|
|
|||||||
|
|||||||
|
|
|
|
|住まい|仕事・資格|BOOK|マネー|健康|愛車|教育|ネット|オフタイム|囲碁・将棋|be|コラム | | ||||
| home > book |
|
知の空間、未来像探る
第2回朝日「図書館を考える」フォーラム 討論
■現状と展望 宮崎 身をそこにおくだけで知に染め上げられるような思いを誘う図書館で、本を読む楽しみをいかに利用者に提示するか――。期待が増す一方、様々な課題を抱える公共図書館の現在と展望をお話しいただきたい。
江上 これからの街づくりには、生活の質を高めていくうえで、知的インフラとしての図書館が重要だ。インターネットの普及で、実利情報、実用情報は容易に自宅で取得できるようになったが、図書館が完全に取って代わられるとは思わない。図書館は、多様な動機を抱えた市民の、知的好奇心に応える、地域に根ざした公共の場だ。 米国では90年代にスモールビジネスが燎原(りょうげん)の火のごとく創設されたが、その時の情報装備として図書館も大きな役割を果たした。東京でも最近、ビジネス支援図書館や起業家支援図書館が開設される例が出てきた。 今日、日本では20歳代前半の失業率が2ケタと高く、フリーターが増加している。若者のサポート空間にもなるのではないか。 糸賀 全国の町村で図書館があるのは、まだ40%程度。それでもこの30年間に小さな子どもからお年寄りまで使うようになった。本好きや読書のプロだけでなく、“素人”でも気軽に図書館を使うようになった。その一方で図書館員も素人が増えた。 読書する人の割合は、実は、そんなに変わっていない。電車の中で何をしているかの調査で「本を読んでいる」は、92年の21.8%が、携帯電話が普及した01年でも21.4%だった。ただ読書量の格差は広がっている。 読書の仕方も変わってきた。かつては通読。それが最近は情報の断片を拾い集める。図書館には書店で手に入らない資料もある。それを使って、あるテーマについて調べ、課題を解決する。新しい図書館の使われ方だ。デジタルとアナログ、両方の情報を備えたハイブリッド(混合)型図書館が広がっていく。 渡部 私の館は00年末に開館。人口1万1000人の小さな町の図書館だが、今年、新成人に「町で一番よい所は?」と問うアンケートを行ったところ5人中4人が図書館と回答した。今年4月には対前年比32%の利用者増を記録した。
今、図書館は、ドイツで人口10万人に対して17館、かたや日本では2.1館。足りないし、身近にあっても頼りになる館でなければ意味がない。 地の利に恵まれぬ場所にある図書館を、中学を卒業後、生涯にわたり学習できる環境にするためには――例えば大学通信教育を受ける学生がリポートを書ける水準の蔵書が必要だろう。 雑誌は約300タイトル、新聞は15紙で中国語、ポルトガル語の新聞も置き、地元に増えた外国人労働者の方々の便に供している。 図書館は住民の可能性をのばせる装置だと思う。地場産業、地域の暮らしを支える図書館でありたい。地域の図書館を支えるバックアップ図書館の整備も訴えたい。 ■将来の姿 宮崎 自治体財政が厳しい中で図書館の未来像をどう描くのか。 江上 図書館には、電子情報にはない、紙の印刷本が持つ魅力が詰まっている。猥雑(わいざつ)な日常から離れて、ひんやりした書庫で本を探す行為は、特別な思考の空間と時間をつくりだし、想像力、探求心を育てていく。他人と空間を共有し、共に本を読むという空気感は、私たちに孤独ではないという感覚と、物事を考える熟成の落ち着きを与えてくれる。地域の教育力を高める投資と考えたい。 宮崎 図書館の数と質を同時に充実させることは可能か。
