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末吉竹二郎のCSR入門 第1回 「余裕のときのCSR」というナンセンス

100年に1度といわれる経済危機の中で、CSRに対する企業経営者の態度は、はっきり2つに分かれつつあるようです。「本体の事業が厳しい状況のときに、とてもCSRまで手が回らない」という経営者、そして「社会全体が苦しいときだからこそ、CSRに力を入れなければならない」という経営者。前者のようなリーダーは、早晩自ずから求心力を失い、生き残るのは後者だと、私は思っています。それはなぜなのかを理解していただくために、まず「CSRとは何か」をあらためて考えてみましょう。

 CSRの本質を私なりにわかりやすく言うと、外で働いているお父さん(お母さん)が、食卓で子供たちに、いま自分はこんなことをしていると胸を張って説明できるような仕事をすることです。まさか、「食品の産地を偽装して儲けているんだよ」とは話せませんよね。

 これを少し難しく考えると、「企業は誰のためにあるのか」という問題になります。例えば、現在は規制緩和によって事情が変わっていますが、かつて銀行業務が行なえるのは、金融庁の認可を受けたごく少数の法人に限られていました。しかし、この金融庁の許認可権限は、社会的影響力の大きい銀行が、誤った経営や不正行為によって市民に不利益をもたらさないよう、いわば社会全体からの「営業許可(License to Operate)」を代行すべく与えられたもの。そして、こうした社会との関係は、許認可制度の有無にかかわらず、全ての企業にあてはまります。

 つまり、企業は本来、社会に奉仕し利益をもたらすものとして、社会から存在を許されている。その社会の期待と要請に沿う形で事業を行なうことが、とりもなおさずCSRなのです。

 ですから、企業にとってビジネスとCSRは不可分であり、別々に捉えること自体が間違っています。ビジネスが順調で、資金に余裕があるときだけCSRを考え、苦しくなったらやめるという発想は、ナンセンスと言ってよいでしょう。

 さて、少し前までは、ビジネスをうまく進めて利益をあげ、多額の納税をすることが、分かりやすい社会貢献、つまりCSRの尺度でした。しかし現在は、利益をどのようにしてあげたのか、そのプロセスが重視されます。法令違反など不正な手段で儲けるのは論外ですが、一方で環境を破壊していたり、影でだれかの犠牲を強いたりといったことにも厳しく目が向けられるようになっています。

 例えば、現在雇用の維持が大きな問題となっていますが、こうした状況の下で、人員削減が全てCSRに反するとはいえません。しかし、コストを下げる手っ取り早い方法として安易に従業員のクビを切るのか、ギリギリまで経営努力を続けた挙句の最後の手段として解雇に踏み切るのか、CSRの観点からはここに大きな違いがあることになります。

 「CSR」イコール「ステークホルダー(利害関係者)とのコミュニケーション」、あるいは「地域貢献活動」といった表面的・機械的なとらえ方をするのではなく、CSRの本来の意味に立ち返って、企業の行動を、内からも外からも見直していくことが大切だと思います。

末吉竹二郎
国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問
東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。三菱銀行ニューヨーク支店長・取締役、東京三菱銀行信託会社(N Y)頭取、日興アセットマネジメント副社長を経て、国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問に就任。著書に『最新CSR事情』(泰文堂)、『有害連鎖』(幻冬舎)、『カーボンリスク』(北星堂書店)など。TBS「みのもんたの朝ズバッ!」月曜レギュラーコメンテーターとしても活躍中。

CSR活動の現場から

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〜 Cash&SalesとCare&Solidarity 両立の時代へ 〜

企業と社会がともに進化できるCSR活動を
日本アイ・ビー・エム株式会社

知っておきたいCSRの今〜社会的な信頼度をあげるために〜

第6回 「サステナビリティ」とCSR(2)

写真:薗田綾子

薗田綾子
株式会社クレアン 代表取締役

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