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 「ちょっと、何やっているの!」「午前中にすませておいてって言ったでしょ!」。おやおや、怒った声が聞こえてきます。声の主はヨウコさん。総合病院の内科病棟で働くベテランの看護師です。最近、こんなことで悩んでいるようです。

 

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 同僚や医師、患者やその家族など、仕事の上で接する人々とのやり取りに、イライラすることが多くて、毎日が苦痛です。

 チームで仕事をしていると、同僚の仕事ぶりが目に付いて、つい指摘してしまうのです。医師には、入院患者さんの処置や薬や家族のことなど、病棟に来たときにあれもこれもまとめて確認しようと思って待ち構えてしまうので、最近は敬遠されているみたいな気がします。患者や家族に対しても、説明したのに指示を守ってくれないと、ついキツい口調で注意してしまいます。

 同僚にもそれぞれ抱えている仕事があって、私が思うようにはできないことも分かっているし、医師が忙しいことも分かっているし、患者や家族も、一度の説明で全て理解できるわけではないし、私の説明の仕方にも問題があることも分かっているのです。

 分かっているのに目に付いたら言わずにはいられなくて、勢いで注意してから「言い過ぎた!」と反省することの繰り返しで、そんな自分が嫌になります。

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 ヨウコさんは、経験豊富な看護師です。一つを見れば先々を予測できるがゆえに、周囲に対してイライラがつのるのでしょう。冷静に考えれば、相手の状況も分かるのに、目に付いたら、その場ですぐに口を出してしまうという失敗を繰り返しているのです。

 そんなヨウコさんにお勧めしたいのは、「ひとまずその場を離れる」ことです。

 ほんの少しの間だけ、その場を離れてみるのです。部屋を出るとか、トイレに行くとか、すぐにできる簡単な対処法です。場所を変えることで気持ちを落ち着かせることができますし、気分転換にもなります。そして、その場から離れている間は、怒りを振り返ったり、頭のなかで相手をやり込めるための作戦会議をしたりせず、飲み物を飲むとか、ストレッチしてみるとか、自分の気持ちを落ち着かせることに集中しましょう。

 目に付いた出来事に対するイライラが消失するわけではないのですが、冷静さを取り戻すことができれば、同僚に対して適切な言葉を選んで注意することができます。忙しい医師に配慮しながら声をかけられるようになり、トゲのある口調で指導していたのなら、それが少し丸くなるかもしれません。

 そんなに悠長なことをしてはいられない、その時その場で指摘しなくては、見逃すわけにはいかないと思うかもしれません。医療の現場は、一刻を争うこともあります。しかし一方では、目をつぶっても良いことに目くじらを立てているということもあるのではないでしょうか。まずは、ほんの少しの時間を使って、自分の冷静さを取り戻す練習をしてみましょう。

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 連載「医療・介護のためのアンガーマネジメント」では、今回からより具体的な場面について、イライラとの付き合い方を考えていきます。主人公は、総合病院で働くヨウコさんとメグミさん(いずれも架空の人物です)。ヨウコさんは、ささいなことが目に付いて、同僚や上司や患者さんたちについ口を出してしまい、あとから落ち込んでしまうことが悩みです。一方、メグミさんは、ついつい相手に合わせてしまい、自分の気持ちを表に出せずにイライラが募り、気づけば家族に八つ当たりも…。2人が、うまく怒りと付き合うヒントを、いっしょに考えていきましょう。

 

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編集部から

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《田辺有理子さんの新しい本が出版されます》

 タイトルは「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規、2160円)です。(詳しくはアマゾン:https://goo.gl/sxK6md別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。