糸賀 日本は図書館に関して発展途上国。図書館がなくては自治体として存立し得ない、という認識をもたなくてはいけない。要となる司書は、これからの図書館の役割を理解し、単に本を整理するだけではなくて、むしろ図書館の資料に対して付加価値を高めて提供・発信していくことが大事だと思う。 宮崎 司書を養成する場や機関は。 糸賀 4年制大学を中心に年間8000〜9000人が資格を得る。供給過剰であり、むしろこれからの図書館を切り拓(ひら)いていく力を持った司書を、少しずつでもいいから作り出していかなければならない。 宮崎 住民が図書館に何を望んでいるかをくみ取るための方法は。 渡部 地域の会合などへ出かけ、地域の人と話すと、何をすべきかが見えてくる。1週間前に、この町で見られるホタルをいかした町づくりのために、図書館資料を使って子どもたちに説明したいという話がきた。集落の景観をどう守っていくか、というような相談も寄せられる。エリアがあまり広すぎると、手が届かない。歩いて地域のあちこちへ行って、いろんな面を見聞きしていく努力をしている。図書館は屋根付きの公園。地域の人たちとコミュニケーションしていく。 宮崎 このところ進む市町村合併は、逆風ではないか。 渡部 十分配慮しないと、図書館から足が遠のくのではないか。 石原 学校には図書室があるが、蔵書は貧弱。「総合的学習の時間」で何かをやろうとしても、それだけの本が用意されていない。そういうところで、公共図書館と学校図書室が連携していけないかと考えている。 糸賀 いくつかの公共図書館で、図書館員が出向いて教科に必要な資料を提供したり、逆に生徒がクラス単位で公共図書館に来て調べ物をしたりということは行われている。各地での「子ども読書推進計画」の実現にも期待したい。 でも、ポイントは職員。学校図書館に何が必要か、公共図書館は何をするべきかがよく分かった職員がいるかどうかだ。 ■人材育成 宮崎 図書館が地域コミュニティーと親密な関係を作りあげるカギは、やはり人だろう。期待される人材とは?
江上 企業、公共機関ともに直面しているのが、必要な社員・職員の能力構造の変化にどう対応するかの問題。図書館でも、司書だけにすべてを、というのは現実的ではなく、図書館長には企業の社長と同様の指導性とマーケットマインドが求められるだろう。 糸賀 人材の効率的運営、低予算少資源で、いかに住民の満足度を高めるか。民間の発想、手法を積極的に取り入れる必要がある。 一方で、完全に民間の競争原理・市場原理にゆだねるわけにもいくまい。読書という極めて私的な行為を完全に企業論理でマネージすることはできない。基本は、自治体がきちんと責任を負う。その上で運営面で民間手法に学ぶ図書館を提言したい。 宮崎 利用者側はどうあるべきか。 石原 各自のテーマ意識に沿って、図書館から得た情報を並べ直し、編集していくという消費型が多くなると思う。 宮崎 利用者の編集能力が問われるのか。 石原 学校での「総合的学習の時間」は、まさにそれだと思う。問題解決型の能力を若いときから身に着けようということになっている。今後の図書館はこれをサポートする役割が大きくなるだろう。 宮崎 問題解決型の思考を養っていくのはとても大切だと思う。 糸賀 「総合的学習の時間」は教師も困っている。本当は学校の図書室を使い、いろいろと調べなければいけない。それができない最大の理由は、教師が図書館の使い方を学んでいないからだ。 それから忘れてはいけないのが大学だ。大きな知的資源を持っている。大学図書館を一般市民も使えるようになったら、それこそベンチャービジネスだとか、新しい創業、起業に結びついていく。学校図書館も地域の方が使えるようになったらいいと思う。 宮崎 日本の図書館システムは、発展途上であると同時に、十分に活性化されていない部分が残っている。図書館と一般の市民の方々がかかわりを深めていきながら、ともに活用を考えていくことが重要だ。
◇ ◇ ◇
|
|
| | 社会 | スポーツ | 経済 | 政治 | 国際 | サイエンス | 文化・芸能 | ENGLISH | | ||
| ニュースの詳細は朝日新聞へどうぞ。購読の申し込みはインターネットでもできます。 | ||