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株券電子化特集

越前和紙の里、余波 09年の株券ペーパーレス化 用紙受注が半減

2007年06月07日

 上場企業すべての株券を電子化する株券不発行制度が09年に始まるのを前に、株券用紙を製造する全国7社のうち5社が集まる福井県越前市で、受注量が落ち込む影響が出ている。背景には、制度導入を控え、有価証券の保管・受け渡しをする証券保管振替機構(ほふり)への預託株が増えたことや、企業のコスト削減意識があるようだ。

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企業名などの透かしが入った株券用紙を製造する製紙業者=越前市大滝町の小畑製紙所で

 製紙業者70社が集まる越前市は、紙幣に使われる透かし技法を生んだ越前和紙の産地。偽造防止のため企業名やロゴマークなどの透かしが入ったオリジナル株券用紙は、機械ずき業者5社で作られている。

 有価証券や卒業証書など透かし入りの「局紙」が主力の小畑製紙所では昨春から、株券用紙の受注量が減り、平年の半分以下の状態が続く。1カ月当たり15〜20社の注文があったが、今では3社前後だ。小畑明弘社長(46)は「制度開始の1年前には影響が出始めるだろうと覚悟していたが、こんなに早いとは」と戸惑いを隠せない。

 福井県和紙工業協同組合によると、05年10月に電子化された社債を含め、有価証券用紙の年間出荷額は約4億円で推移していたが、06年度は約3億2千万円と20%減。今年度は1億円程度に落ち込む見通しという。

 ●預託率8割

 株券電子化まで1年以上あるが、株券用紙の需要が減っている最大の要因は、ほふりへの株預託率が80・4%(2月末現在)と高まったことだ。

 株主が証券会社などを通じて株券をほふりに預けると、株式の売買や譲渡の際に株券そのものを授受せずに口座間の振り替えで処理される。預託株は株主の名前や住所、保有株数などが電子的に記録され、株主は株券を預けたままで権利を行使できる仕組みだ。

 個人が自宅などに保管する「タンス株」は、名義が以前の所有者のままだと電子化と同時に所有権を失う恐れがある。ほふりなどでは早めの対応を呼びかけ、預け入れのPRに力を入れている。

 企業が株を発行する場合、株券が市場に流通する量とほふりに預けられる量の割合を予測し、実際の作成数を決める。ほふり利用分は一定量を除き作成の必要がなく、株券印刷をしている凸版印刷は「預託率が上昇するほどほふり利用の割合が高く見積もられ、作成数が抑えられる傾向が強まる」と指摘する。

 同社によると、06年の株券発行量は対前年比で35%減少。ほふりへの預託率予測を基に、07、08年は対前年比でそれぞれ40%減、50%減となると予測しており、非上場企業の株券だけが残る09年には05年発行量の2%程度になると分析する。

 東海地方の製紙メーカーも「確かに株券用紙の受注量は徐々に減っている」という。特に企業ごとの特注品の需要はごくわずかで、比較的安い定形パターンの汎用品へと注文が転換している兆しもうかがえるという。

 日興コーディアル証券は「いずれ不要になるものにコストを割きたくない企業心理が働いているのだろう」とみる。企業が一定量を保有している予備株券の在庫を減らし始めたとの見方や、新会社法では新規設立会社は原則として株券を作成しないことを定めている側面もある。

 ●新市場探る

 越前和紙の産地では株券用紙に代わる新たな市場を探る動きも始まっている。小畑製紙所では、校名や桜の透かし模様を入れた合格通知書用紙の試作や、入場券などとしての需要獲得をにらみ、透かしに加えてICチップをすき込んだ紙の開発を進めている。

 また、透かしにこだわらず、和紙の風合いを生かした写真プリント用紙や新たな植物を原料にしたエコペーパーの販売に乗り出した業者もある。

 福井県和紙工業協同組合の山田益弘理事長(72)は「株券用紙の需要減をすべてカバーできるものを見いだすのは難しい。透かし偽造防止技術を生かすため、中国など海外での市場開拓にも力を入れたい」としている。

 ◆キーワード

 <株券電子化> 株券を発行せず、株取引の手続きを電子化(ペーパーレス化)する。04年6月に関連法が成立、09年6月までの一斉移行日(未定)に全上場企業の株券が廃止される。ほふりや証券会社、信託銀行などは同1月を実施目標とし、電子化以降は無効となる株券のほふりへの預託を推進している。

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