようにできる相手なんだ」

 もっといえば、

 「この人は自分自身のことを粗末に扱っているようだ。こちらも粗末に扱っていいんだ」

 というメッセージを送るようです。現にリョウさんとつきあう男性は、誰でもだんだん奔放に振る舞うようになっていきました。そして結局、いつまでも二番目の女に甘んじる結果になっていました。

 

 こうして、仕事もうまくいかず、学生時代から続く女友達とも20代後半からなんとなくうまくいかなくなり、恋愛でもいつも二番目の女として大切にされず、全く結婚が見えてこない毎日にうんざりしているリョウさん。

 最近では飲み過ぎることも多々あるようです。次回はこのことについて詳しく書いてみます。

 

【引用文献】

Barkley et al. 2006 Young Adult Outcome of Hyperactive Children: Adaptive Functioning in Major Life Activities. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 45(2), 192-202.

 

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【大人のADHDの集団認知行動療法研究の参加者の募集を終了しました】

 こちらで募集させていただいておりました、大人のADHDの特徴で、日々の生活でお困りの方を対象にした集団認知行動療法(グループカウンセリングの一種)の研究は、おかげさまで多数のご応募をいただきました。今年度の募集は定員に達しましたので、終了致しました。

 たくさんのご応募ありがとうございました。

 今後はインターネットを用いた同様のプログラムや、福岡や東京以外の場所での提供を予定しております。準備が整いましたらまたこちらで告知させていただきます。

 

<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。