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蘇った緑の田んぼ NEC田んぼ作りプロジェクト

 都市の大企業と、過疎化・高齢化・荒廃農地の拡大に直面する地方の農村集落との、新しい共同の歩みが始まるかも知れない――NEC環境推進部が茨城県石岡市で取組む環境意識啓発活動「田んぼ作りプロジェクト」が予感させるものだ。

 始動して2010年で7年目を迎えた。同市東田中北ノ入地区に放置されていた荒廃田を、「100年後にトキが野生再生する」ことを目指して、情報通信メーカーの社員たちの力でよみがえらせようという取組みだ。

 このプロジェクトの魅力と未来はどこにあるか? 本年初頭の味噌造り&新酒の仕込み神事のイベントを訪ねた。(全2回)

第1回 田んぼ作りプロジェクト(前編) >>

霞ヶ浦水系の環境整備・里山保全の一環

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冬でも滾々と水が沸く水源の地

 田んぼ作りプロジェクトは2004年、雑草や潅木が繁ってしまった荒廃水田の再開墾から始まった。

 田がある東田中北ノ入地区は、「谷津田」と呼ばれる湿地帯で、数百年前の地図にも水源のため池が記載されている地。古くは、干ばつに備えて、作付け用の種籾を採る田として利用されていたという。営々と受け継がれてきたこの田んぼが、農家の高齢化と後継者不足などを背景に耕作されることなく放置され、人が踏み入ることもできない荒地と化してしまったのは、1900年代の最後の20年ほどの間のことだと言う。

 NECグループは、今世紀に入り、「環境と調和した持続可能な事業体への変革」を目指して、その基盤作りとして全社員の環境意識の向上を図る「エコ・エクセレンス」に取組んでいる。その柱として、この谷津田の再生に挑戦した。

 ことの始まりは、霞ヶ浦水系の水質浄化とそのための里山保全に取組むNPO法人「アサザ基金」との出会い。稲作から日本酒造りまでの一年を通した自然体験プログラムを従業員に提供し、「環境に関する知識を有し、日常的に環境に配慮した行動がとれる意識の高い人材」(エコ・エクセレンスの意味)の育成を目指すと共に、同社の製品や技術を活用した「ネットワークセンサー」をキー・コンポーネントとする環境モニタリングシステムの開発も意図したプロジェクトだ。

水系・里山を人々の営みと共に蘇らせる

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蘇った田んぼ(一部)。田んぼの名前は参加者が命名
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「達人コース」の人々が使う作業小屋。露天五右衛門風呂も完備

 これまでに述べ7000人に及ぶNEC社員やその家族の手が入り、今では4反(約40アール)の水田で稲を作る。隣接する2反(約20アール)の畑を借りて、大豆、さつまいも、落花生など畑作も組み込んでいる。

 この取組みの最大の特徴は、水系と里山の保全を、それを利用し生活していた農村集落の「人の営み」の再現とともに実現しようとしている点だ。田植え、草取り、稲刈りなど農作業の体験プログラムだけでなく、芝刈り、薪作り、炭焼き、郷土食作りなど、今では忘れ去られてしまった農村生活全般を体験し、そこから環境との共生のあり方を学ぼうとしている。水系や里山はもともと人々の生活と共にあり、それによって守られて来た。農村生活を蘇らせることなしには、持続可能な水系や里山の保全はありえない。このプロジェクトは、まさにそのことを体で覚える優れた試みなのである。

 また、採れた米を地元の酒造会社の協力で清酒に醸したり、大豆を味噌製造会社と協力して味噌にするなど、地域の企業と共同して地域の活性化に貢献している点も大きな特徴だと言えよう。

地域に広がる笑顔

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参加者全体写真は良い記念だとか

 はじめのうちは「東京からわざわざ何をしにきているか?」と遠目にみているかのようだった地区の人々も、年を経るごとに活動に理解を深め、その熱心さに共感し、今では収穫祭などに率先して出かけ、郷土食の手ほどきなどもしてくれるようになったという。取材の日も、黄な粉の挽き方や郷土食を教える地域の女性や、日頃から水田の管理や体験プログラムの実施を支えている農家や建設業の男性なども多く集まっていた。

 「プロジェクトが始まる前は、歩いている人も少ない寂しい過疎の地区だったけれど、NECの若い人たちが来るようになり、子供の声も戻ってきて、地区全体が元気で明るくなった」。こう話す地元の古老農家の笑顔が印象的だった。

 自然体験参加型活動への社会的感心が高まってきている。だが、この活動が、参加する企業の社員にとって楽しく有意義であり、なおかつ疲弊した農村集落の再生とそれを通じた自然環境の保全に本当に結びついた例は、いったいいくつあるのだろうか?NECの田んぼ作りプロジェクトは、そんな大企業と地域を新しい形で結びつけるモデルケースといえるだろう。

(食農連携コーディネーター/産直新聞編集長:毛賀澤明宏)

第1回 田んぼ作りプロジェクト(前編) >>

CSR活動の現場から

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写真:薗田綾子

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写真:末吉竹二郎

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