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 この記事を目にしている方の中には、ステージⅣのがん患者さんもいらっしゃると思います。

 もし、いま働くことで悩んでいたら、自分の心に問いかけてみてください。あなたの心が「働きたい」と思うのならば、仕事を手放さないでください。

 これから、あきらめたり、遠慮をする必要はありませんが、少しだけ周囲とのコミュニケーションを密にしてみましょう。

 今回はステージⅣ期のがん患者さんの就労について取り上げます。

 

▼がんは最期まで働けます

▼同僚の理解と協力を巻き込むことが大切

▼社会とのつながりを持つことが大切

 

●ステージⅣでも働けます

 私たちの団体で2010年に実施した「がん患者の就労と家計に関する実態調査(N=855)」の調査結果をもとに、病期と就労状況について追加の解析をしてみました。

 病期(ステージ)とはがんの進行度合いのことを言い、がんの大きさや広がり具合を示しています。Ⅰ~Ⅳ期の大きく4つに分類をし(0期を含めて5つとする場合もあります)、数字が大きくなるほど、がんが広がっていることを表します。

 例えば、病期が0期の場合は、がん細胞が上皮(身体や臓器の表面あるいは内腔などをおおう組織、消化管では粘膜)内にとどまっており、適切な治療を行えば、転移や再発をすることはほとんどないと考えられています。

 ステージⅣは、もともとがんができた部位(原発巣)から他の臓器などに広がった状態を言い、治療の効果と副作用のバランスをとりながら、生活の質(自分が大切にしたい生活)を確保することが治療の目的になります。

 就労に関しては、治療が続きますから、配慮して欲しい事柄は増えていきます。

 599人のがん患者さんの解析結果から、確かに病期が進むにつれ(病状が進む)、同じ職場で働き続けられている患者さんの数は少なくなり、休職を選んでいる人の割合が増えていきます。でも、約4割の方は、働き続けています。

 ですから、「働きたい」と思う患者さんは、ステージⅣでもあきらめずに、働き続けてほしいと思います。

 

●同僚の理解と協力を巻き込む

 では、働き続けるためには、どのような支援が必要でしょうか?

治療は続きますから、定期的な通院は必要になります。そのため、仕事をお休みする日数は増えていくでしょう。体調が少し不安定になる場合もありますから、出社日のドタキャンもあるかもしれません。

 このように書くと「やっぱり働けない」と思われるかもしれません。でも少し考えてみてください。健康な人でも、「ドタキャン」はありますよね? お互いに人間ですから、朝起きたら体調が悪い日もありますし、急な用事が入ってお休みをとることもありますよね。「がん患者だから」という固定観念でみることはやめ、コミュニケーションを密にとっていくことを心がけてください。 これは周囲にいる人も、患者さん自身にも言えることです。

 以前、病状のことを何も聞いていなかった上司の方が、ご本人が亡くなられた後に「私が仕事の負荷をかけすぎて、命を縮めさせたのではないか?」とお話しをされていました。とても後悔をされていました。

自分が旅立った後、仲間にこんな思いをさせないことも、私たち患者側ができることではないでしょうか?

 「思い切って、今日、職場に話をしてくる。」と言った仲間がいました。夕方、「大丈夫だった?」とメッセージを送ると、「今まで通りにって言ってくれた。うれしかった。」と電話がありました。

下の図は、がん患者さんと、心不全などの患者さんの「身体・精神的活動性の変化(ADL:日常生活動作)」を比較したイメージ図です。

 

 がん患者さんの体調の変化は急激なので、人によって差はありますが、亡くなる数日前まで動くことができます。

 つまり、働く内容にもよりますが、事務型の仕事なら、テレワークなど在宅勤務ができる環境があれば社会参加は可能です。

 働くことを希望する患者さんは、病状を伝え、「できること」を伝えてください。そして、職場の仲間はその気持ちに応えてください。それが、お互いの「就労支援」です。

 

●社会とのつながりを持つことが大切

 WHO(世界保健機関)が2001年に採択したICF(International Classification of Functioning, disability and Health:国際生活機能分類)をご存知ですか?

 これは、人の「生活」と「障害」を考える分類方法で、その人が病気を抱えているかどうかではなく(病気の有無)、その人がwell being、つまり、幸福かどうかを考える、もしくは、その人にとっての「障害」を考えるときに役立ちます。大切なのは、この考え方の中に「参加」という概念があることです。

 参加は、「社会や人生への関わり」を表しており、働くことはもちろん、ボランティアなど地域・社会の中で「役割」を果たすことを表しています。

 最後の呼吸をする瞬間まで、人は何かの役割を持っています。

 その役割を一方的な固定観念や偏見、ボタンの掛け違いで奪うことのない社会になることを願っています。ステージⅣでも働けるし、働く意欲があれば、働いてほしい、私はそう思っています。

 

参考リンク:文部科学省「ICFについて」

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/032/siryo/06091306/002.htm別ウインドウで開きます

 

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(桜井なおみ)