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 これまで、ADHDが疑われる「生きるのがつらい女性」、リョウさん(30代前半・独身一人暮らし)のお話を続けてきました。今回からはリョウさんが立ち上がっていきます。(リョウさんは架空の人物です)

 リョウさんはこれまでも述べてきたとおり、職場でうまくいかず、学生時代からの女友達とも生活様式や価値観が合わなくなり、恋人に依存したくてもいつも「二番目の女」なので、そこにも手放しにはとびこめずにいます。さらに、それらから目を背けるように、お酒を飲み過ぎるようになっていました。

 

 お酒の飲み過ぎは、量もさることながら、

□ なんとか量を減らそうとするのにうまくいかない

□ お酒のせいで約束を破ったり人間関係を損ねたりしている

□ 飲んだ翌日に影響が残っている

 このあたりにチェックがつく方は危険信号です。

 

 リョウさんも当てはまりますね。リョウさんは、集中できないことや衝動的なことなど、ADHDの特徴そのもの(本体)に切り込む前に、まずは周辺の、お酒の問題から取り組むことにしました。

 

 ADHDもお酒の問題も混在していると、たとえば昼間ぼーっとして集中できないときに、「昨日飲み過ぎて寝不足だから集中できない」のか、「頭の中が騒がしいADHDの特徴のために集中できない」のか、原因が判別しづらいことが出てきます。

 寝不足が原因ならば、よく眠ればよいことですし、お酒との付き合い方を変えれば解決につながります。ADHDの特性が原因なら、集中を妨げるものをできる限り排除するとか、集中力を持続するトレーニングを受けるとか、対応が変わってきます。

 このため、お酒や恋愛といった周辺の問題をなるべく先に解決しておいた方が、どうやって仕事をうまく進めるかとか、どうやって人付き合いを円滑に進めるかといったADHDの特性とのつき合い方の対策を立てやすいのです。

 

 また、アルコールに依存するようになると、うつや不安といった気分の問題を引き起こすことが多いため、問題が軽度の段階でブレーキをかけておくのが賢明です。

 ということで、リョウさんはまずはお酒の問題に目を向けました。

 

 お酒でも、タバコでも、ゲームでも、ギャンブルでも、甘いものでも、コーヒーでも・・・。もうやめたい、どうにかしてやめなければと頭でわかっていても、なかなかやめられないもの、みなさんにもありますか?

 こうした「わかっていてもやめられないこと」をやめるための第一歩は、「なぜそれが必要なのか」に目を向けることです。お酒やタバコではなく、「本当に欲しかったもの」に注目していくのです。そして、それを満たす別の方法を考えるのです。

 「だめなものはだめだから、気合いでやめろ」という頑張り屋の方もいらっしゃるかもしれません。もちろん「気合い」は大前提として必要ですが、それにさらにプラスしていただきたいのがこの方法なのです。

 

 リョウさんは、これまでの仕事、友人、恋愛の悩みが積もり積もって、辛い気持ちを味わっていました。うつうつとした気分を晴らしたい、嫌な現実から目を反らしたい、この先の将来の不安を一瞬でもいいから忘れたい・・・。そんな理由からついつい飲み過ぎてしまっていたのですね。リョウさんが本当に欲しかったものは、「うつうつとした気分を晴らすこと」なのでした。

 誰かが心から自分の気持ちをわかってくれて、味方になってくれれば、一番うれしいのですが、今のリョウさんにはそこまでの味方はいませんでした。そこで、ひとまず心を落ち着けるために、ヨガなど体の面からのアプローチに取り組んでみることにしました。

 ADHDの方は、「新しい場所に行く」などの新しい刺激を求める傾向にあるため、予定がいっぱい入っていたり、移動距離が長かったり、時間感覚の乏しさから約束の時間に遅れそうになるなどバタバタすることも多かったりして、心身ともに疲れやすい……ということも多いようです。そうした背景もあって、身体面からのリラクセーション(特にヨガやマインドフルネス=現実をあるがままに受け入れる瞑想法)は、ゆっくりとした時間で自身の身体感覚や情緒に目を向けることができて、よい影響を及ぼすと言われておりおすすめです。

 

 また、次回以降のコラムでも紹介していきますが、仕事面や恋愛面でのうまくいかなさについて、根本的な解決に向けて取り組むこともよいでしょう。仕事のスキルや、対人関係のスキルをどう身に付けるかについて、専門家の助けも借りながら取り組むのです。そのためには、自分の特性を理解し、自分で受け入れるところはどこなのか、職場や友人関係などでうまくいくために少しだけ練習してスキルアップを狙うところはどこなのかを選別していく作業も必要でしょう。

 

写真・図版

 わかっているのにやめられないことは、きっと理由があって続けているんですね。自分が必要だから、続いているんです。やめられないことの奥に潜む、本当に満たしたいものさえわかれば、やめやすくなりますよ。

 

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【大人のADHDの集団認知行動療法研究の参加者の募集を終了しました】

 こちらで募集させていただいておりました、大人のADHDの特徴で、日々の生活でお困りの方を対象にした集団認知行動療法(グループカウンセリングの一種)の研究は、おかげさまで多数のご応募をいただき、定員に達しましたので、終了致しました。

 今後はインターネットを用いた同様のプログラムや、福岡や東京以外の場所での提供を予定しております。情報をご希望の方はこちらまで。

https://jp.surveymonkey.com/r/DVHDQT8別ウインドウで開きます

 

<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。