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 生まれつき命にかかわる重い遺伝病を抱える子どもを育てている夫婦が、新たな子どもがほしいと願いました。同じ病気ではないか、妊娠中におなかの中にいる赤ちゃんの遺伝子を調べる検査を3回受けました。科学的には病気ではない子どもを授かる確率は4分の1なのに、3人とも病気の遺伝子を持っていて、出産を断念しました。死産や中絶は母体に大きな負担がかかります。もうこれ以上繰り返すのは難しいとあきらめかけていた時、体外受精した受精卵の遺伝子を子宮に着床させる前に調べる「着床前診断」の存在を知りました。

両親に遺伝子の変異

 2004年3月、東京都に住む自動車販売業の平間大輔(ひらまだいすけ)さん(42)と妻恭子(きょうこ)さん(43)に長男大樹(ひろき)君が生まれた。生後間もなく、入院していた公立病院の新生児科医に「滑脳症(かつのうしょう)」と告げられた。

 脳の表層に多数あるひだが少なく、脳神経細胞がうまく発達しないのが滑脳症だ。恭子さんは最初、医師の説明が頭に入らなかった。2回目の説明で大樹君が生涯寝たきりで、話しもできない可能性があると知り、パニックに陥った。「私に育てるのは絶対に無理だ」と思った。泣きながら医師に聞いた。「生まれなかったことにできないですか」

 医師は首を横に振った。「それはできませんよ」

 生後50日ほどで退院した。大樹君を自宅で育てながら、恭子さんは将来への不安が募った。心配した両親に「休んだ方がいい」と勧められ、夫婦で約2週間、米国にいる大輔さんの妹家族を訪ねた。

 「ミルク飲んでるかな」。離れると大樹君が心配になり、帰りたくなった。「頑張ろう」と前向きな気持ちになって帰国した。滑脳症の患者会にも入った。

 

 ところが、肺炎になって受けた検査がきっかけで、翌05年に大樹君の病気は「福山型筋ジストロフィー」だとわかった。筋肉の働きが徐々に衰え、やがて呼吸や心臓にも問題が生じる遺伝性疾患だ。滑脳症のような病気が合併することも多い。病気の進行を抑える治療法はまだ見つかっていない。

 診断した武蔵病院(東京都小平市、現国立精神・神経医療研究センター病院)の小牧宏文(こまきひろふみ)・筋疾患センター長(52)らから病気の説明を受けた。大輔さんは「遺伝性疾患」と聞いて一瞬、「自分が悪かったのか」と衝撃を受けた。しかし、原因となる遺伝子に変異がある人は「満員電車の1車両に1人はいる」と聞き、珍しいことではないと思った。

 原因遺伝子は筋肉の働きに関係するフクチン。体内には父由来と母由来の1対あり、片方が正常なら問題は無い。平間さん夫妻は2人とも片方のフクチンに変異があった。大樹君は2人から変異がある方のフクチンを受け継いでいた。

 

第2子を妊娠、遺伝子検査で出産断念

 東京都に住む自動車販売業平間大輔さん(42)と妻恭子さん(43)の長男大樹(ひろき)君は1歳だった2005年、筋肉の働きが徐々に衰える遺伝性疾患「福山型筋ジストロフィー」と診断された。

 恭子さんは医師に尋ねた。「次の子も同じ病気の可能性があるんですか」。医師は「確率は4分の1です」と答えた。1対ある原因遺伝子フクチンに、父と母の両方から変異ある方を受け継ぐと病気が発症するという。

 翌06年、恭子さんは第2子を妊娠した。胎児の遺伝子を調べる「羊水検査」を受けた。両方のフクチンに変異があった。

 大樹君は2歳になっても首が据…

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