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 電車の中で泣いている赤ちゃんを見かけたとき、どう感じますか? 交通機関や公園などの暮らしの場で、子どもや親に向けられるまなざしは必ずしも優しいものではないようです。親子が肩身のせまい思いをしていたり、周囲が我慢していたり。届いた声や取材を通じて考えます。

「泣いていい」マーク、続々

 電車や飲食店で赤ちゃんが泣き出すと、保護者はいたたまれなくなりがち。そんな時に周囲の人が「気にしなくていいよ」とメッセージを伝えるためのマークがあちこちで誕生している――。9月8日の夕刊(名古屋本社版を除く)で掲載した記事が、今回の取材の出発点です。

 記事で紹介したのは、以下、三つの取り組みです。

 ●女性向け情報サイト「ウーマンエキサイト」は、赤ちゃんのイラストに「泣いてもいいよ!」とメッセージを添えたステッカーを制作しました。累計の印刷数は9万4千枚。これまでに賛同者は1万6千人を超えました。10月には三重県庁とコラボし、「泣いてもええんやに!」とメッセージを方言にしたステッカーも誕生しました。

 ●奈良県生駒市にあるベビーマッサージ教室の講師・岩城はるみさん(35)は、奈良市のデザイン会社と協力して「ALRIGHT BABY(赤ちゃん、大丈夫だよ)」ステッカーを制作しました。

 ●オリックス生命保険(東京)は、子育てするママ、パパを応援する「#泣くのが仕事」プロジェクトを3月に始めました。

 保護者が使う「泣いちゃってごめんね。」と、支援したい人が使う「だいじょうぶ! こどもは、泣くのが仕事です。」の2種類です。

 

子連れで外食、私は遠慮

 マークの記事は、電話やメールで本社に多くの声が寄せられたほか、ツイッターでも感想がつぶやかれていました。一部を紹介します。

【朝日新聞に届いた声】

 ●6歳、2歳8カ月の2児を育てている。赤ちゃんだけでなく、幼児もぐずることは多い。こうしたマークを貼るお店や公共施設が増えて、温かく見守ってくれる人が増えるといいと思う。

 ●なぜ大人の都合で赤ちゃんをレストランに連れて行ったり、満員電車にベビーカーで乗るのですかと言いたい。子育てをしましたが、レストランに連れて行くことは遠慮しましたよ。

【ツイッターでつぶやかれた感想】

 ●悪くないんだけど、何でもマークにしなきゃいけない世の中になっていくの?

 ●いいことだと思う。周りを気にして当惑した親の顔を見たら、子供も安心出来ないだろうから。ただ、泣くのと騒ぐのとは区別してもらいたいとは思うが。

 

マーク不要になればいいけど 提案した紫原明子さん

 「泣いてもいいよ!」のマーク作りを提案した、東京都在住のエッセイスト紫原(しはら)明子さん(35)にねらいや反響への感想を聞きました。

       ◇

 きっかけは、ネットなどで広がる、子どもや親に対する「迷惑だ」というネガティブな「本音」です。そういう環境が変わってほしいという思いがありました。

 マークを作って1年半が経ち、たくさんの応援メッセージが届きました。その一方で、批判的な意見も届いています。難しい課題です。

 厳しい意見の中には泣いている子の横でスマホを触っている親に対しての声が多くありました。子どもを心配した人たちの声です。しかし、一概に「冷たい親」と見て良いのでしょうか。人との待ち合わせの場所や、駅のトイレ、エレベーターの位置を確認しているのかも知れません。駅のように人が絶え間なく動くところでは、立ち止まって調べることも出来ません。今までスマホに頼ってきたのに、親になった瞬間からスマホを使わないで生活するというのは難しいと思います。

 多くの親は赤ちゃんが泣いていない方がいいと思うし、できるなら、周りに迷惑をかけたくないと思っていると思います。ですが、親に「申し訳なさそうにしている顔」を求める人は少なくありません。

 みんなが住みよい環境を作ることは難しい。しかもその環境作りを担っているのは、交通機関を始めとした民間企業。企業の努力は感じていますが、それだけで良いのでしょうか。マークを作る時から「こんなマークがいらない社会の方が良いよね」という話を仲間と話していました。でも今はまだ、必要だと思っています。

