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前立腺がんの治療法
治療法を選ぶために大切なこと
治療法

がんと診断されて、それを告げられたらショックで落ち込むのは当然です。これからの生活で不安なこともあるでしょうし、ご家族もご心配なことでしょう。

しかし、前立腺がんは早期であれば完全に直すことができますし、進行したがんであっても、進行を遅らせる有効な治療法があります。

がんと診断された場合は、CTやMRIなどの画像診断でがんのひろがりや転移の有無を調べます。また、骨への転移の有無を調べるために骨シンチグラフィーを行います。さらに針生検から得られたがんの悪性度やPSA値なども参考にしながら、治療法を選ぶことになります。

治療法を決めるにあたっては、まずは患者さん自身が病気や治療法をよく知り、ささいなことも専門医に相談することが大切です。

前立腺がんの手術について教えてください。
根治的前立腺摘除術

がんが前立腺にとどまっている早期がんに対しては、前立腺と精のうをすべてとる根治的前立腺摘除術(こんちてきぜんりつせんてきじょじゅつ)を行うことができます。これは、がんを完全に直す可能性のある治療法のひとつです。

手術にはへその下を縦に切開する恥骨後式(ちこつこうしき)と、肛門と陰のうの間を切開する経会陰式(けいえいんしき)があり、手術には3~4時間かかります。腹腔鏡(ふっくうきょう)を使用したモニターに映しだされた画像を見ながら行う腹腔鏡手術という方法もあり、切開する創が小さくてすむのがメリットですが、医師の高度な技術が必要とされます。

術後は尿道からカテーテルが挿入されますが、1週間ほどで抜くことができます。術後には多少の尿もれが起こりますが、多くの場合、時間の経過とともに消失します。

通常、手術中の出血に対応するために、事前に自分の血液(自己血)を用意します。 自己血を用意しておけば、他の人に血を輸血することはほとんどありません。

放射線療法について教えてください。
組織内照射法

放射線療法とは、前立腺に放射線を当て、がん細胞を殺す方法です。がんが前立腺に限局した早期がんに対して行うもので、手術とならんでがんを完全に治す可能性のある治療法のひとつです。また、前立腺の周囲にひろがったがんに対しても、内分泌療法(ホルモン療法)と併用して放射線療法が行われます。

放射線療法には、体外から照射する方法と、放射線を出す小さな線源(せんげん) を前立腺に挿入する組織内照射法(そしきないしょうしゃほう)があります。体外から照射する方法では、一般的に1日1回、週5回で7週間ほどの通院が必要になります。組織内照射法では、線源は永久的に前立腺に残りますが、放射線の量は徐々に減り、1年後にはほとんどなくなります。

この治療は体への負担が小さく、 短期の入院治療ですみますが、対象は比較的おとなしいタイプの限局がんの方がこの治療のよい適応です。

放射線療法には尿の回数が増えたり、下痢や便に出血がおこるという副作用がありますが、通常程度は軽く、頻度もまれです。

内分泌療法について教えてください。
前立腺がんとホルモンの作用

前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けて大きくなる性質があります。そのため、体内の男性ホルモンを低下させたり、その作用を抑制し、がんの増殖を抑えようという治療法が内分泌療法です。

内分泌療法には、薬物療法と、男性ホルモンをつくる臓器である左右の精巣を摘除する両側精巣摘除術(りょうそくせいそうてきじょじゅつ)があります。薬物療法には精巣からの男性ホルモンの分泌を低下させる注射薬のLH-RHアゴニストと、男性ホルモンの作用を阻害する内服液の抗アンドロゲン剤が主に使われ、しばしば同時に用いられます。

前立腺がんの進行の度合いにかかわらず、すべての患者さんが対象になる治療法で、手術療法や放射線療法と組み合わせて用いられることもあります。

内分泌療法は初期には非常に有効ですが、時間の経過とともに効果が弱くなるという問題点があります。

無治療経過観察について教えてください。
経過観察が適応になる場合

がんの悪性度が低く、PSA値が低く、直腸診や生検の結果からもがんのひろがりが小さいと判断された場合は、経過観察となることがあります。

前立腺がんは高齢者に多く、一般に他のがんに比べると進行がゆっくりとしているので、治療による体への負担が大きいと、かえって生活の質を落とす恐れがあるためです。必ずしも必要でない治療を避けるための選択肢のひとつです。

経過観察となるのは、がんが前立腺の中にとどまっており、がんの悪性度が高くない場合です。

経過観察中は定期的にPSA検査を受けながら、注意深く見守っていくことが必要です。

PSA値が上昇した場合などは、治療開始が遅れないように、必要に応じて治療方針の再検討が行われます。

PSA検診を受診する前に知っておきたいこと
PSA検診を受信する、受診しないことによる利益と不利益

PSA検診は、検査を受診することで転移がんに進行する危険率が下がるという「利益」がある反面、死亡に影響しないようながんが約10%の割合で発見されるなど、検診を受診することでこうむる「過剰診断・過剰治療」といった不利益も存在します。
前立腺がんの特徴、日本の現状、検診受診の利益と不利益については、最新かつ正確な情報をまとめた「ファクトシート」*を検診実施施設に用意しています。 PSA検診の受診をお考えの方は、受診の前後にこちらをよく読み、不安や疑問に思う点があったら医療者より十分な説明を受けてから、受診の判断をするようにしましょう。
なお、PSA値は前立腺がんだけではなく前立腺肥大症、前立腺炎、射精、尿閉などその他の要因によっても上昇します。PSA値を正しく測定するにあたっては、検査時までにあらかじめPSA値を上昇させる要因を排除、もしくは考慮しておく必要があります。
*くわしく知りたい方は、日本泌尿器科学会編集の 「前立腺がん検診ガイドライン」(金原出版)をご覧ください。

世界的にも認められた前立腺がん検診の重要性

現在アメリカでは、50歳以上の75%が少なくとも1回はPSA検診を受診しています。最新のがん統計によると、PSA検診の普及にともない前立腺がんによる死亡者数は1990-1992年をピークに低下傾向にあります。
また、PSA検診による死亡率減少効果については、先頃発表されたヨーロッパで進行中の大規模研究ERSPC*の中間報告においても明らかにされています。
PSAを用いた前立腺がん検診の有効性を評価した米国泌尿器科学会は、2009年4月に新たな「PSA検査に関するガイドライン」を発表しました。
その改定されたガイドラインでは、PSA検診実施年齢は従来より10歳引き下げて、40歳以上の男性とされており、前立腺がん検診の利益と不利益について、また、治療に際しては無治療経過観察について情報提供することが推奨されています。

※European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer


【監修】 九州大学病院泌尿器科 教授 内藤誠二先生