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 夏休み本番。子どもと外で遊ぶ機会も増えますね。海や山に行く人も公園で遊ぶ人も、虫さされにご注意を。蚊やブユ、毛虫やダニなどへの対処法を、兵庫医科大学准教授で皮膚科医の夏秋優(なつあき・まさる)さんに聞きました。子どもは夏場、「かき壊し」からの細菌感染にも注意が必要です。2回に分けて紹介します。(虫と症状の写真はいずれも、夏秋さん提供)

 

蚊 子どもは数日たってからかゆくなることも

 虫さされの代表といえば、やっぱり「蚊」。日本全国に生息し、夜に室内で活動するアカイエカと、昼間に野外で活動するヒトスジシマカによる被害が多い。主に顔や手足などの露出した部分が刺される。

 蚊にさされてかゆくなるのは、唾液に含まれる成分に対するアレルギー反応が起こるからだ。症状の現れ方は体質によって異なるが、実は、年齢によっても異なる。大人は、刺された直後にぷくっと小さく盛り上がった発疹ができてかゆくなり、1~2時間で軽快することが多い(即時型反応)。一方、蚊に刺された経験の少ない小さな子どもは、刺された直後は無症状なのに、1~2日後に赤いしこりができてかゆくなることが多い(遅延型反応)。水疱ができることもあるという。

 「子どものうちはまず遅延型の反応が出ます。その後もくりかえし刺されるうちに、即時型の反応へと変わっていくことが多い。日本人の場合、だいたい学童期くらいまで遅延型の反応が続きます」と夏秋さんは話す。

 

海辺や渓流では ブユやヌカカに要注意

 山や渓流、海辺などに出かける人は、ブユやヌカカにご注意を。小さなハエに似た吸血昆虫で、ブユは体長2~4ミリ、ヌカカは体長1~2ミリほど。朝や夕方に活動することが多く、どちらも、おもに手足などの服に覆われていない場所を刺す。ヌカカは小さいため、髪の毛や衣服に潜り込んで、頭皮や袖口などを刺す場合もある。

 ブユは、刺された直後は出血点があるだけで、かゆみなどの症状はない。だが、半日ほどすると赤く腫れてかゆくなり、だんだん症状が強くなる。激しいかゆみが長く続いて、かき続けているうちに、刺された部分がしこりになって長く残る「慢性痒疹(まんせいようしん)」になる場合もある。1年以上、かゆみが残る場合もあるという。

 ヌカカは、高原や海辺に多く、刺されるとチクチクとした軽い痛みを伴うのが特徴だ。こちらも、刺された次の日くらいから、かゆみや赤いブツブツが現れることが多い。

 

症状が強ければ皮膚科へ

 治療法は、蚊もブユもヌカカも同じ。症状が軽ければ、自然に治るのを待つか、市販の虫さされ薬で対応する。市販の薬は、清涼成分のl(エル)メントールと、かゆみを抑えるジフェンヒドラミンという成分(抗ヒスタミン薬)が入っているものが一般的だ。他に、炎症を抑えるステロイド成分を含むものもある。刺されてすぐのかゆみ(即時型反応)なら前者、翌日以降のかゆみなど(遅延型反応)にはステロイドを含むものを選ぶとよい。

 ただ、市販薬は含まれているステロイドのランクが弱い。このため、「大きく強く腫れている」「刺された数が多い」「かゆみが強い」など症状が強い場合は皮膚科を受診し、強いランクのステロイドの塗り薬や、抗ヒスタミン薬の飲み薬を処方してもらうと良い。場合によっては、ステロイドの飲み薬を数日間、服用する場合もあるという。

 

子どもは「かき壊し」に要注意

 子どもの場合、特に夏場は「かき壊し」に注意が必要だ。かきむしって皮膚を傷つけると、傷口から黄色ブドウ球菌などに感染して、じくじくしたり、ただれたりして広がっていく「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」(通称とびひ)に発展することがある。傷口から出る体液や膿(うみ)が周囲に付くと、感染が他の場所に広がってしまう。とびひは、他の人にも感染するため、保育所などに通っている、きょうだいがいる、などの場合は注意が必要だ。

 とびひは、抗菌薬の塗り薬や飲み薬で治療をする。「早ければ3日目くらいで乾いてきて、5日目くらいで治ります」と夏秋さん。ただ、一般的な抗菌薬では効かないタイプが原因になっている場合があり、別の薬を試すなどして治療が長引くこともある。

 まれに、かきむしることを続けているうちに、かゆいかさぶたなどがいつまでも残ってしまう場合がある。「とびひは、何カ月も続くような病気ではありません」と夏秋さんは話す。こうなると、抗菌薬では効果が無い。かきグセから慢性湿疹のようになってしまった場合は、炎症を抑えるステロイドの塗り薬などで治療すると治るという。

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蚊やブユ、予防法は?

 室内での被害を防ぐには、第一に「虫を家に入れないこと」が大切。網戸などを設置するほか、蚊取り線香やエアゾールなどの殺虫剤を上手に使うとよい。殺虫剤は、除虫菊に由来する殺虫成分を含む「ピレスロイド系」と呼ばれるものが主流だ。虫の神経に作用して退治する。

 屋外では、露出を避けるほか、屋外用の殺虫剤と肌などにつける虫除け剤(忌避剤)の併用が有効だ。殺虫剤メーカー、フマキラーの佐々木智基・応用開発研究室長は「バーベキューなどをする時は、虫を寄せ付けたくないエリアを囲むように屋外用の蚊取りエアゾールをまくと、その場に居る蚊がまず退治でき、その後も蚊が寄ってこない空間を維持することができます」と助言する。天候にもよるが、8時間ほど効果を持続できる製品もあるといいう。

 虫除け剤は、ディートやイカリジンという成分を含むものが多い。厚労省は昨年、これらの成分をより高濃度に含み、効果が長持ちする虫除け剤の審査手続きを、迅速化する通知を出した。すでに高濃度の製品が市販されている。

 ただし、ディートは、12歳未満の子どもに使う時は要注意。高濃度(30%)のものは使わない、低濃度(12%以下)のものも6カ月未満の赤ちゃんには使わない、2歳未満には1日1回、2歳~12歳には1日1~3回までなど、安全に使うための基準を守って使うことが大切だ。

 

<アピタル:マンスリー特集・夏の健康>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/monthly/(鈴木彩子)

鈴木彩子

鈴木彩子(すずき・あやこ) 朝日新聞記者

2003年朝日新聞社入社。高松総局、静岡総局、東京本社科学医療部、名古屋本社報道センターなどをへて、2016年4月からアピタル編集部員。