19歳の芥川賞作家など若い世代の書き手が活躍するなか、15歳の少女が大手出版社の新人賞を受け、デビューすることになった。若い才能を発掘してきたことで知られる「文芸賞」(河出書房新社主催)でもこれまでは「1980アイコ十六歳」の堀田あけみさんら17歳が下限。文学・小説賞を取ってデビューした作家では異例の若さになった。
第6回「小学館文庫小説賞」(小学館主催、賞金100万円)に、571編の応募作から選ばれたのは岩手県の河崎愛美(まなみ)さんが書いた恋愛小説「あなたへ」。今春、小学館から単行本として発売される。
受賞作は400字詰め原稿用紙に換算して約300枚。愛する「あなた」へ少女が書く手紙の形式で、出会いから突然の別れまでの心の動きを描いた。
同賞は作家の選考委員は置かず、小学館の文庫文芸編集部員が選ぶ。予備選考を担当した文芸評論家は「驚くほど落ち着いたストイックな文章で、恋愛感情の透明な美しさとかなしさを表現しようとしている」と話す。
河崎さんは理科系の高専1年に在学中。中学生になってから村山由佳さんらの小説を集中的に読むようになり、これまでに地元紙の小説コンクールで新人賞を受けたこともある。「誰かに気持ちを伝えたいと思ったとき、小説という形式がぴったりでした。心の深いところに届く小説を、直球勝負で書いていきたい。でも、自分の人生を犠牲にしてまで書くものではないので、次の小説はまた書きたいものが出てきたら取りかかります」と話す。
出版界に詳しい編集者で評論家の藤本由香里さんは「感性を重視した作品や、軽く読めるものが大ヒットする時代には、若い作家の活躍が続く」と分析している。
(01/30)
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