女性作家たちが大活躍
史上最年少受賞記録を塗り替えた2人の芥川賞作家はともに女性でした。女性作家たちの活躍に始まり、話題作がそろったこの一年の本の世界を、石川亜沙美さんと松田哲夫さんが語ります。
石川 今年の話題本といったら、まず何が挙がりますか?
松田 年明けの芥川賞で綿矢りささんの『蹴りたい背中』、金原ひとみさんの『蛇にピアス』という最若年2人の作品が受賞したことでしょうね。これは若い人たちに文学を見直してもらういいきっかけになった気がします。
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石川亜沙美
第4回全日本国民的美少女コンテストでモデル部門賞受賞。CM、雑誌、ショーなどでトップモデルとして活躍するほか、02年に女優宣言をしてTVドラマなどに出演。
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石川 対照的な2人だから、それぞれの作品を読みたくなりましたよね。賞で私が気になったのは、小川洋子さんの『博士の愛した数式』が受賞した「本屋大賞」です。今年書店でよく見かけましたけれど、これはどういう賞なんですか。
松田 今年から始まった賞です。ここ数年、本屋さんの手書きのPOPが人目にとまってその本が売れる、という現象が増えたでしょう。それならば本屋さんとしてもっと積極的に本を薦めていこう、ということで始まったんです。書店の人が、自分の売りたい本を投票して、大賞が選ばれます。
石川 プロの人が選んだ本だと思うと、読みたくなりますね。
松田 『博士の愛した数式』は読売文学賞も受賞しましたしね。小川さんは今年、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花賞も受賞している。
石川 綿矢さん、金原さん、小川さん……女性作家さんが元気ですね。
松田 それは今年の特徴。愛と別れの切ない物語を書かせたら当代一の江國香織さんも『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞しました。あとは桐野夏生さん。『残虐記』は人間の心の底をのぞきこみ、秘められた傷をえぐりだすような作品。彼女は今年『OUT』で、日本人作家として初めて、アメリカのミステリー賞「エドガー賞」の候補になったんですよ。
石川 国際的な作家さんになりつつあるんですね。
松田 今年の小説で、僕の一番のお薦めも女性の作品。恩田陸さんの『夜のピクニック』です。地方の高校で、夜を徹して全校生徒が歩く、歩行祭というイベントがあるんです。ただ歩くだけで大きな事件は起こらないけれど、読み出すと止まらない。青春小説の大傑作。
石川 あっ、私もそういう世界好きです。読んでみたいですね。あと、女性作家というか、モデルのhanae*ちゃんの『小学生日記』も、話題になっていましたね。
松田 これには感心しました。小学生が小学生らしく感じたことを真っすぐな言葉にしている。あと、海外文学では『その名にちなんで』。緩やかに流れる大河のような作品で、ほのぼのするところもあれば、突然、体中の血が凍るような描写も出てくる。心を揺さぶられます。これは、世界文学史に残る作品になるんじゃないかなあ。
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松田哲夫
1947年東京生まれ。『大さまのブランチ』(TBS)でおなじみの「本」のオーソリティー。人間味ある書評が人気を集めている。本職は筑摩書房の編集者。著書に『編集狂時代』(新潮文庫)など。
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石川 すてきな女性が書いた本は気になりますね。
松田 女性のお手本としては、佐野洋子さんの本もいいですよ。『神も仏もありませぬ』は日常をつづったエッセーなんですけれど、スックと立っている潔さが心地いい。
石川 佐野さんの絵本の「100万回生きたねこ」、大好き。
松田 それと、山口智子さんの『反省文 ハワイ』のまっすぐな感じもよかった。
石川 山口さんの本は、この前のチリの本もステキでした。
松田 彼女が体と心で受けとめたものを生き生きとした言葉でつづっていて、ハワイを通して宇宙まで感じさせるんです。あと、女の人にお薦めなのは『オンナノコのおたしなみ』。冠婚葬祭の約束事などを楽しく教えてくれます。
石川 こうしてみると、今年は本当に「女性」がキーワード。何と言っても『負け犬の遠吠え』の“負け犬”ブームもありましたし。
松田 読んでない人たちからはマイナスのイメージをもたれたけれど、実は「そういう生き方もいいじゃない」という本。
石川 そう、読めばそういう女性の楽しい部分とか、自立した部分が見えてくる。前向きですよね。(次ページに続く)
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