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サッカー観戦をエイズ撲滅に結びつける―JICA & Sony For the Next Generation in Ghana 2009

 2009年6月24日から7月3日にかけ、アフリカ・ガーナ共和国の7つの都市で、ユニークなイベントが開催された。同国でも人気のサッカーのパブリック・ビューイングとエイズ感染防止のキャンペーンがドッキング――大きな成果につながったこのプロジェクトは、JICAとソニーのコラボレーションで実現したもの。
JICA民間連携室の大貝室長とソニーCSR部の冨田部長に、官・民連携の意義や同プロジェクトの成果について語っていただいた。その内容を、2回に分けて掲載する。

第1回 官民連携で新たな世界貢献を切り拓いたJICAとソニー(前編) >>

第2回 官民連携で新たな世界貢献を切り拓いたJICAとソニー(後編)

サッカーファンの思いがきっかけに

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大貝 今回のプロジェクトは、昨年10月、立ち上げ早々の私ども民間連携室に、御社のクリエイティブ部門の方からお話をいただいたのが始まりでしたよね。

冨田 そもそものきっかけは、弊社がFIFAのオフィシャルスポンサーとなったことです。それに関連して、CSRの部分でも何かできないかと考え始めたところ、サッカーファンの社員たちからアイデアが出てきました。サッカーの試合の観客席は、両チームのサポーターがそれぞれのサイドに分かれて座りますが、ワールドカップなどの国際試合を見ると、先進国チームのサポーター席は一杯なのにひきかえ、途上国チームのサポーター席はガラガラであることもしばしば。こうした国では、海外まで応援に行く余裕のある人はごくわずかだからです。さらに考えると、テレビが普及していない国や地域の人びとには、自国のチームの試合を観戦する手段はかなり限られることになります。そうした人たちに、なんとか自国の選手たちの活躍を見せてあげることができないか、というのです。

 それで、観客を集めて大画面で試合の映像を見せる、パブリック・ビューイングの場を設けることを考えました。でも、できればそこに、現地の社会にさらに大きな貢献ができるような内容を付け加えて、事業としての質を高めたい。そのためには、JICAが最適のパートナーであると判断してご相談をさせていただいたのです。

大貝 正式な窓口としてお話をお受けしたのは、民間連携室とアフリカ部という部署なのですが、私どもにも、サッカー部と呼んでいいようなファンの集団がおりまして(笑)、お話を伺って、これは仕事抜きでもなんとかしなければと、セクションを越えて有志たちが盛り上がりました。

 幸運だったのは私どもの進行中の事業の中に、連携の受け皿にピッタリのプロジェクトが存在したこと。そうでなければ、立ち上げから約8ヶ月という、ODA関連事業としては極めて早期に、連携実現に至ることはなかったでしょう。

 それが、サッカーの強豪国ガーナにおける「マスメディアを通じたエイズ教育プロジェクト(略称HAPE)」だったわけですね。ガーナはエイズ感染率の高い地域。そこで、ラジオ放送や演劇の上演などを通じて感染の拡大を防ごうというのが、その内容です。

 HAPEでは、啓蒙のためのビデオを上映するとともに、希望者にはその場でエイズに関するカウンセリングや検査を受けてもらうイベントを催します。そこにサッカー観戦を組み込めば、集客力を大きく向上させられるに違いないと考えた訳です。

予想以上の成果を生んだコラボレーション

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冨田 CSR活動であっても、そこにソニーの持ち味を生かしたい、というのが私どもの基本的な考え方。したがって、第一に弊社ならではの技術や製品を生かせること、第二に私どもの人材の力が発揮できることがポイントとなりました。そして、力の及ばない部分は、パートナーシップで補うというわけです。

 今回のプロジェクトは、まさにその理想的な形となりました。ちょうどその時期に開催されていたコンフェデレーションズカップの生中継や、過去のガーナ・チームの試合のビデオのパブリック・ビューイングというイベントに、屋外でも使える大光量のプロジェクターと200インチのスクリーン、ブルーレイの再生装置、そして弊社スタッフの知識や技術が、大いに活躍したわけですからね。そしてそれが、パートナーであるJICAのプロジェクトと、非常にうまくかみあったわけです。

