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■インサイダー規制を強化

 Q 昨年からインサイダー取引が問題になっているね。つい最近も記事になっていたよ。

 A 公募増資に絡むインサイダー問題だね。今月、処分されたのは資産運用会社ニッセイアセットマネジメントなど4社。ニッセイのケースでは、国際石油開発帝石の公募増資で主幹事の野村証券が情報を漏らし、ニッセイの担当者が帝石株を事前に売って損失を回避した。一連の問題で処分された運用会社は8社。漏らした証券会社は野村や大和など3社だ。

 Q 再発防止策はどうなっているの?

 A 今年6月、通常国会で金融商品取引法の改正案が成立した。これまでは株式を売買してもうけた人が罰せられ、情報を漏らした人は罪に問われなかった。ただ漏らした側にも目的があり、有形無形の利得がある。来春から同じ刑罰を科すことにした。遅きに失した感じはあるけどね。

 Q うかつにしゃべられなくなるね。

 A それは当然でしょう。ただ、罪に問われるのは「他人に利益を得させる目的」がある場合だ。自慢話として家族や知人にしゃべってしまい、結果的に家族らがその株でもうけても、しゃべったこと自体は罪には問われない。もちろん、ばれれば会社から処分されることもあるよね。

 Q 課徴金も引き上げたと聞いたよ。

 A 今までが安すぎた。今回のニッセイのケースでは41万円。インサイダー情報で売買した株に関連した1カ月分の運用報酬をもとに計算していたんだ。今後は課徴金算出のもとになる運用報酬の対象や期間を広げる。単純計算だが、ニッセイの41万円は2億円以上になる。

■機関投資家に対話求める

 Q インサイダー取引に対する罰則は強化したね。でも、よりよい株式市場を作っていくために、ほかにすることはないのかな。

 A 政府が6月に出した日本再興戦略の中に「日本版スチュワードシップ・コード」という言葉がある。これは英国で2010年に始まった制度なんだ。

 Q どんな制度なの?

 A 「スチュワードシップ」には財産管理人や執事という意味がある。機関投資家に、投資した企業の経営に積極的に関与することを求める規範なんだ。「投資先企業をモニタリングすべきだ」「株主総会における議決権行使と結果の開示に方針を」など7原則からなる。金融庁が検討会を設け、中身を詰めている。

 Q 具体的には、何がどう変わるの?

 A 英国では機関投資家が企業に対し、頻繁に文書を出しているそうだ。社外取締役の増員などコーポレート・ガバナンス(企業統治)についての要望や意見などを伝えるためだ。社外取締役との面談を求めるケースも多い。以前から一部の機関投資家は自主的に取り組んでいたようだ。スチュワードシップ・コードができ、取り組む機関投資家が増えた。投資先企業の総会議案について、個別の賛否を公開している機関投資家も多いよ。

 Q 日本の機関投資家はどう変わるかな。

 A 会社の経営に関わっていく姿勢が強まると思う。株主総会での存在感もこれまで以上に出てくる。三井住友信託銀行によると、今年、機関投資家のうち運用会社40社は、投資先の議決権行使で、買収防衛策や退職慰労金を中心に18%の議案に反対している。この割合が増えるかもしれない。

■ルールを変える株主たち

 Q 公正な市場を作るためには、個人株主だって変わらないといけないね。

 A 個人株主だって声を上げ始めた。一方的に安い株価を押しつけられたと考えた時は、裁判に訴えるケースが増えているんだ。

 Q 例えばどんな場合?

 A 株式の公開買い付けのとき、争いが起こりやすい。今年初め、東宝は東宝不動産を完全子会社化するため、一般株主らから1株735円で買い付けた。でも、15%ほどの株主が価格に不満を示し、訴えたんだ。株主側は、東宝不動産は東京の帝劇ビルなどの不動産を持っており、企業価値は1株あたり2千円以上になると主張している。

 Q 株式の評価が3倍も違うんだね。

 A 普通は企業の将来収益などを考慮して買い取り価格を決める。でも今回は、不動産会社なので、土地の含み益などをどう判断するかという点が問われている。これとは別に経営者による自社買収(MBO)で、意図的に安い価格をつけたと認定され、裁判所の決定で買い取り価格が引き上げられる場合がある。

 Q 制度を改善できないの?

 A 今年夏、東京証券取引所がMBOについて、新ルールを作ったんだ。会社側に対し、「将来の利益見通し」などの数値を細かく公表するよう義務づけたんだ。株主たちが訴えてきたことがルール改正につながった。公正な市場を作るには、当局だけでなく、株主や市民が監視していくことが大切だね。(この項は加藤裕則が担当しました)