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 東海地方に住む33歳の男性は、今年5月、脳出血で病院に搬送されました。2カ月前にも脳出血を起こし、社会復帰に向けてリハビリに励むさなかのこと。主治医から「脳死に近い状態で、きわめて厳しい」と告げられた妻(31)は、病院内で臓器提供の協力を呼び掛けるポスターを目にしました。「家族が提供の意思を示すのは今かもしれない」と、医師や夫の両親に臓器提供について切り出します。男性は生前、意思を残していませんでしたが、家族の承諾で臓器を提供することになりました。

2度の脳出血「きわめて厳しい状態」

 一時退院する日の朝のことだった。東海地方の会社員男性は今年5月、リハビリのため入院中の病院から自宅へ戻ることになっていた。33歳になったばかりだった。

 「暑くなってきたから、家に帰ったら着替えを買いに行こう」

 前日、面会に来た妻(31)とそう約束していた。2カ月前、脳出血で倒れ、藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で手術を受けた。左の手足を思うように動かせない症状が出たが、リハビリを始めるとまひはほとんどなくなった。社会復帰を目指してリハビリ専門病院に転院していた。

 午前8時ごろ、自宅にいた妻の携帯が鳴った。「ご主人が意識を失い、けいれんを起こしています。藤田へ運びます」。入院先の病院からだった。

 1歳の長男を夫の両親に預け、病院へ車を走らせた。

 

 男性は「もう入院は嫌だ。早く家に帰りたい、仕事に復帰したい」ともらしていた。歩き始めた我が子の成長を身近で感じたい思いが、妻にもよく伝わってきた。

 「また入院が長引いちゃうな」と思い、救急外来へ急ぐ途中、廊下で以前入院した時に世話になった看護師に声をかけられた。

 「また、来ちゃいました」。そう口にすると、涙が浮かんだ。「もう1回、頑張ろうね」と言われ、気持ちを立て直した。

 主治医も救急外来に来ていた。「CT画像を見ましたが、今回は左の出血が激しく、呼吸などの生命維持をつかさどる脳幹を圧迫しています。すぐ手術をします」

 前回とは反対の左の脳が出血していた。妻は前回、医師が「左の脳は(言語中枢などがある)優位半球のため、左だったら大変だった」と言ったことを覚えていた。「左の脳ってことは大変な状態ですよね?」と聞くと、「そうですね」と硬い表情で返事があった。

 手術室に入る夫を廊下で見送った。自力で呼吸ができないため気管内挿管され、意識がなかった。「頑張って」

 夕方、手術を終えると、再び医師から説明を受けた。「左半球が広範囲に出血していて脳の腫れがひどく、臨床的には脳死状態に近いと言えます。きわめて、厳しい状態です」

 

壁のポスターが目に「今なのかも…」

 今年5月、東海地方の男性は脳出血で藤田保健衛生大病院に運ばれた。33歳だった。緊急手術を受けたが脳の腫れが激しく、妻(31)は医師から脳死状態に近く、きわめて厳しいと告げられた。

 ただ、妻は医師の言葉を十分には理解できていなかった。3月に右の脳が出血して運ばれた時、手足にまひが出たが、リハビリで回復する様子を見てきた。「意識は戻らないかもしれない」と不安を抱く半面、「訓練すれば、また話せるかな」という期待も持った。

 翌日未明、妻が自宅で休んでいると、携帯電話が鳴った。「ご主人が心停止になり、救命措置をしています。すぐに来てください」

 寝ている長男(1)を抱き、義…

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