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 先日、育児に関するインタビューをたまたま同じ日に2つ受けることがありました。どちらも「SNSで見かける情報をどう見分けるか」、「ネット上で育児情報をどのように検索したらいいか」という内容でした。インタビューに答えながら、子育て中の親が本当に正しい情報は何なのかを見極めることは、とても難しいと改めて感じました。

 正しい情報を見極めるのが難しい背景はいくつかあります。

 (1)人目を引けばいいという記事が多い

 (2)偏った情報ばかり何度も見ることで誤情報が補強される

 (3)信頼できる情報が見つからない、あるいはアクセスが難しい

 (4)育児法や治療法の正解は探せばどこかにあると思いこんでいる

 などです。

 順番に例を挙げながら見ていきましょう。

 

 (1)人目を引けばいいという記事が多い

 今は誰でもSNSで投稿できる時代です。第三者がチェックしていない信憑性が高くない情報でも、人目を引いて斬新な内容だとつい読んでしまいますね。そして、面白い情報ほど拡散されやすいので、人目を引くような記事は注意が必要です。

 例えば、「スキンシップをすると愛情ホルモンや女性ホルモンが増えて、体の不調が治り美しくなるそうです」という話。「~そうです」という「伝聞系」の表現をとることで、どこかに根拠があるように読めますが、実際に採血してホルモン値を計測しているのを見たことがないので、私は疑問に思います。ホルモンは出れば出るほどいいというものではなく、多すぎたら病気になることもあるんです。

 一方、伝聞形を使わずに断言しているキャッチーな言葉も危険です。「足の裏は第二の心臓」、「皮膚は第二の排泄器官」という話は意外性があって面白いかもしれませんが、誤解を生みやすい表現です。各臓器は明確な境界なく連携しあい、それぞれに本来の役割を果たしています。「第二の心臓」ではなく、足は足です。「長生きをするには、足の裏やふくらはぎを揉むだけでいい」というのは極論です。「足は体の中で一番大きな筋肉である大臀(だいでん)筋があり、動かすことで循環機能が向上します」というなら正確だと思いますが、あまり耳目を引かなくなるでしょう。

 

 (2)偏った情報ばかり何度も見ることで誤情報が補強される

 自分は幅広い情報に当たっているつもりでも、知らないうちに同じ情報ばかり集めていることがあります。変な記事やサイトはお互いを引用元にして出どころが同じであることがあります。また、読んで信じこんだ人は、他の人に「それはおかしいんじゃない?」と指摘されても、「批判してくる人はなにも知らない」と反発したり、「私の方が正しい情報を知っている」、「私は本当のことに気づいている」という一種の優越感や頑(かたく)なさから視野が狭くなったりするのです。

 ワクチンを打ちたくない、ステロイド軟膏はもちろん保湿剤さえ塗りたくないという親御さんもいます。もちろん子どものことを思って勉強した上での信念を持っているのだと思います。「私は何冊も本を読みました。ちゃんとしたお医者さんが書いた本です」という方がいますが、医者の中でも、多くの専門家が正しいとする考え方に反対する「異端」の考え方をする人がいます。「ワクチンは危険だし、いらない」という本を読んだら、「ワクチンは安全で必要だ」という本もぜひ読んでください。その他の治療についても同様です。

写真・図版

 

 (3)信頼できる情報が見つからない、あるいはアクセスが難しい

 わかりやすく正しいサイトは、なかなか見つけにくいですね。厚生労働省のサイトは文章ばかりだったり、pdf形式でキーワード検索がしにくかったりします。「Q&A」も「そんな専門的な質問を普通の親御さんがするだろうか?」というような専門的なものだったり、本当に聞きたい質問がなかったりします。そのため、目に入りやすく、自信を持って断言しているような文章に頼りたくなります。

 

 (4)育児法や治療法の正解は探せばどこかにあると思いこんでいる

 そして、「子育てに正解はない」と言いますが、病気や体の不調の中には原因も治療法もわからないものがあります。いつの時代も「子どもが寝ない、食べない」という悩みを持つ人はいますが、全ての子どもに効果がある万能な方法はありません。そこで「私の提唱するこの方法なら必ず寝ます、食べます」などというものを読むとつい信じたくなってしまいます。でも、実際には、状況やその子の状態を見てその都度工夫していくしかないのです。

 

 医療者に、ネットの情報について相談したら笑われたりバカにされたりして、とても不快な気持ちになったという人がいると思います。一方で、医療者でもおかしなことを言う人はいて、職種や肩書きで判断できません。こういった現状で情報を見分けるには、説明を求めたり質問をしたりしてみましょう。ブログを書いた人、サイトに寄稿した人や掲載している会社、かかりつけの医師といった人にです。そのときに丁寧に答えてくれるかどうかはとても大事。とりわけ「そんなことはどうでもいいから、自分の説を信じないなら子どもが大変なことになるぞ」というような脅迫めいたことを言われたら、信じるのはやめましょう。子どもや親御さんのことを真剣に考えている人なら、分かるように説明したり、相談をきいてくれたりするはずです。根拠なく、親たちを脅して信じさせようとする人には近づかないのが一番です。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。