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 先日、あるお母さんから赤ちゃんの便秘について相談されました。うんちの回数が2-3日に1回から5-6日に1回になってしまっているのに、他院ではあまり真剣に取り合ってくれない、と言うんです。確かに便秘はよくあることで、重大な病気とはいえないかもしれませんが、放っておいていいことでもありません。そして実は、子どもの便秘に対してやってあげられることは、実はたくさんあるんです。

 

 子どもの便秘で一番多いのは、「機能性便秘」です。大腸の構造そのものには問題や病気がなく、原因らしい原因がないのが特徴です。これとは別に、大腸の形や長さなどが原因で通りが悪くなる「器質性便秘」があります。いくつかの病気が考えられ、排便が極端に少なかったり、ほとんど出なくなってしまったりするほか、光沢が出るほどお腹が張ったり、おならが出ない、吐いてしまうなど「通り」が悪くなるための症状が出たりします。他にも、体重がなかなか増えない、血便、便秘と下痢が続く、お腹にかたまりを触れるなどということがあったら、特別な理由があっての便秘なのかもしれません。小児科でよく診てもらいましょう。機能性便秘であっても、週に3回以下しかうんちが出ないとか、子どもが長時間がんばってもうんちが出なくて泣くとか、肛門が切れて血が出るようなら治療の対象になります。

 

 一般に、粉ミルクしか飲まない子よりも母乳を飲んでいる子の方がうんちは頻回に出るものですが、「完母」(完全母乳、母乳しか飲まない)でも「完ミ」(完全ミルク、粉ミルクしか飲まない)と同じように便秘になることがあります。よくネットで見かけますが、「母乳の質が悪いから便秘になる」というのはデマです。根拠がありません。それに、母乳をあげているお母さんが便秘症かどうかも関係ありません。お母さんが食物繊維をとったり便秘薬を飲んだりしても、子どもの便秘に影響はありませんし、逆にお母さんが水分をたくさん摂っても同様です。

 「粉ミルクが合わないんですか?産婦人科にいるときには毎日出ていたのに」という人もいますが、関係ないでしょう。赤ちゃんは毎日成長発達するので、同じものを飲んでいたとしても便性も回数も変わります。そのため産婦人科病棟にいたときと同じ粉ミルクに戻しても、便秘が改善する保証はありません。

 他にもネットで検索すると、「赤ちゃんの便秘の原因に運動不足」と書かれたものがありますが、便秘をしている子と、便秘と無縁の子で運動量に差があることはあまりないと思います。どちらも赤ちゃんですから、運動量に差ができるほどの運動はできません。ネット上の育児情報の中でも、キャラメルを浣腸につかう「キャラメル浣腸」というものがありますが、危険なのでやめて下さい。ミルクアレルギーの乳児がアナフィラキシーショックを起こしたという報告があります(便秘に対するキャラメル浣腸によりアナフィラキシーを呈した乳児の一例 藤森誠 順天堂大学小児科 アレルギー59巻9-10号 P1472(2010.10) https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/59/9-10/59_KJ00006836623/_article/-char/ja/別ウインドウで開きます )。

 薬を使うより民間療法の方が自然で安全だと思っている人がいますが、そうではありません。効果と副反応が検証されている薬の方が安全です。

写真・図版

 

 便秘の赤ちゃんや子どもを連れて医療機関に行ったら、まず医師は話をよく聞いて診察をします。背景に病気がなさそうな便秘だったら、浣腸をしてどんな便か確認するとともに、溜まったものを出すことで患者さんを楽にします。次に、家でやってもらいたいことをお話しします。規則正しい生活をする、食物繊維の多い食事を食べる、適度に運動する、ゆとりのある時間にトイレに座る習慣を作る、出た日と出なかった日を記録する、ということです。ですが、トイレに座る習慣がまだなかったり、まだ離乳食もそれほど進んでいなかったりする乳児はこういった対策はできないですね。そういう場合は、綿棒で肛門を刺激する綿棒浣腸のやり方を説明したり、家でも浣腸や座薬を使ってもらったり、内服薬を処方したりします。

 

 便秘の内服薬には、浸透圧性下剤といううんちのボリュームを大きくする薬と刺激性下剤という腸の動きを速くする薬があります。意外に思われるかもしれませんが、飲み薬はクセになりにくいのです。つまり飲まないとうんちが出ないという状況には、ほとんどなりません。それよりも、うんちが溜まってしまい腸が太くなることはよくあります。硬いうんちで、排便時にお尻が切れたり痛かったりすると子どもは我慢しようとしますから、より便秘が頑固になりやすいのです。便秘薬がクセになることよりも、便秘がクセになる方が厄介です。便秘が習慣になっていた子だと、短期間で薬をやめるとまた便秘に逆戻りすることがあります。半年間は、週に3回以上、苦痛なく出るようになるまで治療しましょう。

 

 便秘の治療薬には、薬局・ドラッグストアで処方箋なしで買えるOTC医薬品もあります。子ども用浣腸、浸透圧性下剤の「マルツエキス」は薬局などで買えます。近くのお店を見てみましょう。また、ネットでもとても有益な情報が得られるサイトがあります。小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会のホームページ(http://www.jspghan.org/constipation/kanja.html別ウインドウで開きます)。便秘について学んだり、日誌をダウンロードできたりします。訪れてみてはいかがでしょうか。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。