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高まる経営の自由度
2006年04月30日
5月1日から新しい法律「会社法」が施行される。企業の設立や取締役会の運営をはじめ、情報開示のあり方、株主の権利強化など、「会社」をとりまく様々なルールが大きく衣替えする。新法で何が変わるのか、どんなメリット、デメリットがあるのか。連続Q&Aで整理する。
■米国流の「定款自治」に 損害時も連帯責任軽減
Q どうして新法が必要になったの?
A 会社の設立や運営に関する法律は、分散しているうえ、カタカナ表記の文語体だったり、度重なる改正で枝分かれした条文が増えたりして、複雑で分かりにくくなっていた。会社法制全体を分かりやすく整理するのが、新法の第一の狙いだ。会社関係の基本的なルールを定め、これまで一般に会社法と呼ばれてきた商法第2編、有限会社法、商法特例法は新しい会社法に吸収される。表記もひらがなの口語体になる。個人事業主や商取引について定めた、第2編以外の商法は引き続き残る。
Q 法律を分かりやすくするだけなの?
A 会社運営の基本的な考え方も、大きく変わる。ポイントは法律で縛る部分を減らし、会社が自ら定めるルール「定款」を重視して、経営者にとっても株主にとっても経営の自由度を高める点だ。「民間になるべく多くを任せれば物事が効率的に進む、という米国流の考え方」(大和総研の横山淳・制度調査部次長)が根底にあり、「定款自治」とも呼ばれる。
Q 経営者にとっての自由度は、具体的にどう高まるの?
A 例えば稼いだ利益の処分。これまでは取締役会で作った利益処分案が株主総会で承認されなければいけなかった。会社法では、定款で定めれば役員任期を1年にすることなどを条件に、配当性向や配当の回数など、株主への利益還元について取締役会で自由に決められるようになる。
Q なぜ経営の自由度を増す必要があるの?
A 素早い経営判断ができれば、企業の競争力を高める効果があるからだ。小さな会社を買収する場合なら、相手企業の株主に渡す株式が、発行済み株式数の20%以下(従来は5%以下)まで株主総会の承認がいらなくなる。スピード重視で、取締役会の姿も大きく変わりそうだ。全取締役と監査役が同意すれば、会議を開かず書面やメールで決議することなどもできるようになる。
Q 役員が、経営責任を負う範囲も狭まると聞いたけど。
A 経済界から要望が強かった部分だ。ある取締役が自分の利益のため、会社には損害となるような取引(利益相反)を提案をしたとする。損害が生じた場合、これまでは会議で明確に反対した取締役以外は全員、連帯して賠償責任を負う可能性があった(無過失責任)。今後は、自分にミスがなかったと立証すれば、提案した本人以外は責任を負わずに済むようになる(過失責任)。
Q 自由度が増す一方で、責任の範囲が狭まれば経営が野放図にならないかな?
A 配当の決定を取締役会に委ねる場合などに必要な定款変更には、株主総会の特別決議(議決権ベースで出席者の3分の2以上が賛成)が必要なので、それなりに高いハードルがある。会社法には、今までより経営を監視しやすくしたり、株主の権利を高めたりする新たなルールも盛られており、次回で詳しく説明する。
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〈定款変更次々〉
■ライオン、配当決定は役員会で セイコーエプソン、決議はメールもOK
会社法施行へ向け企業の対応も活発だ。12月期決算企業で、すでに3月末の株主総会で定款変更を決めたところがあり4〜5月の3月期決算発表時に定款変更案を公表する企業も多い。
日用品大手のライオンは、3月の株主総会で定款を変えた。取締役と執行役員の任期を2年から1年に短縮。剰余金の配当などを株主総会ではなく取締役会決議で決めることにした。
「必要に応じ、剰余金をスピーディーに株主に還元できる仕組みにした。ただ、配当後に経営状況が急変するようでは困る。1年ごとに取締役を選ぶのは、取締役会の方針に納得がいかない株主が意思表示できる機会になる」と説明する。
広告大手のアサツー ディ・ケイも、3月の総会で定款を変更、剰余金配当を取締役会決議で可能にした。「配当は刻々と業績を見つつ決めるものだが、従来は株主総会まではあくまで『案』だった。ただ、配当回数を増やすことは今のところ考えていない」という。
ライオンやアサツーの株主総会では、この定款変更は議論なく承認されたという。ただ、国内上場株で4兆円を運用する企業年金連合会は4月、取締役会でも剰余金配当を決められること自体は評価しつつも、「株主総会による決議を排除する場合は原則として反対」との意向を表明した。取締役会で決めた配当水準が低すぎた場合に、株主から増配を提案するようなことができなくなってしまうからだ。今後の株主総会では、実際に反対が出る可能性もある。
書面や電子メールでの取締役会決議を認める定款変更も目立つ。プリンター大手のセイコーエプソンは「本社は長野。役員は全国を飛び回っており、日程調整が難しい場合もある」と導入した。ただ、変更した企業でも「あくまで実際に集まるのが基本。書面やメールを多用する考えはない」(アサツー)との意見が大勢のようだ。
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〈会社法のポイント〉
●「定款自治」の拡大で、経営の自由度拡大
●企業統治の強化(株主・監査役の役割強化、内 部統制システムの構築と公表、情報開示の拡大)
●資本金1円会社も可(最低資本金制度の撤廃)
●有限会社制度を株式会社制度に一本化
●合併時に交付する対価が現金などに拡大
●新株予約権、株式の発行形態を多様化
●合同会社(LLC)制度の新設
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