大貝 上映している試合のハーフタイム等に、エイズについての啓蒙ビデオを挟み込ませていただいたんですよね。その結果、観客数は通常の約3倍、普段は観客の少ない山間部などでは5倍にも増え、会場に設けたブースでカウンセリングや検診を受けた人も、3倍になりました。改めて、スポーツの力はすごいと感じましたね。

冨田 効果がそのようにはっきりした数字で示されたことは、私どもとしても、とても嬉しいところです。自分たちの活動が現地の人々への貢献となっていることを、実感として知ることができました。

 持ち込んだ機材は現地に残し、使い方についても現地スタッフに習得していただきましたから、今後もうまく活用されるといいですね。折しも来年はワールドカップ。今のところガーナは本戦出場の有力候補ですし。

大貝 サッカーは勿論ですが、その他スポーツ・音楽などのコンテンツと組み合わせる形でも、HAPE等のプロジェクトとの連携の可能性があるものと考えています。

プロジェクトはwin-win-winの結果に

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大貝  今回のプロジェクトを振り返ってみて、まず感じるのは、実現に至るプロセスが非常に良かったということです。本来は立場も目指すものも違う二つの組織が、熱意あふれるスタッフ同士が話し合いを繰り返す中で、その違いを見事に克服していきましたよね。素晴らしい結果は、そこにあとからついてきたという感じです。

冨田 その結果という点では、私たちは、弊社のCSRプロジェクトに広がりと深みを与えるという、当初の目的を果たせただけではありません。

 例えば、このプロジェクトが紹介されるときには、途上国が抱えるエイズの問題が、サッカーという関心の高いトピックとともに取り上げられる。それは、先進国の人たちの問題意識を喚起する、効果的なメッセージになるのではないかと思います。社内でも、ガーナという国やこの国が抱える問題に対する関心は一気に高まりました。CSRとして、非常に意義のある、実りの多い活動になりましたね。

大貝 私どももHAPEの事業効果を高めることができ、ODA事業の質の向上につなげられたわけです。よく「win-win」と言いますが、この場合は、途上国の人びとにはもちろん、ソニーにも、そしてJICAにもプラスをもたらすwin-win-winの、いわば「三方良し」のプロジェクトになりました。これはまさに、民間連携事業のあるべき姿だと思うのです。それを、民間連携室のスタートポイントで実現できたのは、非常に嬉しいことですね。

冨田 これをコラボレーションの一つのモデルケースとして、JICAは勿論、さまざまなパートナーとの連携に、この経験を生かしていきたいと思います。

大貝 大切なのは、「一歩」を踏み出してみることですね。今回は初めての体験だらけでしたが、やってみると思ったより難しいことではないことが多かったですし。

 これからは、官と民の連携だけでなく、情報提供などを通じて、民と民の連携をお手伝いするような方向性も考えていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

第1回 官民連携で新たな世界貢献を切り拓いたJICAとソニー(前編) >>

CSR活動の現場から

Strategic Philanthropy Forum 2009
〜 Cash&SalesとCare&Solidarity 両立の時代へ 〜

企業と社会がともに進化できるCSR活動を
日本アイ・ビー・エム株式会社

知っておきたいCSRの今〜社会的な信頼度をあげるために〜

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薗田綾子
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末吉竹二郎のCSR入門

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末吉竹二郎
国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問

 わが国には「不言実行」を美徳とする伝統がありますが、ことCSRに関しては「有言実行」こそが大切であると、私は思います。はやりの言葉で言えば「見える化」、すなわち自分たちのCSR活動、環境対策などを分かりやすい形で公表する。それを私たち消費者がチェックし、評価し、サポートするという仕組みができれば、それは競合他社の行動を促し、業界全体の変化につながっていくからです。...

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