 (聞き手・浜田知宏)

 

公園の規制、苦情受け増

 我が子が遊ぶ「今の公園」は、自分が子どものころに遊んでいた「昔の公園」よりも規制や禁止が増えたと思いますか? 遊具の輸入・販売などを行うボーネルンド社が4月にネットで調査したところ、約8割が「そう思う」と答えました。

 調査は3~12歳の子どもを第1子に持つ全国の父母が対象で、1600人が回答しました。回答の内訳は「とてもそう思う」が37.2%、「どちらかと言えばそう思う」が40.7%。残りは「どちらとも言えない」が19.1%、「どちらかと言えば思わない」が2.0%、「全く思わない」が1.0%でした。

 禁止や規制の対象を選ぶ設問(複数回答)では、「大声、騒音」が昔の公園で規制されていたと答えた親は14.1%、今の公園では35.5%に。「球技」は昔が6.5%、今は35.6%で約5倍に増えました。

 実際の現場はどうでしょうか。

 「近所の方も壁に当たるボールの音で大変迷惑しています」。関西で「住みたい街」として人気の高い兵庫県西宮市の阪急西宮北口駅近く。公園に注意を呼びかける看板や貼り紙がいくつもあります。「何度も続くと公園を閉鎖することがあります」との警告もありました。

 市公園緑地課によると、看板は住民からの苦情を受けたものですが、「いきなりレッドカードを出すことはない」。校区の小学校に注意を促すなどし、改善されない場合に設置します。壁打ちなどの音への苦情は夜間や早朝のものです。ただ、ボールが飛び出して住宅の窓を割ったり、幼児らに危険があったりする問題も重なり、球技を禁じる場合があります。実際に、2年前から一部利用を制限している公園もあります。

 東京都のある区の担当者も、看板などを立てるまでには近隣住民からの苦情が続くといった「致し方ない事情」があると説明します。「近隣に配慮を、と言いたいのであって、子どもに遊ぶなと言いたいわけではない」と話します。

 (田中陽子)

 

住民同士の希薄な関係、背景 大正大学・白土健教授

 子どもの遊びの場について研究している大正大学の白土健(しらどたけし)教授に聞きました。

       ◇

 公園での禁止事項を書いた看板や注意書きについて、東京近辺の事例を集めました。「公園は静かに利用しましょう」という看板はもちろん、「騒音で迷惑しています!」「近隣に迷惑な行為禁止」といった文言は、珍しくありません。

 こうした公園の多くは住宅地にあって狭い。都市部ならではの事情が大きいと思います。近隣住民からの苦情を受け、自治体の公園担当が敏感に対応していることもあります。裏を返せば、騒がしいと感じても子どもや親に直接注意しないという、住民同士の関係の希薄さが背景にあります。

 子どもが騒がしいと感じる理由は、子どもの声への抵抗力がない人が増えているからです。単身者や、はるか昔に子育てを終えた高齢者にとって、静けさこそ「当たり前」の世界なのです。

 もちろん公園は公のもので、子どもだけのものではありませんが、お互いさまの精神がもっとあっていい。苦情を言う人も、孫や知り合いの子の声なら許せるはずです。自治体は禁止看板を立てるのではなく、住民同士の交流に力を入れるべきではないでしょうか。

 (聞き手・十河朋子)

 

保育園反対に「同感」、35%

 保育園児の声を騒音のように思い、保育園の立地に反対する住民の立場に同感できると答えた人は、35.1%――。

 厚生労働省が実施した「人口減少社会に関する意識調査」(2015年10月公表)でこんな結果が出ました。ネットで3千人から回答がありました。

 「ある程度」が29.7%、「とても」が5.4%。一方、同感できないと答えた人は64.9%で、「全く」が26.4%、「あまり」が38.5%でした。

 (山内深紗子)

 

ご意見、募集します

 暮らしの中で「子どもお断り」と感じることはありますか。どうすればいいと思いますか。体験、ご意見をお待ちしています=下参照。ツイッターの場合は、ハッシュタグ「#子どもお断り?」でご投稿ください。

 

 ◇ご意見をasahi_forum@asahi.comメールするか、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「子どもお断り?社会」係へお寄せください。

 

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