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 10月は雨ばかりで寒かったですね。夏の後にすぐ冬が来てしまったようで、シャワーで済ませていた人も湯船に浸かるようになったのではないでしょうか。私は子どもの頃、熱いお風呂が苦手でしたが、今は娘たちが入った後に追い焚きをするくらい熱い方が好きです。今回は子どものお風呂の入り方についてです。

 

 一般的に脈拍数は、30-40度のぬるめのお湯に浸かることで減少し、41-42度の熱いお湯に浸かることで増加します。呼吸数は、入浴すると減少しますが、長湯をすることで増加します。だから、熱い温度で長湯をすると疲れるんですね。

 胃や腸は入浴することで動きが少なくなるので、お腹が痛い時には少し楽になります。筋肉に対しては、緊張をほぐして痛みを取る作用があります。特にぬるめのお湯にゆっくり入ると、リラックスしてよく眠れるようになります。

 風邪を引いたら、お風呂はやめましょう、と言われたことがありますか?昔はよく言われましたね。今に比べて家の気密性が低く湯冷めしやすかったことや、湯船に比較的長時間浸かる日本の入浴方法が弱った体力を消耗する危険性があったからだと思います。湯冷めしないような環境で、保護者が手早く入浴させるなら子どもの体力はそれほど使わないでしょう。むしろ、お風呂に入らないと、乳幼児はオムツかぶれがひどくなることがあるので、肌の清潔さを保つには入れてあげたほうがいい場合もあります。子ども自身が、辛そうにしているかどうかも参考にしてください。熱が高くても元気いっぱいの子は、お風呂に入れて構いません。逆に、熱はないけれどもしんどそう、それよりも寝ていたいだろうと思われる場合は回復してからにしましょう。また、熱のあるときに「体を温めて汗をかかせれば、熱が下がる」と信じている人がいますが、危険です。体内の熱がこもって子どもは辛いです。しかも、発熱によっていつもより水分がたくさん必要なときに、十分に水分が摂れないと脱水になるかもしれません。熱が上がって来る際には寒気がするのでたくさん着せる、温める、という対応でいいのですが、熱が上がり切ったらいつもよりむしろ薄着にして涼しくしましょう。

 お風呂でうつってしまう病気も気になりますね。水いぼは乳幼児期の子どもが接触することでうつしあう感染症です。伝染性軟属腫というウイルスが手のひらと足の裏以外どこでも盛り上がりのあるボツボツを作ります。水いぼができてしまったら、きょうだいとは一緒に入浴したり、タオルを共用したりしないようにしましょう。

 とびひ(伝染性膿痂疹)は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌などによる細菌感染症ですが、水疱ができたりかさぶたができて痛みを伴ったりするものです。とびひ部分を掻いてジクジクした部分からうつりますから、これも他の子どもとの入浴やタオルの共用を控えます。本人のとびひも悪化することがあるので、湯船にはつからずシャワーで洗いましょう。他にも、じんましんや水ぼうそうのようにかゆみのある発疹は、温まることで赤みやかゆみがひどくなる場合があります。熱いお風呂に長く入ることは控えましょう。シャワーやぬるめのお湯に短時間浸かることは、問題ありません。

写真・図版

 

 日本の子どもの死因として1-9歳では不慮の事故が大変多く、その中でも浴槽での溺水が多いのです(平成28年 第2回子供の事故防止 関係府省庁連絡会議資料 http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/pdf/children_accident_prevention_161102_0002.pdf別ウインドウで開きます )。着替えを取りに行く、電話に出るなどのわずかな時間、目を離した隙に赤ちゃん用の浮き輪が転覆したり、滑る床で転倒したりすることがあります。

 また、一人で浴室に入った子どもが残り湯をのぞき込むことで湯船に転落し、足が立つはずの深さであっても、溺れてしまうことがあります。浴槽に蓋をかぶせていても、お風呂の椅子などを使い登って転落してしまう危険性もあります。子どもの手が届かないところに浴室の鍵をつけるか、残り湯は一回ずつ捨てるなど防止策をとりましょう(消費者庁子どもを事故から守る!プロジェクト http://www.caa.go.jp/kodomo/onepoint/new_2-1.php別ウインドウで開きます)。

 

 1ヶ月健診をしていると頻繁に質問されるんですが、赤ちゃんは生まれた後、いつから大人と一緒のお風呂に入っていいかについて決まりはありません。小児科の教科書を見ても、乳児の入浴は「何度のお湯で何分間」「生後何日から成人と同時でも良い」とは書いてありません。以前、助産師さんに教えてもらったんですが、昔はお風呂のある家が少なく、銭湯などに通っていました。そのため、不特定多数の人が浸かったお湯でなく、行き帰りの負担も少ないので、赤ちゃんだけでも家でお風呂に入れてあげましょう、というのが沐浴指導の始まりだったようです。

 現代の日本の家庭のお風呂で、例え家族が先に入っていてもそれほど浴槽が汚くなっていることはないんじゃないでしょうか。24時間温度を保っているような循環型の浴槽だと、免疫力の弱い乳児はレジオネラ感染症が心配ですが、一般的なお風呂で、赤ちゃんが大人と入るデメリットが生じるとは考えにくいです。耳に水が入ることを心配する人もいますが、耳から入った水は出てきますから大丈夫です。産婦人科から退院してまもなく、お父さんがお風呂に入れて、お母さんが体を拭いたり服を着せたりしているというご家族は意外にたくさんいます。

 

 従来、妊婦さんは温泉に入ってはいけないと言われていましたが、2014年に温泉法の改訂があり、妊娠中が禁忌症からなくなりました。詳しくは、環境省がまとめた「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」(日本温泉気候物理医学会監修、https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf別ウインドウで開きます)をご覧ください。この中にも乳幼児についての禁忌はありません。子ども1人での入浴は避け、家庭のお風呂と同じような点に気をつけましょう。まだオムツが取れていない乳幼児は、他の利用客の迷惑にならないように気を配りましょう。

 最後に私の経験ですが、幼児期の子どもが面倒くさがってなかなかお風呂に入らないと手を焼きますね。「入浴剤を入れるよ」と言うと飛んで来ました。いろいろな種類のものがありますから、選ばせてあげるのもいいですよ。寒いとお風呂が楽しい季節です。転落や溺水にはよく気をつけて、入浴させてあげてください。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/

 (アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。